今週のお題「おじいちゃん・おばあちゃん」
6月に新規で担当し、ケアプランを作ったけれど
7月に施設に入られてしまった方がいました。【6月24日の記事参照】
じつはそれから1か月も経たないうちに、
再び地域包括からお電話がありました。
「○○さんなんですけど……」
「ああ、○○さん、その後、お元気ですか?」と私。
ちょっと間があってから、
「施設を出て、家に帰りたいって言ってるんですけど……」
「は?」
「いろいろあって、嫌になったみたいで。
だけど家族は、今さら帰ってきてもらっても困るって、
それで今、話し合いをしているんです」
施設にバラ色の人生を思い描いていた方でした。
見学をして、きれいなお部屋や清潔なダイニング、
広いお風呂、設備と介護スタッフがそろった施設でした。
お掃除もお洗濯もやってもらい、食事の支度や片付けで悩むこともなく、
困った時にはやさしい介護士さんに助けてもらって、
ああ、なんて恵まれているのでしょう……と。
ただ、どこへ行ってもつきまとうのが、人間関係です。
他の利用者様と、介護の人と……。
なにしろ施設というのは、一般の住宅に比べて密度が濃いですから、
いったんこじれると逃げ場がありません。
某アパートの壁が薄いと社会問題になったことがありましたが、
施設の壁はそれよりも薄いと思ってもいいでしょう。
ちょっとした物音さえも、隣にも廊下にもつつぬけってことに……。
(よほど高級な施設なら大丈夫かもしれませんね。)
無口な人は、他者の騒音に悩み、
話好きな人は、他者に及ぼす騒音が苦情につながります。
神経質な方は、生活音でさえも文句を言ってきたりして。
何しろ長い年月、全く違う生活をしてきたおじいちゃんやおばあちゃんが、
狭い空間にぎゅっと押し詰められるのですから、
これはなかなか大変です。
○○さんは耳が遠いので、ついつい大声になったようです。
それに話好きということもあって、
他の利用者様から苦情がきたようなんですね。
それと介護の人が、あまり話もしてくれないし、
世話もよくしてくれないということでした。
なにしろ人手不足な業界なので、
どうしても大変な人から先にお世話することになってしまうし、
世間話におつきあいする余裕は、
介護の人だけでなく
相談員や事務員でもなかなか無いのが現状です。
こんなはずでは……と、
つくづく施設が嫌になって帰りたいということでした。
けれど、
たったひと月くらい施設にいただけなのに、
歩くのも難しくなってしまいました。
家にいた時はつたい歩きでおトイレまで行けたのが、
車椅子になってしまったのですね。
要支援1の夫は、
「もう世話ができない。それに自分にも趣味があって
外出するようになったのに、それもできなくなってしまうから嫌だ。
わがままを言っていないで、このまま施設で暮らしてほしい。
我慢していれば、そのうちに慣れるだろう」
と、がんとして譲りません。
○○さんは「帰りたい」の一点張りで、息子さんにも泣きついて
いつ帰れるのかとそればかりとのことでした。
地域包括の方もほとほと困り果てて、
「今度、キーパーソンの息子さんも含めて話し合いをするので、
来てもらえませんか?」
ということで、私も参加することになりました。
話し合いの結果、
ショートステイ(施設)を平日利用し、
土日は自宅でヘルパーさんに支援を受けて生活する
ということになりました。
また、特殊寝台と歩行器を借りて、
ベッドの脇にポータブルトイレを置くことになりました。
それでも帰る家があったので、○○さんは良かったです。
9月からそれでやっていますが、
今のところ、ショートステイでも問題が起きていませんし、
自宅でも大丈夫なご様子です。
今までのケアマネとしての経験からすれば、
おじいちゃんやおばあちゃんの施設での生活で
こんなはずでは……という想定外の訴えは、
ほとんどが、他者との人間関係でした。
あまりひどい時には、お部屋を替えてくれることもありますので、
相談してみるといいですよ。
ああ、そうそう、○○さんには、
「また、担当ケアマネでお願いできますか?」
と聞かれたので、
「いいですよ」
と返答しました。