真夏に真冬のお話なんてどうかなぁ・・・
とも思ったのですが、いいお話だし、
心の「かき氷」のような効果があって、涼しくなるかもしれませんよ。
涼しいというよりも、涼やか・・・でしょうか。
急行「北極号」・・・降りしきる雪のなかの蒸気機関車です。黒い鉄の塊は、なんて冷たそうなのでしょう。
扉を開けると・・・
サンタを待つ少年のもとにあらわれたのは、白い蒸気につつまれた謎めいた汽車。
その名は―急行「北極号」。
語り手は、大人になったぼくです。
友だちは「サンタなんて、どこにもいないんだよ」と言っていたけれど、ぼくはサンタの鈴の音が鳴り響くのを耳を澄ませて待っていたのです。
夜が更けてやって来たのは、サンタではなく、蒸気機関車でした。
蒸気機関車のなかは子どもがいっぱいで、車掌はぼくを乗せると、やせたオオカミがいる暗い森や高い山々を越えていき、やがて北極点に着きました。
この辺りを読んでいると、ふと宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を思い出ました。
北極点ではたくさんの小人たちが子供たちに渡すプレゼントを作っているのです。
「さて、きみはクリスマスのプレゼントに何がほしいのかな?」
サンタがぼくにたずねました。
ぼくがクリスマスでいちばんほしいのものは、サンタの大きな袋のなかにははいっていない。
ぼくがなによりもなによりもほしいのは、サンタのそりについた銀の鈴なのだ。
ぼくはトナカイの鈴をもらって、「北極号」にもどりましたが、ポケットのそこには穴があいていて、銀の鈴はなくなっていました。
夢だったのでしょうか。サンタにもらった鈴も、北極点へ行ったことも。
でも、翌朝目覚めると、ツリーの後ろに小さな箱があって、その中に銀の鈴がはいっていたのでした。しかも、
「これをそりの座席でみつけたよ。ポケットの穴は縫ってたほうがいいね」(サ)という手紙まで入っていたのです。
ぼくが鈴をふってみると、素敵な音がして、妹にも聞こえました。だけど、お父さんやお母さんには鈴の音が聞こず、鈴が壊れているというのでした。
この銀の鈴の音は、象徴なのです。
それは純真な子供だけに聞こえる音かというと、そうでもなく、物語の最後の最後のページに作者はこんな言葉を書いています。
昔、ぼくのともだちはだいたいみんな、その鈴の音を聞くことができた。
でも年月が流れて、彼らの耳にはもう沈黙しか聞こえない。サラだってそうだ。
彼女はあるクリスマスの朝に、その鈴を振ってみたのだが、もうあの美しい音は響かなかった。
ぼくはすっかりおとなになってしまったけれど、鈴の音はまだ耳に響く。心から信じていれば、その音はちゃんと聞こえるんだよ。
と、作者のC・V・オールズバーグは、もうほとんど答えを言っていますね。
たいへんわかりやすい絵本です。
「科学的に証明したら信じる」と、大人は言います。けれど、そういうものは「信じる」とはいわないのです。それは単なる科学的な常識です。
「信じる」とは、目に見えないし、証明できないけれど、あると思うことなのです。
こうだったら信じるではなくて、信じるが先にあるのです。
人を信じる、神を信じる、友情を信じる・・・・
「走れメロス」という物語があるけれど、あれもそうです。殺されるために、彼は友のもとへ戻ってくると信じたのです。
無条件で、絶対的な信頼・・・これを信じるというのです。
未来を信じる。夢が実現すると信じる。このサンタというわかりやすい物語を通して、語っているのはそういうことなんだなと思いました。
この絵本〖急行「北極号」〗は、1986年、コルデコット賞を受賞しました。
この本を訳したのは、村上春樹氏です。彼はオールズバーグの本をはじめとして、たくさんの絵本を訳しています。
「おおきな木」シェル・シルヴァスタインなど、象徴的な話の絵本が多いでしょうか。
絵と文:クリス・ヴァン・オールズバーグ
1949年、アメリカ・ミシガン州生まれ。ミシガン大学、ロードアイランドデザイン学校で彫刻を学ぶ。
彫刻と絵画は、ホイットニー美術館や近代美術館に展示されている。
絵本作品に『ジュマンジ』ほるぷ出版、『西風号の遭難』河出書房新社など多数。
みなさん、こんにちは💛
いつもご訪問をありがとうございます。
(なんや、クリスマスとは気が早すぎるやんけ⇐いつものツッコミです)
「暑くて頭がおかしなってもうた。」
という言い訳のあれやこれや・・・
でも、ついこの間年が明けたと思ったら、もう8月。
12月まであと4か月しかありません・・・なので、あっという間ですよ。
(なんや、今度は開き直りやんけ⇐これもツッコミですね)
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