そらのてっぺんなんか冷たくて冷たくてまるでカチカチの灼きをかけた鋼です。
そして星がいっぱいです。けれども東の空はもう優しい桔梗の花びらのようにあやしい底光りをはじめました。
宮澤賢治童話大全/講談社/Super文庫
これは「いちょうの実」の冒頭部分ですが、とても美しい情景描写ですね。
人魚姫の海を矢車草の青と表現したアンデルセンにも近い感性です。
晩秋の明け方です。
これからいちょうの実が旅立っていこうとしています。
いちょうの実たち1粒1粒が、擬人化されて旅立つまでの情景がやさしく描かれています。実は千人もいるのですから、それはもう賑やかです。
「僕なんか落ちる途中で眼がまわらないだろうか」
一つの実がいいました。
「ね、あたしどんなとこへ行くのかしら」
一人のいちょうの女の子が空を見あげて呟くように言いました。
「あたしだってわからないわ。どこへも行きたくないわね」
も一人もいいました。
「そら、もう明るくなったぞ。嬉しいなあ。僕はきっと黄金色のお星さまになるんだよ」
いちょうの実たちは悲喜こもごもに、それぞれの不安や希望や別れの悲しみを胸に旅立っていきます。
見送るのはお母さんでもあり、卒業していく子供を見送る先生のようでもありますね。
作者である宮沢賢治が、それを温かく見守っているのが伝わってきます。
お日様は燃える宝石のように東の空にかかり、あらんかぎりのかがやきを悲しむ母親の木と旅に出た子供らに投げかけておやりになりました。
「いちょうの実」は、「宮沢賢治童話大全」の冒頭に載っている掌編です。
宮澤賢治の繊細で美しい心情が伝わってくるいいお話ですね。
「宮沢賢治童話大全」は2~30年くらい前に書店で見かけて購入した本で、なかはもうすっかり黄ばんでいますが、この本も私の書棚の一角に鎮座しています。
気持ちがザワザワした時などに読むと、すっと落ち着いてくるから不思議です。
宮澤賢治の童話作品が、全部で65話も載っていますので、あまり知られていない作品も載っています。
時どき、ご紹介したいと思います。
作者・宮沢賢治氏
1896年岩手県花巻市に生まれる。盛岡高等農林学校(現在の岩手大学農学部)に首席入学。
1924年『春と修羅』を自費出版。童話集『注文の多い料理店』出版。
1931年手帳に「雨ニモマケズ」を書く。
1933年『国訳妙法蓮華経』1千部の刊行頒布を遺言して死去。
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