桜さくら堂

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長くつ下のピッピ/リンドグレーン作/感想・レビュー・あらすじ/児童文学・童話

 スウェーデンの、小さい、小さい町の町はずれに、草ぼうぼうの古い庭がありました。

その庭には、一けんの古い家があって、この家に、ピッピ・ナガクツシタという女の子がすんでいました。

この子は年は九つで、たったひとりでくらしていました。

 

だけど、心配はいりません。

なぜならピッピは、世界一つよい女の子だからです。

それに、ほんとのところ、それもぐあいのいいことでした。なぜなら、

ピッピがあそんでいるさいちゅうに、「もう寝るんですよ」なんていう人は、だれもいないのです。

 

長くつ下のピッピ/世界一つよい女の子/リンドグレーン 作・大塚勇三 訳/株式会社岩波書店

 

ピッピのお母さんは、ピッピが赤ちゃんだった頃に亡くなってしまいました。

ピッピは船長のお父さんといっしょに航海をしてきましたが、そのお父さんも嵐のときに海の中に吹き飛ばされてしまいました。

そのためピッピは船をおりて、かつてお父さんが買っておいた古い家に一人で住むことになりました。

 

でも、実際はニルソン氏という名前の猿と、買ったばかりの馬の家族がいました。

それとお父さんが残してくれたたくさんの金貨もあったから、生活は困りませんでした。

それになんといっても、ピッピはすごい力持ちだったのです。

 

「もちあげよう」とおもえば、馬を一頭、まるごともちあげられるくらいでした。

 

ピッピは自由奔放に育てられたこともあって、陸の上の生活にはなじめずにはみ出してしまいます。

赤毛でそばかすがあって、ジャガイモのような鼻に大きな口をしています。

だけどピッピは、赤毛なんかは気にしません。そばかすだって美しいから、もっと作りたいといいます。

 

 それはピッピのお手製した。

だいたいピッピは、青い服をくるつもりでしたが、青いきれ地がたりませんでした。そこで、小さな赤いれを、どこにもここにも、いっぱいぬいつけたのでした。

すらっとした、長い両足には、長くつ下をいていましたが、かたっぽのくつ下は茶色で、もうかたっぽは黒でした。

 

ここが長くつ下のいわれでしょうか。でもピッピが学校に行った時に、自分のフルネームを、

「わたしの名は、ピッピロッタ・タベルシナジナ・カーテンアケタ・ヤマノハッカ・エフライムノムスメ・ナガクツシタ」と言っています。

これは作者が楽しんで書いていますね。

 

ピッピのお隣さんには、同じ年頃のトミーとアンニカという気だてが良い子供がいて、ピッピと友だちになります。

なぜなら普段の生活に飽き飽きしていて、友だちが欲しいと常日頃から思っていたからです。

ピッピは奇想天外なことばかりしますが、2人はそれが面白くてたまりません。

 

ピッピを施設に入れようとやってきたお巡りさんと鬼ごっこをしたり、これはもちろんピッピが勝ちました。

それから学校には馬で行きます。もちろん学校の枠にはおさまりきりません。

サーカスに行けは、サーカスの人よりも活躍してしまうし、どろぼうに入られても平気だし、気取ったお茶の会でも自由気ままにふるまいます。

いわゆるお行儀のよい子からは、最も遠い所にいるのがピッピなのです。

赤ちゃんの時から母親もなくて、ずうっと船乗りの生活をしてきたのだとしたら、こんなふうに育つのも分かるような気がします。

だけど根は善良でかわいい女の子なんですね。

 

普通だったら、こんなに失敗ばかり続けてしまうと、自己嫌悪におちいってしょんぼりしてしまうところなんですが、ピッピは上手くいかなくても全く気にしていません。

ピっピが強いのは力だけでなく、本当は『心が世界一つよい女の子』だというのが読んでいてわかってきます。

この強さがどこからくるのかというと、それは最初のところに書かれています。

 

ピッピは、おかあさんがいまは天の上にいて、天にあいたちいさな穴から、むすめのわたしをみおろしているのだ、と信じていました。

で、ピッピは、ときどきおかあさんのいる空のほうに手をふって、いいました。

「わたしのこと、しんぱいしないで! わたしは、ちゃんとやってるから!」

 

ピッピは、おとうさんが、いつかはきっと帰ってくる、と信じていました。おとうさんがおぼれ死んだなんて、かんがえもしませんでした。

きっとおとうさんは、黒人がわんさかいる、どこかの島にながれついて、黒人たちの王さまになり、頭に黄金の冠をかぶって、一日じゅう、ぶらついているんだわ、と信じていました。

 

ピッピはいなくなってしまった両親の愛情を、一ミリだって疑ってはいないのです。

だから、周りの人にいくら非難されても平気なのです。

どんなむちゃくちゃをやっても、お父さんとお母さんは自分のことを愛してくれていると信じているからです。

こうだったらいいなという常識から外れたことをピッピがやっても、どこか憎めずに親しみを感じてしまうのは、その根底に子供を信じる作者の思いがそっと隠れているからなのでしょう。

この物語は、リンドグレーンが、小さいむすめにしてやったお話がもとになってできたとのことでした。

 

作者:アストリッド・リンドグレーン(1907~2002)

スウェーデンのスモーランド地方に生まれる。

『長くつ下のピッピ』で子供たちの圧倒的な人気を得る。その後、25年間、作家活動をしながら、児童書の編集者としても活躍する。

「やかまし村」シリーズや「名探偵カッレくん」シリーズ、空想ゆたかなファンタジーなど、世界中の子供たちから愛される多くの作品がある。

1958年に国際アンデルセン賞を受賞。

 


【新品】長くつ下のピッピ アストリッド・リンドグレーン/作 大塚勇三/訳

 

 

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