お題 / 夏の終わり・夕方の空港
≪敬称略≫
名人10段 梅沢冨美男
「 村上先生には適いませんから、ね。大したもんだ、あなたは。この方が本当の名人になるんじゃないですかね 」
名人10段 フルーツポンチ 村上健志
「 現タイトル2つ持ってる。ここ(MC側の座り席)逆じゃないですか? 」
伍代夏子
自信は?「 あります。初俳句で才能アリだったんですよ、私。絶対に大丈夫 」
三山ひろし
「 あれからもう、俳句の種を探して旅に出る。そういうことが結構ありますね、はい 」
鈴木梨央
「 今、ちょうど、学校の国語の授業で習ってて、種田山頭火の『 分け入っても 分け入っても 青い山 』とか、そういう五七五が無い俳句もあって、楽しいなって思いますね 」
ブルゾン ちえみ
「 この番組で、夏井先生がよく言われている実体験を書きなさい、よく言われているでいしょ。だから私、ぜったいに実体験にしてやろうと思って。ちゃんと、勉強もしてきたわけです 」
Kis-My-Ft2 二階堂高嗣
「 今日、才能あり獲れなかったら、出ません。俳句には出ません。お話が来ても、お断りさせていただきます。覚悟を持ってきました 」
【1位】才能アリ 72点 伍代夏子
惜別の スカイデッキや 秋夕焼
こちら側のスカイデッキにはたくさんの人がいて、それは旅立ちなのか、悲しい別れなのか、それぞれの思いで飛行機を見送っている。それがなんとなく秋夕焼に寂しさを感じて詠みました。
夏井いつき
これは非常に手堅く出来ておりますね。まず、惜別という頭のこの言葉、やり方によったらちょっと抽象的な気分で終わるんです。けれど、これを上手に使ってるということです。ここをね、凡人なら「別れの心」とか「見送る思い」とか「旅立ちの~」とか、なにかそういう言葉をいっぱい使って書きたくなるところなんですが、「惜別」だけで、ぽんと止めている。で、この抽象的な心情をスカイデッキという場所がしっかりと受け止めますので、どういう惜別かというのは ここでちゃんとわかる。ここでカットが切れる。カットが切れた瞬間に、映像はその向こうに見える秋の夕焼けにいくわけですね。そうすると季語が持っている叙情のようなものが「惜別」という思いと、もう1回重なってきますね。
【2位】 才能アリ 70点 初登場 ブルゾンちえみ
秋風と 混ざる荷物の 異邦の香
これ、私のポイントとしては異邦の香なんですけど、やっぱ海外へ行った帰りっていうのをイメージして、「あ、帰ってきたなあ、空港をおりたな~」と思ったら、「ちょっと秋の匂いがするぞ」と思った時に、海外帰りの自分の服とか荷物って、独特の外国の匂いがする、この情景を実体験をもとに作りました。はい。
夏井いつき
とても良いセンスの句だと思います。混ざるって言われて、何が?って一瞬 読み手は思うわけですよ。そうすると、荷物という物が出てくる。ここであえて具体的なことを言わないで、混ざる荷物の何だと思うと、香りが出てくる。異邦の香、ここが1番言いたかったところ、これ、ちゃんと自分のポイントと一句の中のポイント、ちゃんと焦点が合ってますよ。まさにここがキモの表現ですね。惜しいのは1か所、おっちゃん(梅沢冨美男)、今日は冴えてますね。まさに、これ「と」。秋風とといったら、秋風というものとかなり同等なものとして混ざっていく、という印象がどうしても残りますね。秋風にっていうと、秋風が主役として吹いていて、その秋風にかすかに混ざるような香りがすると。この『に』というのが、実はこの季語を主役にちゃんと押し出しておく大事なポイントになるわけです。
【3位】 凡人 60点 初登場 鈴木梨央
機窓にて 心リセット 秋夕焼
秋の景色を見て、自分が1日を振り返って、明日も頑張ろうっていう気持ちで、結構心リセットっていうフレーズが、結構好きで、結構気に入ってます。
夏井いつき
これね、最後の(秋夕焼)け っていうのがありますね。学校でお勉強する時は、けっていう送り仮名を付けるんだけど、俳句ではね、わざと『け』を入れないで、これだけでも夕焼って読むような、そういう慣習があるんですね。こういうふうに付けてダメということじゃないんだけど、字に書いた時にスッキリした印象になったりするので、そういうやり方があるということを1つ覚えてください。
肝心のところ、おっちゃんが時どき当てるという正しいところ、解説しますね。これ、何がもったいないかというと、機窓という光景、映像と、秋夕焼という光景、映像を、心リセットっていうこれが分断してしまってるんです。光景は1つにかためて作った方が、お互いに良い効果を持ちはじめます。上五は字余りにしても許容されます。あなたの1番好きなこの言葉『心リセット』ここが気に入ってるんでしょ。ここからいきましょう。
心リセット 秋夕焼けの 機窓にて
最後、にてで、あなたが飛行機のこっち側に(窓の内側)座ってる。そして、飛行機の窓から秋夕焼を見ている。にてという切れが無いことで、もう1回(心リセット)という心情に一句の思いが戻っていくという、そういう効果があります。
【4位】 才能ナシ 30点 Kis-My-Ft2 二階堂高嗣
歓声に 浸る間なく 別れ烏
初めてKis-My-Ft2 単独ツアーが、大分だったんです。その帰りのことを言ってるんです。今からツアーが始まるぞ、歓声に浸ってる場合じゃないぞ。じゃ、ここからちゃんと巣立っていこう、成長していこう、っていう句を詠んだ。
夏井いつき
ツアーの句を作るのに、こんな悲しげな季語は使わない。浸っている場合ではない。誰かに手を振るような動作 歓声に手を振り……
「歓声に手を振る」スターぽい空気ちょっと出てくる。スターだよね?
