最近、ちょっとなんかなあ・・・って思いませんか?
家のことも、子供のことも、仕事も自分なりに一生懸命がんばってきたのに、
なんでこうなっちゃうの?
そう思うのは、きっとあなたの心が疲れているからかもしれません。
閑静な住宅街の中にある「シェアハウス&キッチンY」のオーナーは、
ちょっと不思議な存在です。
心やさしく頼れる存在の山崎ぶたぶたが住人と一緒に
あなたの心をそっとやさしく癒してくれます。
光文社 書き下ろし
🏡 シェアハウスの外観について
低い草木や花の植え込みが適度に視界を遮る小さな庭の向こうには、大きなガラス窓が見える。木目調の内装と立派なキッチンは、シェアハウスというより、おしゃれなキッチンスタジオみたいだった。
🏡 オーナー・山崎ぶたぶたさんについて
下を向くと、そこには小さなぶたのぬいぐるみが立っていた。バレーボールくらいの大きさの桜色で、黒ビーズの点目と突き出た鼻、大きな耳のぬいうぐるみだった。右耳はそっくり返っている。
「どうぞ、入ってください」
鼻先がもくもくと動くと、そんな言葉が聞こえた。中年男性の声だ。
🌸 この辺りでだいたい想像がつくと思うが、これはファンタジーだ。
たぶん、そう。
視点は、山崎ぶたぶたに遭遇した普通の人間になる。
『シェアハウスぶたぶた』は5つの短編になっているが、それぞれの主人公が
ぬいぐるみのぶたぶたに出会って驚くところから、物語は動いていく。
その驚き方がいたって静かだ。見たものを信じられないと自問自答するのだが、
それが逆にリアリティの効果を果たしている。
こんな感じに・・・。
🏡 たとえば第1話の「ワケアリの家」の門倉実里の場合はこうだ。
ぬいぐるみがこっちを向いた。うっ、と声が出そうになって、必死にこらえる。
ぬいぐるみの点目の上に八の字のシワが寄り、困ったような顔になった。
「あ、びっくりさせてしまいましたね。すみません。わたしはここのオーナー兼管理人の山崎ぶたぶたといいます。どうぞお入りください」
え、オーナー? ということは、このぬいぐるみが大家さん? 弓花が「すごくいい人だから」と言っていた人? 人じゃないけど。
記憶をたどると、「山崎さん」とは言っていたような……どうして下の名前も教えてくれなかったの? ぬいぐるみってことも!
🌸 この太字の部分が、実里が自問自答しているところになる。
この話はここを(ぶたのぬいぐるみが人間と同じ役割をする)受け入れられるか
どうかにかかっている。
そう、心のやわらかさの問題なのだ。
🏡 ワケアリの家
実里の母親は「毒親」だという。
「お前のためを思って」と言いながら、娘の全てを否定し管理してきた。
「お前は不細工だから」とおしゃれも禁止し、進路も将来も母親が決めてきた。
そんな実里が大学に入って、弓花という親友にメイクをしてもらい変身する。
卒業後、シェアハウスに入ってぶたぶたの助けで、母親から自立していく。
母親も子供のころ、同じような経験をしてきたことがわかるという話。
🌸 この話は重いかもしれない。
ユニークなぶたぶたが緩和の役割を果たしているようだ。
🏡 自分のことは
岸川宗明はモラハラを続けたため、老年になって妻から離婚を迫られ、
子供には見放されて、日常の生活に悪戦苦闘している。
そんな中でぶたぶたに出会い、自分では何もしてこなかったことや
妻や家族に対する自分の態度に反省して、ぶたぶたに教わりながら
家事を覚えていこうとする。
🌸 「家事初心者講座」には岸川宗明のような人ばかりではなく、
高校生の少女や、新卒社会人のような男性、ベテラン主婦くらいの年代の人も
いて、まだ若いのに、
「もっと早くぶたぶたさんに教えてもらえばよかった」
それに対するぶたぶたの答えは、
「いつでも遅すぎるってことはないんだよ」
これはいい言葉ですね。
私も生きているうちは、遅すぎることはないと考えている
(おめでたい人間のうちの)ひとりですから。
🏡 行かなかった道
同じく「家事初心者講座」に通っている舞彩という女子高生が主人公。
友だちもいなくて学校でもひとりぼっち、両親は仕事に夢中で
舞彩をかまってくれないという環境から変わりたくて、一念発起し、
生活力をつけようとぶたぶたの所へ通い始めた。
そこでシェアハウスに住んでいる智世という社会人の女性と仲良くなる。
智世は、舞彩が好きなミュージシャン梶野幾多の元恋人だった。
梶野幾多から離れるためにシェアハウスに入居したという智世が、
行かなかった道を歩き始めるまでの話。
🌸 後半の智世との話は華やかだけれど、それよりも舞彩がぶたぶたに出会って、
「どうしたら変われるの?」と聞く場面が印象に残った。
ぶたぶたは、こう答える。
「自分が変わるのが、一番簡単だよね」
「地道に変わるしかないけど、あまり面白くないよ?」
「明日変わりたいと思うなら、やめなさい。続けていれば一か月後、
半年後、一年後には確実に変わってるけど、気づかないくらい地味で
つまらないことだから。それでもいいなら教えてあげる」
つまらなくても、近道をしたくても、1本の道を毎日1歩でもいいから
進むしかない。
でも、たったそれだけ。
たったそれだけだから「簡単」。
いい言葉だなと思う。
こういう言葉に出会えるのがいい。
🏡 優しくされたい
2年前に相次いで両親を亡くし、長年飼っていた猫のウニも亡くし、
天涯孤独になった飯尾まひるは、ぶたぶたの優しさに救われる。
両親と住んでいた思いで深い家を売って、シェアハウスに引っ越そうかと
悩んでいたら、捨て猫に出会う。
小さな毛玉のような子猫を抱えた時、自分は優しくしてもらいたかったのでは
なく、誰かに優しくしたかったのだということに気づく話。
🏡 るーちゃん
これはぶたぶたさんの子供の話だ。
ぶたぶたさんは妻子があって、1階の奥に住んでいる。
ぶたぶたさんの家族について、少しだけ謎が解けるような話だが、
まだまだ謎は山積されている。
🌸 キーパーソンの山崎ぶたぶたさんが、ぬいぐるみである以外は
現実の人間社会が展開されていてリアリティもあります。
問題はこのぶたぶたを、あなたが受け入れられるかどうかです。
もし、受け入れることができるのならば、
このぶたぶたシリーズはあなたにとって最高の癒しの本になるでしょう。
もちろん私は、ぶたぶたさんがすぐに好きになりました!
まだまだ他のぶたぶたさんも読むつもりなので、
順次、感想をお伝えしたいなと思っています。
ぶたぶた日記(ダイアリー) (光文社文庫) [ 矢崎ありみ ]
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