桜さくら堂

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プレバドランキング 夏の他流試合スペシャル ≪ 2019年8月15日 ≫ 結果

今回のプレバドランキングは、天才小中学生 VS 名人・特待生 ということで、どんな子供達が、どんな句を詠むのだろうと、興味津々、ちょっとワクワクしながらの観戦となりました。

審査員は、俳句界の重鎮、夏井先生曰く、雲の上の人ということで、

  俳人 : 宇多喜代子 先生

  俳人 : 高野ムツオ 先生

  俳人 : 井上康明  先生

です。               

尚、これ以降、敬称略といたします。が、子供達にだけなんとなくつけてみようかな。

お題は、

≪ 夏空と電車 ≫ 

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第1試合

立川志らく                   特待生1級

はづき

八月が降りる 江ノ電の 海水浴

(江の島の海水浴の風景をシンプルに詠もうと。八月がどーんと、海水浴場に降りてきた というさまを詠んでみた)

馬場叶羽さん                  中学3年 俳句歴9年

 風鈴は 鳴らぬ 駅長室のドア

(地下鉄の駅長室のドアに風鈴がかかっていて、でも地下鉄なので風は入ってこなくて、「駅長室」という言葉を使うことによって、人がいないさまだったり、駅長さんの人柄であったりを詠めたらいいな、と思ってつくりました)

判定              選抜       プレバド

宇多多喜子            9         10

高野ムツオ           10          9

井上康明            10          9

----------------------------------------

Total              29         28

 

 高野:私は地下鉄だと思わなかった。普通の駅長室でも良いんだと思う。中には誰もい ないけれど、もしかしたら風鈴があって、ひっそりと駅長室を守っているのかなという作者の想像力が風鈴を詠んだというふうに思って……。

井上:地下鉄というのはわからない。駅長室の風鈴が鳴らないっていう夏の暑苦しさ、蒸し暑さ、そういうのがふわっと浮き上がってくる。志らくさんのは、八月は物を食べないし、恋はしない。喩えがやや踏み出し過ぎ……

宇多:私がそこが良かった。手足があるものが降りて来るんじゃ、つまらないですね。 

 夏井: 

俳句というのには、必ず評価の分かれ目というのがある。

八月が降りるという一種の擬人化を、大胆でおもしろいと評価するか、いや、分かんないよというか、 ここが大きな分かれ目の1つ。

こっちの句(風鈴は)は、あんがいこのドア、ここかもしれません。この字面通りに読めば、普通の駅と誰もが思う。「のドア」があって、風鈴が鳴らない。分かるようで分からない。「ドア」にある謎のようなものに、惹かれるか、惹かれないか 

 第2試合

皆藤愛子                      特待生 5級

 夕立の 粒木霊する 高架下 

(急な夕立が降ってきて、どうしよう、早くやまないかなって、高架下で雨宿りをしている時のようすです)

 

野村颯万 君                    小学6年 俳句歴8年

しろはえ

白南風よ レールの下の 砕石へ

(レールを見ていたら、丸い石が無いことに気付いて、調べてみたら「砕石」という名前で、その砕石は電車の下でクッションの役割をしていて、丸い石だとクッションにならないから、いつも見えない所でがんばっている砕石に「白南風」が当たってほしい)              

判定              選抜       プレバド

宇多多喜子           10          9

高野ムツオ           10          9

井上康明             9         10

----------------------------------------

Total              29         28

 

宇多:思いもかけず空高々と吹く大きな風が、レールの下の、しかも小さい石に届く。こういう着想は、おもしろいと思いましたね。

高野:(白南風)よ も効いている。風に対する呼びかけの気持ちが出て、励ましている気持ちも、そこまでしっかり伝わってくるんだと思います。それから、砕石へのへもいいですね。

井上:私は、「よ」と「へ」が、あまり効いていないと思うんですよね。一緒にレールの下の砕石へ行こうみたいな言い方ですよね。

夏井:

「夕立」の評価の分かれ目は、「粒」なんです。粒が見えて音になっていく。そこが良いと評価する人と、「夕立」「高架下」で木霊するわけだから、「粒」はいらないと考える。その2つに分かれる。「よ」「へ」の助詞、積極的に評価するか、そこが気になるというか、ここが分かれ目。

⇒ 夕立の 全てが木霊 高架下

第3試合

千原ジュニア                     特待生 1級

撮り鉄の 汗拭いけり 103系   

(「撮り鉄」といわれる電車マニアの方が、ずっと暑い中、カメラを構えて待っているところに、古い電車が来た)

阿見果凛 さん                    小学4年  俳句歴2年

さみどり

早緑の 電車まっすぐ 夏雲へ   

(早緑の電車がまっすぐ夏雲の方へ向かっているような感じがしたので、電車はいつも同じ線路の上を走っているので、いつかどこかへ飛び出したくならないかなと思って)

判定              選抜       プレバド

宇多多喜子           10          9

高野ムツオ            8         10

井上康明             9         10

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Total              27         29

 

宇多:レールを絶対に抜け出ることのない電車が、空まで飛ばしたという発想が良いんじゃないですか。

高野:電車まっすぐ この表現は素晴らしいと思います。早緑が、色なのか、実際に緑が満ち溢れているのか、少しわかりにくいところが残念。

井上:撮り鉄の方、現代の風景で、汗を拭ったっていう所ね、ホッとしている時間を描いている所が上手い。で、103系っていうの、私知らなかった。だけど、何となく懐かしい電車のような感じ……(高野:かつての国鉄、山手線。満員電車のイメージから)