最後に季語を入れればいい。分かれ烏以外の、スターっぽい季語入れればいい。ポスターに『七色の』なんとかって、あったやん、あれ、いこうか。
歓声に 手を振り 別れゆく虹よ
【5位】 才能ナシ 25点 三山ひろし
カブトムシ 胸湧き友と テイクオフ
ぼくは今、カブトムシの飼育をしてまして、121匹いまして、それが(カブト虫)が旅行している友達同士と重ね合いまして、テイクオフ、これが1いいんじゃないかと思いましてね。
夏井いつき
何が言いたいか分からないと思う人も、絶対出てきます。カブトムシは、自分で勝手に飼ってください。ここに何か別の、旅行に行く人達なんだなとわかるような季語を入れるだけでいいんですよ。
たとえば『夏帽子の』、と字余りで入れてもいいんですよ。
夏帽子の 友と胸湧く テイクオフ
片方のお友達は、夏帽子のおしゃれなの被って、そして、友と胸湧くテイクオフだよと。あなたの最初語ったような光景の中に、こんな人、1人くらいいるかもしれないでしょ。
永世名人への道
フルーツポンチ 村上健志
八月の 機内に点る 読書灯
八月っていう季語は、やはり、こう数字的な意味だけじゃなくて、八月っていうのは暦の上では秋だけど、やはり夏っぽさがあったり、お盆、魂の行き来、そして終戦っていう色々な意味を背負っている八月。
そんな季節の飛行機の中で、読書灯という、まあ、なんともピースフル(平和)な、世の中にあるものの中で、読書灯ってなんてピースフルなんだろう。読書灯が灯っているっていうのが、今後も八月っていうのがこんなふうに平和な世界であって欲しい、という思いです。
評価のポイント
中七 機内に
一つ 前進 ★ ⇒ ★★
前進の理由
八月という季語は、もう複雑な思いをいっぱい持ってますね。原爆、お盆、終戦とね。その難しい季語を、機内に点っている読書灯だけで表現しようとする、と。
この詩の感覚というのは、見事だと思います。これは(機内)に点るですから、自分が点している光景ではないんですね。たとえば、並ぶだと、ただ並んでいるだけだけれども、こう機内を見渡した時に、(読書灯が)点っているという、そのささやかな光景に、この人は平和というものを感じ取っているわけです。「この映像だけを切り取りたかったんだ」というのが、ちゃんと伝わってきました。
梅沢冨美男
秋夕焼 機内に遺影の 席ひとつ
このお写真というか、これをいただいた時に、はっと思い出したんです。飛行機に乗る時に、(遺影を)荷物にも預けたくないし、飛ぶ時下にも置きたくないので、CAさんていうんですか、女の人に「しっかり抱いて、膝の上に抱いてていいですか」って聞いたら、そのCAさんが「失礼しました。隣の席が空いてますから、その席に置きましょうね」って、いいお話を読んだんですよ。
評価のポイント
中七 機内に
一つ 前進 ★★ ⇒ ★★★
前進の理由
あえての中八が、成功している。評価の分かれ目は、中七をあえて中八にしてまで『に』を入れる必要があるのか? どうか、ここが評価の分かれ目になるんです。
たとえば中七のにをやめようとしたら、こっち(上五)を字余りにして、
秋夕焼の 機内遺影の 席ひとつ
ってやっても、やろうとしたら出来るんです。そうなったら、自分の事なのか、第3者の目線で書いてるのか、ここに意味の違いが出てきてしまうんです。
秋夕焼の機内ってやったら、絶対に機内に入って自分は座って、窓から秋夕焼を見ています。そして、カットが切られて、遺影の席となったら、たぶん座ってここにある遺影を見ていますね。
ところがこの句は、秋夕焼でカットが切れる。美しい秋夕焼だなと思って機内に乗り込んで、自分の席をこう探す。そうして見ていくと、あれ、遺影の席が1つあるぞ……そん時に心がちょっとだけ、はっと動く。第3者の目線で、この場面に遭遇して書いたに違いないと判断できるんです。さすが、おっちゃんです。
気ままな感想です~(*^-^*)
やっぱり名人の句は、どちらも流石だと思いました。
ただ、今回は Kis-My-Ft2 二階堂高嗣さんに、これからも出てきて欲しいですね~~。
「現状維持、負けるのに慣れている」って、言いきったのは、なんだかいいですね。
こう、上手い人だけじゃ、ぜったいダメなんですよね。上手い句は、日本人って誰でも、昔からけっこう知っているんですよね。だけど、いや、だからこそ、俳句は難しい、そんないい句なんか作れっこないって、敬遠してしまうんですよね。
だけど、凡人の句とか、才能ナシの句とかを見ていると、この位だったら自分でも作れるんじゃないかって、思えてきちゃうんですよね。で、気軽に作ってみる。こう、置きに行くっていう感じで。下手でいいんじゃないのかなぁ、味があって。
何度もなんども挑戦するって、ほんとは、一番カッコいい気もするんですよね。負けて、負けて、負けて、それでも、挑戦しつづけるって、なんだか、いつか、なにかに化けそうな予感がします。
こういう人達が、俳句を一般の人に近づけたというか、俳句を始めるハードルを低くしているっていう、功績は大きいような気がしますね~。