人間は誰でも一度はどん底を通るものだという。
どん底の苦しみをしばらくの間、じっと耐えていれば、
必ず運命は良くなっていきます。
もうずいぶん前のことですが、その頃、私はどん底でした。
相手もあることですから詳しいことは語れませんが、それまで10年以上も悩み苦しんでいて、自分としては打つ手は全て打ったし、出来ることは全部やったのですが、どうしても上手くいきませんでした。
それでもなんとかしようと、もがいていました。
その頃には毎日ひどい頭痛に悩まされ、内科の病院に行って痛み止めの点滴を打ってもらいました。
点滴が終わると、医師が「痛みは取れましたか?」と聞きました。
ところが痛みはなくなりません。
すると医師は首を傾げて、
「この薬は一番強い痛み止めなんだ。これが効かないっていうことは、もしかしたら身体じゃないかもしれない」
と、こうつぶやきました。
その時、私は初めて自分の限界というものを知ったのでした。
それから程なくして、私を苦しめていた原因が、あっという間に消滅しました。
それは私が何かしたからではありませんでした。
今から思うと、あれが人生でのどん底でした。
やっぱり頭痛は精神的なものから来ていたのか、苦しみの原因が無くなると頭痛もなくなりました。
その代わり頭痛がなくなると、今度は歯が痛くなってきました。
歯のレントゲンを見た歯医者さんが、
「これは酷いですね。ずいぶん前から痛んだでしょう。我慢していたのですか?」
と聞いてきました。
ところが私は、頭痛が治るまで歯の痛みは感じていなかったのです。頭痛がなくなってから、はじめて歯が痛かったことがわかったのです。
つまり、どういうことかというと、頭痛の痛みが大きかったので歯の痛みがそれに隠れて感じられなかったのでした。そして、歯は治療して痛みもなくなりました。
心の痛みというのは、身体の痛みよりも大きいものなのでしょうか・・・。
それほど苦しんだのですが、そこからどうして出られたのかはわかりません。
ただ1つ言えることは、やはりトンネルはいつか出口があるし、どん底からもいつかは出られるものです。
こういう時は大騒ぎをしてもがけばもがくほど、泥まみれになってしまうような気がします。
今置かれた環境や立場からどうしても抜け出せないのならば、それはたぶん神様が自分に必要があってその環境に置いてくれたものかもしれません。
いやいやながらでもいいし、こんなこと必要ないなと思ってもいいので、その環境の中に腰をすえて、一生懸命誠意をつくして、仕事なら仕事、勉強なら勉強、家事なら家事をやっていれば、ある日、
「よし、この修行は終わった!」
と、パッと新しい環境に出してくれるのではないのでしょうか。
私の体験を通して、そんなふうに感じました。