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ぶな森のキッキ〖今村葦子作・遠藤てるよ絵〗の感想/童心社

大あらしのつぎの日、ぶな森のリスのキッキは、

すっかりむくちになっていました。

 

・・・で始まるこのすてきな童話(絵本)は、小さなお子様だけでなく

大人の人にもぜひ読んでほしいすてきなお話です。

 

f:id:sakurado:20210818104749j:plain 童心社

今村葦子作/遠藤てるよ絵

お題「我が家の本棚」

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ぶな森のキッキf:id:sakurado:20210818105933p:plain

 あらすじ

大あらしのあとの森は、太いモミの木が倒れたり、お花畑がだめになったり、もうめちゃくちゃになっていました。

いつも元気いっぱいだったリスのキッキは、大あらしのつぎの日からすっかり無口になってしまいました。仲間のリスが話しかけても、ぷっとふくれたようにだまりこんでいました。みんなが心配して声をかけても、だまりこんだまま木の根元にすわって動こうともしません。

けれどキッキは、ひとりぼっちのリスのようではなく、ふさふさのしっぽが満足そうにゆらゆらとゆれていました。

つぎの日もつぎの日も、キッキはだまりこんでいました。そればかりではなく、朝ごはんも昼ごはんも夜ごはんもまるっきり食べなくなったのです。3日目も過ぎてキッキはだんだんやせてきました。

仲間のリスは心配でたまらなくなって、キッキをとりかこんでやせ細ったキッキを見守っていました。

5日目も過ぎ、6日目も過ぎました。そうして、つやつやだった毛がぼろぼろになっているのに、なぜかやせ細ったキッキは幸せそうに見えるのでした。

仲間たちはキッキのそばに体をよせあって、

「この夜が明けると、7日目の朝だ」とささやきました。

 

7日目の朝、キッキが「ほーっ」と長いためいきをつきました。それからキッキは小さな両手をそっと口もとに運んで、口から小さな水色のたまごを取り出したのです。

キッキは晴れ晴れとした声で、「長い間、心配をかけてごめんね」と言いました。

「ぼく、見つけたんだ。……きんぽうげの茂みの中に、落ちていたんだ。まだあらしが吹き荒れているのに、このたまごったらほっかりと温かいんだ。

それで、『たいへんだっ!さっきまで母さん鳥が温めていたんだ』と思ったとたんに、ぼく、たまごを口の中に入れてたんだ」

だけどもう大丈夫。さっき口の中で、ひな鳥がコツコツたまごのカラをノックするのが聞こえてきたのです。

やがて殻から黄色いくちばしの先が見えました。けれども何かをこわがっているようなまっ黒い目がのぞいてから、たまごは動かなくなりました。そして、中から、

「……キッキ? キッキ?」と呼ぶ声がしました。

キッキは思わず、「はいっ!」と返事しました。「ぼく、ここにいるよ。だいじょうぶだよ」とささきました。

そして、とうとう生まれたのです。

 

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水色のたまごをわって、ひな鳥が生まれたのです。

キッキに抱かれたひな鳥は、甘えた声で、「キッキ?……キッキ?」と言いながら、うぶ毛の生えた羽をのばしたりちぢめたりしました。

 

「ぼくはどうしたって、この子を育てよう。ぼくはリスで、この子は小鳥だけど、そんなことかまいやしない。みんなこのぶな森のなかまだ……」

キッキがいうと、仲間たちが力強くうなずきました。

「大あらしにも負けなかった命だ。ぶな森のキッキが大空を飛ぶんだ。そんな日がやがて来るんだ」

キッキがつぶやいて初夏の空を見上げると、そこに立派に育ったひな鳥の姿が見えるような気がしたのです。

💛 感想f:id:sakurado:20210818115520p:plain

ぶな森のキッキは、もうずいぶん読みました。

そして、読むたびに、新しく、心がふるふるとなるのです。

こうした読み方は子供の頃にはできたものですが、大人になってからはとんとありませんでした。

ぶな森のキッキは、こんな短いお話のなかに、とても大切なことが書いてあるってことが、頭ではなく心がわかっているからなのでしょう。

なぜなら、もうこのお話のストーリーはちゃんと知っているのですから。

 

リスのキッキは、オスのリスなのです。そして、とても元気いっぱいなリスです。

そしてまた、とってもやさしくて細やかな 心を持ったリスなのです。それは、きんぽうげの茂みのなかに落ちていたたまごを見つけて、それがまだ温かくてキッキは、

「それで、『たいへんだっ! さっきまで、おかあさんどりがだいていたんだ』とおもったとたんに、ぼく、たまごを口のなかにいれていたんだ」

というところで物語っています。

 

