トムは誰かに飼ってもらいたいと思っていました。
そこで「ぼくはきっと役に立ちますよ」とアピールして、
飼ってくれる人をさがしましたが、なかなか見つかりませんでした。
がっかりしたトムをみて、タクシーの運転手をしているランスさんという人が、
飼ってくれることになりました。このときランスさんはトムに、こう言いました。
「トム、わしの家に住めばいい。
でもネコにたすけてもらうことは、きっとないと思うがね」
ところがランスさんは、階段から落ちて足を骨折してしまったのです。
歩けるようになるまで2か月もかかるため、家賃も払えず生活にも困ることになってしまいました。
そこでトムが、タクシーの運転の仕事を始めたのです。
それは・・・
ネコのタクシー/南部和也 さく・さとうあや え/福音館書店
表紙の茶トラのかわいい猫が、この作品「ネコのタクシー」の運転手のトムです。
親しみのある猫の顔にやられて本を手に取りました。本の中には猫がたくさん出てきますが、みんなとても人のいい猫なんですね。
人のいいネコって、おかしな表現ですが。
とにかく、ネコ好きにはたまらないお話になっています。
ネコのタクシーは、もちろん人間が使っている車ではありません。
洗車用のブリキのバケツと壊れた芝刈り機のタイヤを使って、猫サイズのタクシーをランスさんとビルという人が作ってくれます。
ハンドルや座席はちゃんとありますが、エンジンがついていません。その代わりに、トムが足を使って走るというものです。
面白いですね。これだったらおもちゃみたいなものですから、おまわりさんもうるさくないでしょう。
最初はランスさんは、トムがこれで稼げるなんて思ってもいませんでした。
トムがタクシーで街に出かけると、いろいろな猫がトムのタクシーに乗ってきます。
白と黒のブチの若い猫が溝に落ちている1ポンド硬貨を拾ってきて、こんなアドバイスをするのです。
「お金がほしいんだったら、ちゃんとタクシーに、一ポンドって書いておかなくちゃだめだぜ。
そうすればみんな用意するだろうよ。ネコで、お金をもっているやつはいないけど、お金のおちている場所は、みんな知っているもんだぜ」
なるほど。そういう手がありましたね。
この作品は、実に理路整然としたファンタジーになっています。
なぜだかわからないけど、猫が大きくなって人間のタクシーを運転できちゃいました、というような空想の飛躍がありません。
そのため、左脳で思考を一歩一歩構築するのが好きな人も、わりとすんなりと楽しめるお話になっています。
トムのタクシーは交通事故にあった子猫や、まいごのおばあさん猫や、どろぼうなど、いろいろな出会いをします。
ハラハラ・ドキドキのおもちゃのようなネコのタクシーですが、やがて警察署長にも認められる本物のタクシー・ドライバーになりました。
「トム、最初は、猫がひとをたすけることなんて、ないと思っていた。
だけど、おまえはわしをたすけてくれたばかりか、たくさんのひともたすけていたんだね」
ランスさんは、トムをだきあげるといいました。
これは「・・・の恩返し」のようにとてもわかりやすい内容のお話になっています。
でも作者は本当のところ、
トムは、お母さんのことばをもうひとつ、思い出しました。
「みんながおまえのまわりでニコニコしているときは、ひともネコも、しあわせなときなのよ」
ランスさんは、トムがタクシーの運転手(立派)ではなくても、そばにいるだけで幸せなのだと言いたかったのでしょうね。
作者・南部和也さん
1960年、東京に生まれる。獣医師、北里大学獣医学科卒業。その後、米国カルフォルニア州アーバインの「THE CAT HOSPITAL」で研修。
帰国後、東京で猫専門の病院「キャット ホスピタル」を開業する。
著書に『ひとのいいネコ』(小学館)、『ネコともっと楽しく暮らす本』(三笠書房)がある。
ネコのタクシー (福音館創作童話シリーズ) [ 南部和也 ]
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