桜さくら堂

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プレバトランキング 平成31年 春光戦 予選

平成最後の春の句選ということで、久しぶりに書いてみました。

今回は作者の思いと夏井先生の選評を中心に、息づかいなど、その場の雰囲気が伝わるように言葉をそっくりひろってみました。では。

 ≪敬称略≫

予選のお題 『 春の鮮魚店 』

 

1位  鈴木光

 

昼網や 明石メバルの ピチカート

 

鈴木光: 

明石の昼市を詠んだんですけれど、朝釣り上げられた魚が昼市にズラッと並んで 明石のすごく黒いメバルで有名なんですけど、釣りたてだから まだしっぽとかピチピチしてる。そのはね方の感じが、バイオリンを指で弾く奏法でピチカートっていう華やかな感じのするのがあるんですけど、それとすごく重なるなと思って、そういう句を作りました。

夏井いつき: 

様々な配慮をしているそういう句なんです。季語ではない名詞に「や」をつける。中七下五のフレーズのどこかに季語を入れる。これも公式の1つなんですね。読んだ時に私は、昼網という言葉がどこのどういうものなのかよく分からなかったです。昼に網を上げてんのかな位に思ってましたが、明石という地名がここに入ってくると「昼網」っていうのはどういうものかなというのを、読み手が調べるための1つのヒントをあえてここ地名で入れてくれているわけです。

あ、なるほど、こういう市が立つんだとわかる。そして、明石メバル……ここで季語が出てきますね。あ、なるほど、ここの名産の1つでもあるんだなというのもちゃんとわかってきますね。そして、最後、ピチカートというこの比喩がでてきた瞬間に、春の季語であるメバル、動き、新鮮さ、そういうものがこの比喩の中に全部スポーンと入っていく。比喩だけど映像も見えてくる。ここ(メバル)漢字で書くと全体がちょっと重くなるんですね。だから、そこもたぶん配慮なさって、「ピチカート」という言葉も生きるように、あえてカタカナを選ばれたのではないかと、そいう配慮も読み手にちゃんと伝わってまいりました。

 

 2位 千原ジュニア

 

壺焼きの 壺傾きて ジュッとなる

 

千原ジュニア:

サザエの壺焼きが大好きでよく頼むんですけれど、七輪なんかでやってたら、勝手にグッと傾いて、醤油がジュッというんで、こう美味しい匂いが広がるっていうのを詠んだ。

夏井いつき:

淡々と描写をするだけで、ちゃんと一句になるんですよね〜。地道な描写をきっちりとやれるんだと思って、非常に驚きました。

壺を押さえ直した所は大事なところです。傾きてまで描写がちゃんと見えるでしょ。傾いていない所から傾く一瞬まで、短い時間が、傾きて っていう言い方だけで、時間をちゃんと切り取っているわけですね。

さらに次の描写です。ジュッとなる という起こった現象だけを淡々と描いているんです。俳句って、それでいいんです。普通ならここで醤油がこぼれたとかいい匂いがしたとか、うだうだうだうだ説明したくなる所ですよ。説明する必要はない。壺焼きを経験したことのある人は、どれくらいの音のジュッなのか、その瞬間にどんな匂いが立ち上がってくるのか、そして口の中には唾がジュワ~と出てくると、そういう反応を読者の脳の中でこのジュッとなるだけで作るわけですよ、俳句はこれでいいんですよ。

 

3位 千賀健永 Kis-My-Ft2

 

ぽこぽこと 酒に口割る 蛤ら

 

千賀健永:

メンバーの藤ヶ谷と蛤の酒蒸し鍋を食べに行ったんですよ。ライブの打ち上げで行ったんで、蛤の酒蒸しを使った俳句を作りたいなと思って……。

夏井いつき:

発想と言葉とが、一句の中でちゃんと噛み合った、そういうものになりました。まずいきなりぽこぽこと、オノマトペが出てきます。酒に口割るだから本当は言っちゃいけないことを、酒飲んでついついしゃべり始めたおっちゃんかなんかがおるんかな?くらいに思いましたよ。そしたら最後 蛤というものが出てきて、あっ擬人化でしたか、と。

擬人化というのは上手くいった時と失敗した時の落差がものすごく大きいんですね。これは単純な擬人化のように見えますが、ちゃんと読んでいったら蛤の描写……酒で温められて口を開いていくというちゃんと擬人化が描写になっているわけですね。さらに蛤らという複数は 、結果的にぽこぽこというオノマトペとちゃんとイメージを結びあっていきますから、この効果もちゃんと隠し味のようになっているわけです。