ことしの夏は、海がとても遠い・・・ような。
そんなあなたに、海の家のぶたぶたはいかがでしょう。
町の海水浴場にできた、ひと夏限定のレトロな外観の海の家『うみねこ』。
うみねこというお店なのに、店主はぶたのぬいぶるみなんです。
そう、ここはぶたぶたさんの海の家。
どの話もちょっとおかしくて、そしてホロっとする海にまつわる話が、あなたを夏の海へと連れていってくれますよ。
光文社文庫 書き下ろし
海の家 うみねこ
何年も経っているような古い感じの海の家。海の家の組合の人から、以前のうみねこを知り、それを真似て造ったもので実際は新しい海の家。
食事のメニューは、「ラーメン」「カレー」「焼きそば」「かき氷」と普通だがすごくにぎわっている。
特にかき氷は種類が豊富で、シロップが自家製で氷がふわふわしていおいしいと評判になっている。
山崎ぶたぶた : 海の家「うみねこ」の店主
【外見】桜色をしたバレーボールくらいの大きさで、右耳がそっくり返っている。
黒ビーズの点目と突き出た鼻が愛らしい。
手先の先には、濃いピンク色の布がひずめのように張られている。
【中身】中年の男性・・・つまり、おじさん。
渋くてとてもいい声をしている。
海の家うみねこ
高1になった榎本芙美乃は人見知りを克服したいので、夏休みにバイトをいたいと思っていたが、過保護の母親の反対されてしまう。
そこで母親に内緒で、海の家うみねこで面接を受けたが、「親御さんの許可がいる」と言われてしまう。
そんな折、転勤からひょっこり横浜にもどった父親と弟の巡と一緒に海の家うみねこに行くと、父親が「なつかしい」という。 父親は昔のうみねこで、母親と出会ったのだった。母親が昔のうみねこでバイトしていたときに、不良にからまれたのを父親が助けたのがなれそめだと聞く。
偶然、母親も海の家うみねこを見にきて、父親と出会い、バイトをしてもいいということになったのだった。
きっと、ぬいぐるみのせい
戸叶尊は彼女の雛子と海水浴に来たのだが、電車が途中で止まるなどしたため、海に着くのがだいぶ遅れてしまった。そのうえ、海は混雑していた。
尊が水着に着替えて更衣室から出てくると、雛子はワンピースのままで、このまま帰るという。
わけをたずねると、「あのぬいぐるみのせいだよ」と。しかも、「理由がわかるまで連絡しないで」と言われる。何のことかさっぱりわからない尊は、ショックを受けて海の家うみねこの入り口で座り込んでしまう。
心配したぶたぶたやグルメライターの内田公夫に声をかけられ、一緒に雛子が言った言葉のなぞをさぐっていく。
かつて尊は、雛子がテディベアがいいと言ったら、テディベアばかりをプレゼントしてしまうなどをしていた。今回も、ひどい暑さと電車が遅れて混んでいたりという不愉快な出来事が重なっていたのに、尊はこれから楽しい一日を過ごすとしか考えていないそのギャップに耐えられなくなったのだという。それがわかって2人は和解へと向かう。
こぶたの家
滝尋也は小学4年の夏休みに、父親の転勤で海のある街へ引っ越してきた。
今まで住んでいた山と畑に囲まれた好きだったが、海はそれほどでもない。友達もいなくてつまらない毎日だった。
海が好きな母親にさそわれて波打ち際を歩いていたら、古くて壊れそうな海の家があった。尋也はまるで『三匹のこぶたの家』みたいだと思う。
すると本当に絵本に出てくるようなぶたぶたを見かけておどろくが、母親はぶたぶたに気がつかない。さらに尋也だけ、サーフィンをしているぶたぶたも目撃する。
気になって朝早く海に行くと、釣りをしているぶたぶたに出会う。ぶたぶたと親しくなった尋也は、明日かき氷を食べにくると言って別れたが、翌日は父親に山に連れていかれて行けなくなった。
その翌日、天気が荒れてぶたぶたの海の家が、三匹のこぶたの家のように飛ばされてしまうんじゃないかと心配になって見に行くのだった。
思い出のない夏
忠和は夏にいい思い出がなかった。
両親が店で忙しかったからで、特に夏は海の家もやっていたため、小学1年からほったらかされていた。兄もいたが、兄は中学生になると忠和を置いて外で遊んでほとんど家に帰らなかった。
やがて忠和も結婚し子供ができた。そして、両親が亡くなってから、小学2年生の息子の展孝をともなって実家をおとずれた。
着く早々に展孝にねだられて海へと向かうと、そこで父親がやっていた海の家とそっくりのぶたぶたのうみねこがあったのだった。そこで展孝といっしょにカレーを食べた忠和は、なつかしさに思わず涙するのだった。
両親の遺品整理をしていて、放置されていたけれど、実は自分が両親に愛されていたということに気づかされる。兄も忠和を顧みなかったことを後悔していたのだった。
合コン前夜
久保田朝は合コンの幹事のはまり役で、今回は友人からのリクエストで夏真っ盛りの海水浴場での合コンを計画していた。 完璧な合コンにするため、わざわざ海水浴場に下見にきたのだった。
たまたま「海の家うみねこ」のかき氷を見ていたら、グルメライターの内田公夫に声をかけられる。ここのかき氷を知らなかったことを指摘され、プライドがきずついた久保田朝はかき氷を食べることにした。
そこでぶたぶたに出会っておどろき、かき氷のおいしさにおどろく。そして、ここで合コンを予約しようとしたが、予約を受け付けていないので諦めることに・・・。
真夏の焼けつくような太陽とじりじりと熱い砂浜、そして浜の香りがするような海の家ぶたぶたの5つの話でした。つかの間ですが、ちょっとだけ海水浴に行ったような感じがします。
それにしてもこのレトロな『海の家うみねこ』は、なんだかいい感じでぜひ行ってみたくなりました。かき氷も美味しそうですし。そういえば、今年はまだかき氷は食べていなかったです。このままいくと、海水浴どころかかき氷も食べないまま夏が終わってしまいそうです。💦
お決まりのぶたぶたに初見したときの、主人公の驚き方がやっぱりおもしろいですね。驚くとわかっていながら、素直に驚く人や信じようとしない人、それから空想の世界に入っていってしまう人などうまく書き分けています。そうして、やっぱりほとんどが受け入れて大好きになってしまいます。
なにしろぶたぶたはジェントルマンですからね。それに出しゃばったりしないで、そっとさりげなく主人公をフォローするのです。そういう控えめなところがいいですよね。まあ、命を持ったぬいぐるみという存在自体が派手ですから、それでちょうどバランスが取れているのかもしれません。
作者矢崎存美さんは星新一ショートショートコンテストで優秀賞をとってデビューした人です。ですからお話は、ちょっと奇想天外な素質が垣間見られます。でも、向日性があって読後感がいいんですよね。
どのお話の主人公もそれぞれに悩みを抱えていますが、それがぶたぶたと接しているうちにするすると解決していきます。それを読んでいて、きっとあなたもいっしょに悲しんだり、悩んだり、そして、ほっとすることでしょう。
海の家のぶたぶたといっしょに、あなたも海で遊んでみませんか?
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