ママから無実の罪で叱られたさくら子は・・・家出をすることにしました。
もうぜったい、家にはかえらない。
ママが、ごめんねとあやまってもかえらない。
パパが、「さくら子、かえってきてくれぇ」とさけんでもかえらない。
妹の杏里が、「おねーたん」とよんでも・・・。
リュックに色んなものをつめ込んで、夕方の駅にポツンと立っていたら、やってきたのは、「いえでででんしゃ」でした。
家出した子供だけが、ただで乗れるという。しかも、ハンバーガーのおまけつき。
いででででんしゃ あさのあつこ・作/佐藤真紀子・絵/㈱新日本出版社
さくら子は、足もとの小石を思いっきりけった。足の先がじんとした。なみだがにじんだ。
泣かないぞ。悪いのは、ママなんだから、泣いたりしないぞ。
誰でもかならず1度や2度は経験する無実の罪というやつ。
花びんを割った犯人を疑われたのでした。
無実の罪なんて大げさだと、大人は言うかもしれない。
だけど、それが1番信じてほしい人に疑われたら・・・、
しかも母親だったら、誰だって悲しい。
悲しくて悲しくて、怒ってしまうにちがいない。
だけど、この話は、ちょっとユーモラスに描かれています。
作者のあさのあつこさんが、その空想の翼を思いっきり広げて、なんだか不思議な世界を繰り広げてくれてせいでしょうか・・・。
さくら子がいつもの駅でふつうの電車を待っていると、やってきたのは1両だけのオンボロ電車でした。
茶色い色がはげて、あちこちさびている。ギギーって奥歯がいたくなるような音をさせて、とまった。
ひらいたドアのところから、しゃしょうさんの顔がのぞく。目がぎょろぎょろしていて、やせている。
乗れるのは、家出した子供だけだという。
さくら子が電車に乗ると、かけ込み乗車でとなりのクラスのけいすけくんも乗ってきます。
さて、このいえでででんしゃに乗ってくるのは、人間だけではありません。
つぎのおおえだえきで乗ってきたのは、鷹の仲間のチョウゲンボウの子供だった。
チョウゲンボウって、知っていますか?
ハヤブサ目ハヤブサ科。ハト大でスマート。長い尾がある。
停飛(ホバリング)をし、急降下してネズミ、小鳥、虫などを捕らえる。
調べたら、こう書いてありました。。
ホバリングというのは、ヘリコプターのように空中で羽ばたきながら同じ所に止まっていることです。
このチョウゲンボウの子供は、いっぱい練習してやっとホバリングが出来るようになったのに、
「・・・とうちゃんたら、そんなのできてあたりまえだって・・・にいちゃんもねえちゃんもかんたんにできたんだぞって・・・」
言われて、家出をしたのでした。
なんて人間ぽい理由なんでしょうか。
つぎにいえでででんしゃに乗ってきたのは、リュウグウノツカイの子供でした。
リュウグウノツカイは深海魚で、水族館にもいないめずらしい魚です。
私も実物を見たことがありません。
リュウグウノツカイが家出をしてきた理由は、
「ママがうるさいの。ぼんやりしてちゃいけませんて、しょっちゅう、ぶつぶついうの」
「あたし、ぼんやり考えるのがすきなんだもの。木とか空とか雲とかって、どんなんだろうとかさ、もしも、わたしがトビウオさんと恋をしたら、どんなだろうかとかさ、いろいろ考えるわけ」
だそうです。
リュウグウノツカイの理由も、すごく人間ぽいですね。
チョウゲンボウの家出の理由も、リュウグウノツカイの家出の理由も、なんだかわかる気がします。
私も人と比べられるのは嫌だし、努力したことは認めてほしい。
それに何より、ぼんやりととりとめもないことを想像するのも大好きなんだな。
私はね。
さて、この辺で、いえでででんしゃは、どこに向かって走っているのだろう?
っていう疑問がわいてきます。
しかも、最初痩せていた車掌さんがどんどん太っていき、だんさん威張ってきます。
まるで命令をするときの先生のように・・・。
やがて花びんをわったのが誰だったかがわかってきます。
ママがいた。杏里をだいて、プラットフォームのまんなかで、きょろきょろしている。
・・・あわててとびだしてきたのか、ママは、オーバーもジャンパーも着ていなかった。うすい緑色のセーターだけだった。杏里のくつしたもぬげかかっている。
花びんを片付けていた時に、石を見つけて、さくら子のせいではないとわかって、ママがあやまって、めでたしめでたし。
車掌さんがほんの少し笑って言います。
「・・・いえでででんしゃは、家出した子のそばぁをいつでも走ってまぁすからねぇ。いつでも、いつでぇも、ごじょうしゃくだぁさいぃ」
じつによく作られた面白いお話になっています。あす
作者は子供に寄りそって、子供の目線で考えて、チョウゲンボウやリュウグウノツカイなど子供の興味を引きそうな生き物を登場させて、子供の気持ちを代弁させています。
そして子供が自分で色いろ考えて、自分で解決していくというところが面白い所ですし、大人もはっとする所です。
1つだけ気になったところは、石が見つかったので、ママが誤解していたとなってさくら子に謝った所です。
もし、石が見つからなかったら? って、やっぱり考えてしまいます。
証拠がどうのこうのというのは、理詰めで解決する大人の世界のことです。
最初は疑ったとしても、やっぱり最後は自分の子供だから、証拠がなくても無実だと信じてほしかったような気がします。
でも、プラットフォームでさくら子を探している母親のようすから、心配しているようすがじゅうぶん伝わってきました。
大人もね、時どき、いろんな面倒くさいことを投げ出して逃げたくなったりもしますから、大人にも家出で電車(こっちは漢字で)やってこないでしょうかねぇ。
ああ、そうだ、旅に行こう!!
あ、日帰りでも、ドライブでもいいや。
いえでででんしゃ (新日本おはなしの本だな) [ あさのあつこ ]
著者・あさのあつこ
1954年岡山県生まれ。青山学院大学文学部卒業。
日本児童文学者協会会員。「季節風」同人。
「バッテリー」(教育画劇)で野間児童文芸賞。
「バッテリーⅡ」で日本児童文学者協会賞受賞。
「マイは10歳です」「どばぴょん」新日本出版社など多数。
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