それは、こげ茶色のどっしりとしたつくえでした。
まんなかにひとつ、左右に四つずつ引き出しがついていて、すこしはなれたところから見ると、どこかの国のりっぱな門のようにも見えました。
これはおじいちゃんの机です。
賢明なあなたのお察しの通り、このどっしりとした机が、ファンタジーの世界への入り口になります。
でも、そこへ行くのには、ちょっとばかり大変なのです。
どのように大変かというと・・・
つくえの下のとおい国/石井睦美 作・にしざきひろみ 絵/講談社
このお話はあなたを一気にファンタジーの世界に連れていってはくれません。
ただ入り口だけがそこにあって、そこからファンタジーの世界にあなたが自分で行けるようになるのを手伝ってくれる本です。
だから最近のファンタジーのように、ただ読んでいればエスカレーターのように即不思議な世界に行けるのではないのです。
だから、このお話を読んで、ファンタジーの世界に行ける人もいれば、もしかしたら行けない人もいるかもしれないということなのです。
ただずいぶんやさしくそこへ辿り着く方法を、手取り足取りアドバイスをしてくれます。
だから、たぶんほとんどの子供はそこへ、ファンタジーの世界へ辿り着けるでしょう。
子供にとっては、その垣根はほんのちょっとなのですから。
そうして、一度辿り着けた人は、もしかしたら大人になってからも、少数ですが、またそこへ行けるかもしれません。
マナとリオは姉妹で、おじいちゃんの家のおじいちゃんの書斎にあるどっしりとした古い机の下にもぐって遊ぶのが好きでした。
おじいちゃんの机はどっしりとして立派なので、門のように思えるからです。
マナはリオに、壁の向こうはとおい国だと言います。
「とおい国ってどこ? 外国? ハワイ?」
「ハワイじゃないよ」
「じぁあ、どこ?」
と、またリオが聞きました。
「トホウ・モナイ国」
と、答えたとき、マナは、じぶんで言ったことにびっくりしました。
なぜって、そのことばが口から出るまで、そんな国のことなんて考えてもいなかったからです。
そして、この机はおねだりして、マナの1年生になるお祝いにおじいちゃんから譲り受けることになるのでした。
マナの家のマナの部屋におじいちゃんの机が来てから、不思議なことが起こり始めます。
まず、トホウ・モナイ国から、モモジョというピンクのもこもこした毛糸のかたまりのようなものがやってきます。
そのモモジョに導かれて、マナとリオはトホウ・モナイ国へと行くことになるのですが、真っ白い靄のようなものがかかっていて何も見えません。
ようやく巨大な靴の家が現れてきたのは、物語が半分近くになってからです。
しかも、そこで小さな家族とお茶を飲んだり楽しく過ごすのですが、それでもここはマナとリオの本当の「トホウ・モナイ国」ではないと言います。
2人が自分たちのトホウ・モナイ国に辿り着くのは、第7章になってからです。
ここまで来て、マナとリオはトホウ・モナイ国とおじいちゃんの机との絆を知ることになります。
なぜトホウ・モナイ国に来れたのか、
トホウ・モナイ国がどうして存在しているかなどの秘密が解き明かされるのです。
アルールひめがこう言ったのです。
「なにかを強く深く思うときは、目を閉じるものよ。
さあ、目を閉じて、あなたたちのトホウ・モナイ国に思いをはせて」
マナとリオが最初に辿り着いたトホウ・モナイ国は、じつは2人のお母さんのトホウ・モナイ国でした。
そこでマナとリオはお母さんのトホウ・モナイ国から旅立って、自分たちのトホウ・モナイ国を探しました。
この本「つくえの下のとおい国」は、マナとリオのトホウ・モナイ国でした。
だから、あなたもあなただけのトホウ・モナイ国を探す旅に出なければなりませんが、
もしかしたら、もうすでにあなたは、あなただけのトホウ・モナイ国に辿り着いているかもしれませね。
作者・石井睦美さん
神奈川県生まれ。『五月のはじめ、日曜日の朝』(岩崎書店)で毎日新聞小さな童話大賞と新美南吉児童文学賞、駒井れん名義の『パスカルの恋』(朝日新聞社)で朝日新人文学賞、『皿と紙ひこうき』(講談社)で日本児童文学者協会賞を受賞、翻訳を手がけた絵本『ジャックの新しいヨット』(BL出版)でも産経児童出版文化賞大賞を受賞している。
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