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風のラヴソング[ダイヤモンド・ダスト]越水利江子【児童文学】感想・レビュー

きこえてくるのはラヴソング

さあ 泣かないで

さあ 立ちあがって

耳をすまして

 

いつでも

だれかが くちずさんでいるはず

あなたへの ラヴソング

 

おもいだして

あの日の ラヴソング

ほら

明日のあなたへの ラヴソング

 

風のラヴソングは作者の越水利江子さんが、自身の子供時代をふり返って、

あのころ、読みおわったあと、力になる物語に出会えていたらと・・・

そんな気持ちから、

今もたたかいつづけているひとりぼっちの幼い戦士たちのために書きつづった少女・小夜子の一生を通して描かれるさまざまな「愛」の物語です。

 

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越水利江子・作/中村悦子・絵/講談社・青い鳥文庫

お題「我が家の本棚」

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ダイヤモンド・ダスト

 

 ぼくの名前は、元気。いま、小学四年生。

 高校三年の兄貴が、太陽。それから、十三歳の姉さんが、遊子。

 

あの元気いっぱいの太陽の弟が、元気という名前で、その元気の視点からこの話はつづられています。

当時小学五年生だった太陽は、もう高校三年生なのです。

元気のお姉さん、つまり太陽の妹の遊子は・・・

 

遊子は、遊ぶ子という名前やのに、一度も、外で遊んだことがない。遊子は、生まれつき、耳がきこえない。

「目は見えてるようやけど、どのくらい見えてるのか・・・」と、お医者さんは自信なさそうにいった。

重い脳性マヒという病気で、しゃべれんし、うごくこともできない。いつも、寝かされたままのかっこうで、じっとしている。

 

ぼくの家は、白姫神社という縁結びの神様をまつっている。

 

これは一般の家庭でそういう神様を神棚にまつっているのではなく、どうやら、神主さんらしいのです。

そして、白姫神社のお祭りの時には、いつも遊子を2階にあげるかどうかで、家族内でもめるのだというのです。

 おばあちゃんは、お祭りにきてくれた人に気持ち良く帰ってもらうことが大切だといい、母さんは、

「それなら、遊子を見たら、気持ち悪いとでもいうんですか!」って怒るのです。しかも、

来月につくし学園に入ることになっているので、もう、このお祭りは見せてやれないかもしれないのです。

元気はどっちの言い分も、分かる気がしています。

 

そんな中、太陽がちょっと行ってくるって出かけていきます。元気は、兄が一人で夜店に行くんじゃないかと思って、後を追いかけていきます。

行った先は宇治川の土手で、彼女に呼び出されて、どうやらこっちももめているようなのです。

そして、その彼女というのが、小夜子なのです。

 

太陽の声に上を見上げると、空が見えた。

「バイオレットグレー・・・」

カノジョも、空を見てつぶやいた。川ぞいの空は、いつもの、あざやかな夕焼けの色はなくて、うすむらさきの雲のだんだらもようが、どこまでもひろがっていた。

 

描写がいいので、つい書いてしまいましたが、こんな情景の中で、小夜子が語ったのは衝撃的な言葉でした。

 

「うち、ないの・・・・」

 カノジョがいった。

 

ヤバい成り行きになってしまい、元気は出るに出られず、あわてて太陽よりも早く走って神社に帰ったのでした。

そこへ小夜子を連れて、太陽が帰ってきます。

太陽と小夜子は、2階の窓から出て大屋根にのぼっていきますが、元気には来るなというので仕方なく、2階の遊子寝かされている部屋にふらって入るのでした。

そこはふしぎな部屋で、四方が全部壁で、天井近くに高窓がひとつあるだけなのです。

 

「遊ちゃん・・・」

ぼくは声をかけてみた。

遊子は、高窓のあるほうを足にして、じっと寝ていた。声をかけても、目はあいているのに、表情はうごかさない。

そして、お母さんの唯一の願いは、

「遊ちゃん、一回でいいから、笑って・・・お母さんに、笑ってみせて・・・」

というものでした。

それで一度、笑わそうと思ってくすぐったら、

「遊子は心臓も悪いから、びっくりして止まったらどうすんの」

って、お母さんにすごく怒られたのでした。

 