夏井:

 

  この句の勝敗の分け目は、103系と具体的に言ったところの良し悪し。103系がすぐ分かる人は「なるほど」と分かるけれど、分からない人にとって、何系の103は分かるけれど、具体的に古い蒸気機関車みたいなのか、通勤電車なのか、知識がない人は具体的過ぎて分からないかも。

 

早緑、あの写真見てるから、早緑の電車っていうのが私たちにはスルッと来る。この表現も、私はいい表現だと思います。確かに高野先生がおっしゃったように、木々の緑をイメージする人がいるかもしれないなという不安は、微量あるなというふうに思います。どちらも、それぞれの魅力と小さなもったいない所があって、どっちの傷がそれぞれ許しやすいか、ものすごく僅差へのジャッジになっていくと予想した。 第4試合

 

千賀健永                       特待生 1級

原爆忌 弾丸列車 光この空

(「原爆忌」は、原子爆弾が投下された慰霊の日なんですけど、「弾丸列車」というのは、新幹線ですね。広島が破壊し尽くされた時から考えた今は、新幹線が走ってきれいになったよ。僕たちはその時代に生きていないけど、「原爆忌」があることで、平和になったと改めて思える句にしようと思って)

 

宇都宮駿介君                     中学3年  俳句歴8年

原爆忌 今日も明日も 通る道
 (いつも歩いている通学路を、今日が「原爆忌」だと知ったら、この道に、もし原爆が落ちていたら、明日は通れない。いつもと違って、大事に通らないといけない)

判定              選抜       プレバド

宇多多喜子           10          9

高野ムツオ            8         10

井上康明            10          9

----------------------------------------

Total              28         28

 

宇多:ひねりのないのが良かった。日常の中にある原爆忌という捉え方が良かった。

高野:作者も(千賀)この良さを知っていないと思うんですけども……。弾丸列車は、かつて夢が叶わなかった列車を思い出しながら、平和になった今、実際に走っている新幹線に乗ってると。そういう、時間がダブルイメージで見えてくるのがとても良い。

弾丸列車……東京~下関、そこから朝鮮半島、中国大陸へ向かう計画だった列車の名前。昭和18年、戦局の悪化により断念。

夏井:

 

  高野先生のお話を聞いて、驚いている。あの写真から、若い2人から出てくることに、とくかく驚いたというのが、最初の驚きです。

 

 日常の普通の光景の中に捉える、こっちの方が、よっぽど落ち着いた捉え方デスクトップよね。

弾丸列車、新幹線って言ったら、終わっちゃいますよ。聞いてて、何でそんなつまんないこと言うんだよって思いながら見てましたけど、弾丸列車に、そういう時代背景があるのを、今知りました。それがあるから、高野先生は10点をつけられた。「原爆忌」の奥行きが深くなる。この空はリズムが悪いと思ったけど、意味が分かったら、あえて言う意味があるんじゃないか、10点の句。 

 

 第5試合

FUJIWARA 藤本敏史                  名人 10段

塩っぱめの 飯頬張る 西日の火室

(「火室」というのは、蒸気機関車のスコップで石炭を入れる場所。石炭を入れる人を「釜炊き」というんですけど、釜炊きの仕事って、体力をめっちゃめちゃ使うんです。夏、汗が滝のように出てきて、大変な仕事なんですって。西日が当たってる休憩時間に、塩分強めのおにぎりを頬張っているという俳句です)

 

水野結雅 君                     小学6年  俳句歴 5年

鈍行は 僕の生き方 かぶと虫

(「鈍行」って、各駅停車で遅くて、僕はいつも遅くて怒られて。その生き方でも、自分は良いと思って。「かぶと虫」は、見た目は恰好良さそうに見えるけど、本当は動くとノロノロしていて、僕の生き方と同じだと思って……)

判定              選抜       プレバド

宇多多喜子           10          9

高野ムツオ            9         10

井上康明            10          9

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Total              29         28

総合計            142        141

 

宇多:西日の火室、舌を噛みそうなところが。リズムがゴツゴツきてるかな、と思って。

井上:飯頬張るってところがね、言い過ぎ。色んな材料がたくさん入っていて、ちょっと言い過ぎてる。

高野:(塩っぱめの…)作り方、うまくない。下手くそです。下手くそなゴツゴツしたリズムが、この句の内容に良く合ってる。

夏井

:「鈍行」に対して「カタツムリ」だと、絶対アウトだと思うんだけど。かぶと虫ときたかと。力強く遅く美しく、あ~なるほどなと。これ、小学生でやられたら、この子の生き方、この先どんなかぶと虫になるんだろうと、本気で思いました。

評価の分かれ目という話でいうと、まさにこの頬張るというところが、要るのか要らないのか、言い換えた方が良いのか、「塩っぱめの握り飯」で良いんじゃないかという人も出てくるかもしれないですね。頬張るをこのまま納得しているところは、ちょっと緩いかなとは思いました。

 とても良い感性をお持ちの皆さんで、楽しく学ばせていただきました。

夏井先生は、たくさん種をまいて、小さな芽を大事に大事に育てているんですね。すてきなことだと思いました。