桜さくら堂

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スポットライトをぼくらに あさのあつこ著 

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濃いキャラが揃っている。

主人公の秋庭樹は中2、青春まっただ中の普通の少年だが、

父親の秋庭陽介が普通ではない。

小さな建設会社、高利の貸付、土地売買、レストラン・スナック、そして

トップレスバー「フラワーヘブン」を経営している。

周囲からは金の亡者と言われている。

 

親の職業は、現代でも子供の人格形成に大きな影響を持つ。

が、こういう両親を持つと、どんなだろうか?

 

幼なじみの友人は、IQ160以上の秀才雨宮達彦で、

「からっぽの大人になりたくない」という。

もう一人は美鈴という勝気な女子で、

「わたしたちって、すごいスピードで生きてんだよ。

のんびりゆっくりなんかしてたら間に合わないんだよ。

強くなりたい。淋しい大人になりたくない」という。

 

これに「フラワー・ヘブン」のフィリピンのダンサーや

金持ちのぼっちゃんちんぴら、

父親の秘書兼用心棒が絡んで、

劇画タッチで話は進んでいくのだ。

普通の中学生の日常とは、ちょっと異色で濃い。

そして、熱い。

現実離れしているが、

こういう熱さは嫌いではない。

勢いともいうかな。

若竹がぐい~~んって成長していくような、

そういう感じがある。

 

あさのあつこは、『バッテリー』の作者だ。

彼女の作品は、だいたいが熱い。

青いともいう。あさのあつこ氏は、

「十代のころ掴んだ若く、青く、甘い夢。

たいていの人はそれを捨てることで大人になっていきます。

わたしは樹にそれを捨て去って欲しくなかった」

という。

この青さは、私は好きだ。

 

樹は進路調査書を白紙で出す。

思い描く将来像が無いからだ。

そういえば、自分にも無かったなと思う。

日々、苦労している親をみていて、

夢や希望のある大人像がどうしても描けなかったからだった。 

 

現代は早いもの勝ちだ。

勉強でもスポーツでも、何でも、

最年少記録という言葉が大手をふって歩き出す。

それが美鈴の間に合わないってことなのだろうか?

早く目標設定をして、

早く歩き出さなければ、勝てない。

そのゆえか、多くの親は子供に

最短距離のレールを引いて、歩かせたがる。

転ばないように、失敗しないようにと。

たぶん美鈴の意味は、これとは違うような気がする。

 

だけど失敗って何だろう。

それは学びに過ぎないのではないか。

人生は、勝ちとか負けではない。

勝ちとか負けという価値観は、

あまりにも貧しい人生の捉え方だ。

失敗することさえも許されずに大人になるということは、

さなぎのまま、

いきなり世の中に出ることなのではないか。

 

秋庭樹には兄がいる。

樹がこの地方の街にかかわり続けて生きていくのに対して、

兄は「こんな腐った街にも家にも二度と帰って来ない」

と言って、大阪の私立高から北海道の医学部に進む。

 

やがて父親が病で倒れた時、

事業に翳りが兆した時、

兄は戻らなかったけれど、

樹と達彦と美鈴はこの街の救世主として現れる……。

 

主人公とその友が、

ちょっとカッコ良すぎる感じはするけれど、

作者のあさのあつこ氏は、

躓きながらも、大人の解決策をはねのけ

「おれたちの問題だよ」と、

自ら獲得する自分なりの新しい価値観を

子供達の側に立って提示していく。

他者がどう思おうと、

徹底的に自分の気持ちに拘っていく生き方は、

あぶなっかしいけれど

小気味いい後味が残る作品となっている。