桜さくら堂

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だれも知らない小さな国/ファンタジー・児童文学/感想・レビュー・あらすじなど

子供の頃、まんがの本の片隅にこんなことが書いてありました。

だれも通らない所に砂で階段を作っておくと、小人が歩くので砂に小さな足あとがつくでしょう・・・

ワタクシは母の実家のいなかへ行ったとき、裏庭の隅に小さな砂の階段を作ったのでした。

この本を読んでいたら、そのことがふっと思い出されてなつかしくなりました。

 

さて、この本『だれも知らない国』では、

ぼくがその小さな人に出会った日のことを、こんなふうに書いてあります。

 

 小学校三年生のときだった。

 もちの木をさがしにいったぼくは、こんもりした小山や杉林にかこまれた、三角形の平地を見つけた。

小さないずみががわき、まっかなつばきの花のさく、どこかふしぎな感じのする場所だった。

――そして、とうとうぼくは見た。小川が流れていく赤いくつの中で、虫のようなものが動いているのを。

 小指ほどしかない小さな人たちが、手をふっているのを!

 

だれも知らない国/佐藤さとる 作/講談社

お題「我が家の本棚」

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 ★あらすじなど

 

これは物語の主人公であるぼくが、こぼしさま(コロボックル)といわれる小人と、赤い靴の持ち主の少女との出会いを、ぼくが大人になって回想しているという感じで淡々とつづられています。

あくまでもぼくは冷静なファンタジーのこちら側の現実的な人間として書かれているため、この不思議な世界にリアリティーを与えて、ひょっとしたらこんなこともあるかもしれないと思わせることに成功しています。読者からすれば、実に楽しいことです。

 

やがてぼくは中学生になり、勉強や目新しいことが次つぎと起こって現実の生活が忙しくなって、小山や小さな人たちのことから離れていくようになります。

現実世界でいろいろ辛いことがあった戦後に、ぼくは小山のことを思うようになるのです。そしてそこから、再び小さな人たちとの物語がゆるりと動き始めます。

 

岩かべにかかえられた美しいいずみは、そっくりそのままあった。ぼくの運びあげた石が、列をくずしてころがっていた。

ふきの葉も、いずみのまわりや、がけの下の木かげには、まだまだ残っていた。見あげると、つばきの木も、同じすがたをしていた。

 

幼い頃に過ごした町や小山は戦火も受けずにそのままあり、ぼくは子供の頃の自分に出会ったようで胸が高鳴ったのです。

子供のころの風景がそのままあるというのは、うれしいことですね。

ぼくはこの土地を自分のものにしたいと思うようになります。

この土地の持ち主を探して、いつか売ってくれるように頼みます。まだ学生でありお金も無一文だったのですが、ぼくの熱意に負けて、地主はいつかお金が出来た時に売ってやってもいいという約束を取り付けることができました。

地主の峯さんも人情味があって、読んでいると心が温かくなってきます。

 

ぼくが小山の三角形の土地に行く道を切り開いたり、苗を植えたりしていると、満を持してというか、ついにこぼしさまが現れるのです。

やっと現れたかという感じで、読者もすでにファンタジーにどっぷりとつかったところで、こぼしさまの重大事件が発生します。

こぼしさまが住んでいる三角形の平地、そしてぼくが手に入れようとしていた場所が、自動車専用の有料道路の予定地になってしまうのです。

ぼくとこぼしさまと赤い靴の女性とで、なんとかしようと頑張ります。

 

★感想など

 

小さい人(こぼしさま)は、物語の初めには全く出てきません。

ぼくが子供の頃にどんな遊びをしていたのかとか、迷い込んでひょっこりと訪れた奇妙な三角の平地と、その自然の素晴らしさなどが、クールに書かれているだけです。そこは昔の田舎の日常の風景があって、読者はただぼくといっしょに遊んでいるだけなのです。

こぼしさまは本当にゆっくりと、ここぞという所で現れて消えていくのです。そのためぼくは、あれは幻だったのかもしれないとさえ思ってしまいます。

これが第一の伏線となって、やがて成長してから再び訪れた時にこぼしさまが現れても、読者はそれが現実だと信じ込ませることに成功しています。

 

また登場する人物も、地主の峯さんといい、じつに素朴で温かく描かれています。

この辺りのやりとりに、ただの損得でない人情味があってほっとしますね。

ぼくが成長してから再開する女性とも、実は子供の頃に出会っていたというのも、こぼしさまがわざと姿を見せたというのも、実によく出来た作りになっています。

 

夢を持つことが出来る子供は、じつに幸せな子供だと思います。

こぼしさまはもしかしたらいるかもしれないと思うことは、人生に夢を与えてくれて、豊かな想像力を育んでくれることでしょう。

ちなみにワタクシが子供の頃に作った砂の階段が、その後どうなったかについては、ご想像におまかせいたします。

 

作者・佐藤さとるさん

1928年、神奈川県生まれ。『だれも知らない小さな国』で毎日出版文化賞・国際アンデルセン賞国内賞などを、『おばあちゃんのひこうき』で児童福祉文化賞・野間児童文芸賞を受賞。日本のファンタジー作家の大人者として知られる。

 

 


コロボックル物語1 だれも知らない小さな国 (講談社文庫) [ 佐藤 さとる ]

 

 


コロボックル物語(1) だれも知らない小さな国 (児童文学創作シリーズ) [ 佐藤 さとる ]

 

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みなさん、こんにちは💛

いつもご訪問をありがとうございます。

 

本についてまとめるのは、エネルギーがいる作業ですね。

何度も本を読みなおして確認したり、考えたり・・・

でも、読み返してみるとまた新たな発見があったりして、

それもまた面白いんですが。

 

 みなさん、台風被害にお気をつけくださいね。

 

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