桜さくら堂

いらっしゃいませ! 今日もあなたのために、とっておきのお話をご用意しました。

浅田家! 中野良太 を詠みました (*´ω`*) ほのぼの~💛

お題「ゆっくり見たい映画」

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 じつはこれ、映画の脚本から書き下ろした小説なんですね。

だから、映画が先。

でも、映画の前に写真集が出ていますから、

「浅田家!」の写真集 ⇒ 映画 ⇒ 小説

の順になるようですね。

 

とりあえず ≪ ネタバレ注意 ≫ と書いておこう。

 

浅田家は、主人公の写真家 政志 とその兄 幸宏

消防士になりたかったという主夫である父の 

一家の台所を支える看護師の 順子 の4人家族だ。

後に、幸宏も政志も結婚して子供が出来て家族は増えていくが、

基本はこの4人の話がメインとなる。

そして、序章でいきなり父 章の葬式場面から始まる。

嵐のファンというわけではないけれど、

二宮和也さんの帯で気持ち良くページをめくったのに、

なんという不吉なっ、

感動実話とかあるけど、

もしやお涙頂戴😢の暗~い話では!?

と警戒しながら読み進んでいくと、

父親の遺影を持ってくる辺りから、意外と軽く話は進んで行く。

文章のトーンが軽いので、

もしかして、これってギャグ? お笑い系の本だったかいな?

と勘違いしてしまいそうだ。

つまりは読みやすい文章ってことでしょうか?

さらに序章で兄が父・章の葬式の情景を語る以外は、

政志の10歳からの出来事を順を追って語っているから、

じつに分かりやすい構成になっている。

うん、これは使えそうなので、いつかマネしてやろう。

家族の人柄や仕事、出来事など、

どうやって政志が写真家になったかが、

手に取るように分かってしまうという、なんて読者に親切な本なんだ。

しかも、それが笑えてしまう。

それぞれの家族が、じつに温かい。

現代の家族がたぶん、どこかに、

そう、あの空のどこかに置き忘れてしまったものを

ちゃんと持っている。

だから、それぞれの人が、妻や夫や、子供のどこかの立ち位置で

これを読んで、共感し心を温めるのではないのだろうか。

 

そう、サザエさんのような温もりがある。

話は逸れるが、サザエさんの作者・長谷川町子さんは、

自分が描いている世界が、時代と共に実際の家族とズレはじめ、

そのズレが大きくなり過ぎたので描けなくなったのだ、

と大学の先生が言っていたのを、ふと思い出した。

 

たとえば主夫である章は、消防士になりたかった。

しかし妻の順子が子供の頃からなりたかった看護師になって、

夜勤も多かったから、家のことは全部章が受け持ったという。

そして、その夢を叶えるために、

章が消防士になった写真を撮るのだ、家族全員で。

次は、順子だが、看護師以外では、

極道の妻にあこがれていたとか。

これも家族全員で撮り、

順子は、こう啖呵を切る。

「うちは極道に惚れたんやない、

惚れた男がたまたま極道だったんや!」

その写真が本のページにあるけれど、

ちょっと笑ってしまった。

そのままの格好でラーメン店に入って、

店主が誤解する辺りの会話を読んでいたら、

やっぱり、これはお笑いの本だ! と思ってしまった。

この調子でどんどん話が進んでいき、

途中紆余曲折があったけれど、結局は

写真界の芥川賞! 35回木村与兵衛写真賞 を受賞する。

それから他所の家族も撮り始める辺りまでいっても、

まだまだ、お笑いの本という疑念を捨てきれなかった。

 

それが変わったのが、

東日本大震災の場面が出てきてからだった。

ここから政志の写真家としての苦悩が始まるわけなのだが、

これだけの重い事実は、

やはり全体を語るトーンが軽くなければ、

沈み過ぎてしまうのかなとも思った。

ここでも写真家政志は、普通の写真家のように

悲惨な現場を撮るのではなく、

被災にあって汚れ持ち主を失った写真を洗浄し、

本来の持ち主に返すというボランティアをする。

写真を通して家族を失った人の心情に寄り添って、

一緒に悩み、一緒に喜ぶ政志。

やはりこんなところにも、政志の人間性が出ているなあ

と思わせる。

 

「浅田家!」

今度は、映画を観たくなりました。