なかなかこうはいきません。

たとえばたまごを見つけたとしても、大あらしの中です。

どんな嵐かというと、 

「そこらの木は、ごうごうとゆれてるんだからね。ことりのいえなんか、ふっとばされたんだからね。もうおやどりだってふきとばされるほどの、あらしだったんだからね」

と、キッキはふり返って語っています。

 

ふつうはそんなのほおっていうて、さっさと自分の身を守るために行ってしまいます。

もうちょっと思いやりのあるリスだったら、手にとるかもしれません。でもそれが温かいって気づくでしょうか。

気づいたとしましょう。だけどそのたまごが、さっきまで親鳥が温めていたたまごなんだって思い至るでしょうか。

いえいえ、キッキのすごいところは、そう気づいたとたん、たまごを口の中に入れていたところなんです。この行動力がすばらしいなと。

 

世の中に口では「人の命は大切だ」「大切にします」と言う人はたくさんいます。しかし、それが真心からのものかどうかは、その人の行動に現れてしまうものです。

 リスのキッキは思わずだから、もう、瞬間的になのです。口のなかにたまごを入れて、そして、7日間もずーーっと、飲まず食わずで、温めていたのです。どこの誰のたまごとも知れないのに。

 

そして、リスのキッキを思いやる仲間のリスたちも、とってもやさしいのです。

なかまたちはもう、すこしのあいだだって、キッキをひとりぼっちにしませんでした。ぐるりとキッキをとりかこんで、しんぱいそうに、すっかりやせほそったキッキを、みまもっていました。

さらにぶな森の自然も擬人化されて書かれています。こんなふうにーー

かぜがためいきをつきました。すると森の木が、

「……おねがい。キッキ、おねがい……」といって、ざわめきました。

 

そうして、水色のたまごが、コツコツと殻をノックするのです。

この辺りがとても温かい視線で書かれていて、ですから

ヒナがかえったときには、もう、キッキや仲間のリスたちと一緒になって、喜びがひたひたと胸にせまってきました。

そうです、ぶな森のキッキは、『命の大切さ』を物語っているのです。

 

私がつねづね思うことは、命が何よりも大切だということ

 

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どこにでもいる普通の人間が、だれかのためにひたむきに生きているっていうことに、私は何よりも感動します。

 

何の華々しい結果を残せず、みんなに誉められもせず、それでもひたむきに生きている人に接すると、なんだか涙が出てきます。そういう人に、私は金メダルをあげたい・・・

ほめられもせず、

・・・そういう人にわたしはなりたい

って、なんだか宮沢賢治みたいになってしまいました。

 つまり、何を言いたいのかっていうと、

「感動は大げさな場所だけではなく、日常のいたるところのあるのだ。感性を研ぎ澄ませよう」

っていうことです。

 

さて、ぶな森のキッキには、じつはユーモアもあります。

ユーモアってとても難しくて、ユーモアのセンスがある日本人はとても少ないなって感じています。ダジャレはとても多いですが。

ユーモアはお話のトーンが定まっていて、それがわずかにズレたところに生じるのです。これのズレが大き過ぎても多すぎても、ドタバタ喜劇のようになってしまいます。

 

ぶな森のキッキでは、

するとかぜは、ちょっとことばにつまってふきやんで、それから、

「ぶな森のリスのキッキが、口のなかでひなをかえした!そのひなのなまえが『ぶな森のキッキ』だ!」といいました。

ここはユーモアといえるかどうか、ちょっと微妙ですが、でも、この幼い子供向けのお話の流れでは、私はありかなと思いました。

そもそも、リスの名前がキッキで、ヒナが殻の中から、「キッキ?」と呼びかけるところなんか、うまいなあと思いました。

でもこういうところはこの話の重要なところではありませんが、こういう細部にも神経がいきとどいていて、丁寧にお話がつくってあるなあと思って、一応書いておきます。

 

作者について

1947年熊本県に生まれる。

『ふたつの家のちえ子』(評論社)で、第24回野間児童文芸推奨作品賞、第2回坪田譲治文学賞、第37回芸術選奨文部大臣新人賞を受賞。

同作品及び『あほうどり』『良夫とかな子』(ともに評論社)で、第10回路傍の石幼少年文学賞を受賞。その他、作品多数。

『ぶな森のキッキ』で、絵本にっぽん大賞を受賞。

 

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