桜さくら堂

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「 コーヒーが冷めないうちに 」 川口俊和著 サンマーク出版 の感想

プロローグ  なんちゃって

 2017年に本屋大賞にノミネートされた本ですね。結果は10作品中10位でした。でも、気にすることはありません。芥川賞の「コンビニ人間」が9位でしたし、その前年2016年の本屋大賞で10位だった「火花」も芥川賞でしたからね。

前置きはさておき、私がこの「コーヒーが冷めないうちに」を手に取ったのは、以前電車の広告で目にしていたからです。

「過去に戻れる喫茶店を訪れた4人の女性たち……」のキャッチコピーに、ぐぐっと興味をそそられました。さらに「4回泣けます」とありました。なるほどそういうことか、とだいたいの想像がつきました。当時私は、人間関係で疲れていました。特に社内の。それで、癒しがほしかったのです。4回泣けるのは、オーバーだろうと思いつつも、そのうちに休日にでも読んでみようと思っていました。しかし、本を買う前に電車内の広告も変わり、日々の忙しさにまぎれていつしか忘れ果てていました。

 ところが、ある日、まあ、いつものように古本屋をぶらぶらしていたら、偶然、この「コーヒーが冷めないうちに」の本が目に止まったのです。ああ、そういえば、この本が読みたかったんだ、と手に取りました。店員の態度が悪かったけれど、読みたい気持ちが勝ったので買いました。なぜなら、職場は変わったものの、相も変わらず私は人間関係に悩んでいたからです。進歩がないですね⤵……あ、でも、ブログでは小見出しをつけるのを学びましたよ。それで、意味もなく小見出しをつけています(笑)……と、これもまた、前置きになってしまいました。

やっと、感想です。

 舞台となる路地裏の小さな喫茶店「フニクリフニクラ」は、明治時代にオープンした古い喫茶店で、地下にあります。カウンター席が3席と2人掛けのテーブル席が3つしかないという狭さです。窓がなくシェードランプで照らされた店内は、昼夜の区別なくセピア色に染まっています。3つある時計は、全て違う時間を示していて、なんだかいわくありげな雰囲気が漂っています。いかにも何か起こりそうな舞台設定で、なんだかわくわくしてきますね。

 ただ、過去に戻れるという都市伝説が起こるのが、すごく面倒な設定になっているんですね。めんどくさいルールがたくさんあります。

1、過去に戻っても、この喫茶店を訪れた事のない者には会う事ができない。

2、過去に戻ってどんな努力をしても、現実は変わらない。

3、過去に戻れる席には先客がいる。席に座れるのは、その先客が席立った時だけ。

4、過去に戻っても、席を立って移動することはできない。

5、過去に戻れるのは、コーヒーをカップに注いでから、そのコーヒーが冷めてしまうまでの間だけ。

さらに、過去に戻れる席にいつも座っているのは……、とってもやっかいな人物で、っていう設定です。それにコーヒーが冷めきってしまうまでに戻らなったら、すごいリスクがあります。

 それでも、どうしても過去に戻りたいという人達の話です。あ、一人だけ、未来に行った人物もいますね。

第1話 『恋人』結婚を考えていた彼氏と別れた女の話

第2話 『夫婦』記憶が消えていく男と看護師の話

第3話 『姉妹』家出した姉とよく食べる妹の話

第4話 『親子』この喫茶店で働く妊婦の話

となっています。

第1話の主人公である清川二美子は早稲田大学を首席で卒業し、英語、ロシア語、フランス語、ギリシア語、イタリア語、スペイン語、ポルトガル語が反せるバリバリのキャリアウーマンでモデルのような美人です。その二美子が、3歳年下の彼氏と別れ話を始める所から、物語がスタートします。なにしろ狭い店で、常連客ばかりの喫茶店です。話はつつぬけです。五郎が二美子を残して、アメリカに行くという所からです。興味津々ですね。

 その後、二美子が喫茶店の都市伝説を聞きつけて、再来します。そうして、キャラとはうらはらなそそっかしい行動をします。もはやギャグです。こんなんで泣けるんだろうか? という疑問がわいてきました。同時に、第2話と第3話、第4話の登場人物が、ちらちらと現れて、伏線を残していきます。

 第1話は、この場合リスクを冒して昔に戻って彼氏に会うよりも、アメリカに行って会った方が現実的なんじゃないのかなという疑問が残りましたね。今時のキァリアウーマンなら、そういう行動をとるんじゃなかと思ったので、ちょっと泣けませんでしたね。

第2話は、認知症の話ですね。これは切実ですが、わざわざ昔に戻るという理由に薄いような気がしました。昔のクリアな旦那さんに会うと、逆に現実に戻った時にさらに辛くなるのではと思ったりもしました。

第3話は死んでしまった妹の本当の気持ちが、過去に戻って初めてわかったのです。それは全話を通して、みんなそうなんです。相手がこう思っているんじゃないかっていう思い込みって、誰にでもありますよね。

第4話だけ、未来に行くのです。未来の場合、行った日時に会いたい人がそこにいるという保証はないわけです。そこがミソです。それでも行くのです。

 全体を通して、全員時間を旅して、現実は変わらなったんです。でも、心が変わったのです。心が変わると、生き方が変わって、未来も変わるんですね。泣けたかって?

はい、泣けましたよ。私の場合、2回でした。幽霊も出てくるし、登場人物も個性豊かで、なかなか魅力がありました。面白かったので、あっという間に読み終えてしまいました。「コーヒーが冷めないうちに」読み終える事はできませんでしたけれど、私も過去に戻れたらなあと、しみじみと思いました。

ちなみに、2017年に本屋大賞をとったのは、「蜜蜂と遠雷」でした。参考までに。