やがて外で、パーン、パーンと、花火を打ち上げる音が聞こえてきます。

すると、遊子の瞳に、なにかが、チカッと光るのに気づくのでした。

 

「アアッ

花火やった。

小さな高窓のなかに、赤い光が、菊の形にパアッとひろがって、まわりの壁にのみこまれた。

すわったり立ったりしていては見えないのに、寝ころがって見上げると、ちょうど小窓のなかに花火があらわれる。それは、切り絵みたいに、くっきりとあざやかな赤色や青色やった。

 

元気は遊子の心臓のことも忘れて、遊子の肩をゆすったのです。

 

空一面に、紫陽花が、ねじ花が、ダイヤモンド・ダストが咲き乱れた。それが、光のしずくになって、消えるよりも早く、つぎつぎと新しい花火が打ち上げられる。

オレンジ色のUFOも、青い土星も、2つも3つもいっぺんに光った。

そのとき、やっと、太陽を呼びにきたことを思い出した。

 

「遊ちゃんが笑てるんや。花火の終わらんうちに、早よ、下りてきて!」

 

「ほんと、この子、笑ってるみたい・・・」

お母さんの声がした。

「ん、そうやな、笑てる・・・たしかに、笑てるな・・・よっぽど、うれしかったんやろか・・・?」

お父さんがいっている。

 

そうして、家族みんなで、小夜子も加わって、遊子のまわりに手をつないで寝転がって、花火を観るのでした。そして、

 

カノジョは太陽の目を見た。太陽はカノジョから目をそらさなかった。

 

のでした。

ラストの文章も、いいので、書いておきます。

 

あけはなした出窓の外で、どどーんと、最後の花火を打ち上げる音がした。

ぼくの目のまえに、金の光が、しずかにひかるのが見えた。

きらきらと、砂金をまいたようなダイヤモンド・ダストが、またたきながら、ぼくたちに降りそそぐのを、ぼくは、はっきり見たような気がした。

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f:id:sakurado:20211203070647p:plain小林正観さんが、

「ぼくの価値観が変わったのは、知恵おくれの娘が生まれてからです」

というようなことを、色いろな講演のDVDでおっしゃっていました。

 

半年位は、悲しくて仕方がなかったのだそうです。

けれど、この子が生まれたことによって、今までの他人と競ったり押しのけたりする生き方ではなく、他人を思いやる愛のある生き方が正しいのだと観念ではなく思うようになったと語っていました。

 

この子は明るさの塊で、すばらしい天使のような存在だとも。

もし、神様が現れて、薬を飲めばこの子を正常にすることができますと言われても、この子にはこのままでいて欲しいと。

奥様も、もし3人目の子供を宿して、それが障がいがある子供だと言われても、ためらいなく産むとおっしゃっています。

とても考えさせられる言葉でした。

 

私もひと時、知的障碍者のみなさんとのかかわり合いがありましたが、確かにそれは頷けるものがあります。

このお話に出てくる家族も、愛のあるすばらしい家族なのだというのがよくわかります。

太陽があのように自由奔放でありながら、愛のある大きな人間だというのも、この家族あってのものなのかと納得しました。

小夜子はとても良い恋人を選ばれたのだと思いました。

 

 

※ 風のラヴソングは、どれも短いお話になっていますが、どれも内容が深くて濃い作品なので、ぜひ深く味わっていただきたいので、何回かに分けて感想を書いてみたいと思います。

 

著者紹介:越水利江子さん

 高知県生まれ、京都育ち。

「風のラヴソング」(岩崎書店)で、日本児童文学者協会新人賞、

文化庁芸術選奨文部大臣新人賞受賞。

「あした、出会った少年」(ポプラ社)で、日本児童文芸家協会賞受賞。

他に「花天新選組君よいつの日か会おう」(大日本図書)、

「竜神七子の冒険」(小峰書店)、「ぼく、イルカのラッキー」「月夜のねこいち」(共に毎日新聞社)、「忍剣花百姫伝」シリーズ、「こまじょちゃん」シリーズ(共にポプラ社)、「霊少女花」シリーズ(岩崎書店)、「百怪寺・夜店」シリーズ(あかね書房)など、ヤングアダルト、エンターティンメント、幼年絵本まで作品多数。

 


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