「……昔、まだ店もなく、まねき猫さんたちもいなかったころは、あたくしがお菓子をつくり、それを売り歩いていたんでござんすよ」
今回のお話は戦国時代までさかのぼって、
紅子さんが『銭天堂』のお店をかまえるまでのお話になっています。
まっ黒い猫の墨丸と出会ったいきつから、『銭天堂』という屋号にした理由や、
金のまねき猫さんたちが現れたことも書いてありますよ。
ふしぎ駄菓子屋・銭天堂18・廣嶋玲子・作/偕成社
・妖刀糖
時は戦国時代、ひなびた村の鍛冶屋で働いている甚六は、都の刀鍛冶にあこがれていた。
そこへやってきた行商人の紅子さんは、うす茶色の水晶を思わせる六角形の『妖刀糖』というお菓子を差し出します。
食べれば、かならず妖刀とよばれるほどの名刀をきたえられるようになるという。
お菓子を食べた甚六は、刀鍛冶としてみるみる名をあげていったのだが・・・
・舌鼓
江戸時代、とある大名の若君千丸の教育係をつとめている左衛門は、千丸のわがままに手を焼いていた。
食事では特にひどく、あれが食べたい、これが食べたいとわめき散らすが、出された食事をちゃんと食べたことがなかった。
左衛門が千丸が欲しがっていたカステラを探し歩いていると、紅子さんに声をかけられる。
紅子さんは『舌鼓』という小さな鼓を出して、この鼓の音を聞いている間はなんでもとびきりおいしく感じられるようになると言います。
さっそく千丸で試してみると、嫌いな食べ物でも何でもガツガツと食べるようになるのだが・、舌鼓に気づいた千丸によって・・・・
・写し柿
米問屋の娘のおみつは16歳で、松之丞という歌舞伎役者にくびったけだった。
せっせと芝居を見に行き、松之丞の姿絵を集めてはうっとりとながめてばかりいた。
そこへやってきた紅子さんは、『写し柿』という干し柿を出します。
これを食べて紙に向き合えば、描きたいものがそっくりそのまま、写し描きすることができるという。
すると、手が勝手に動き出して、本物の松之丞そっくりの絵が出来あがるのだった。
そこでおみつは、松之丞にの脇に自分の姿を描きこもうとして・・・
・夢あめ
大正時代。12歳の妙子は貧しい村の娘でしたので、家族のために東京に出稼ぎに行きました。
お屋敷の人たちからはかわいがられましたが、妙子は家族が恋しくてたまりませんでした。
そんなある日、お使いで町まで買いものに行った時に、細い路地でゴザを敷いてお菓子を売っている紅子さんに出会います。
紅子さんは、食べた人が見たいと思う夢が見られる『夢あめ』というお菓子を売ってくれました。
さっそく夢あめを食べて眠ると、夢の中でなつかしい故郷の村で家族にかこまれている夢を見るのでした。
妙子は眠ることを楽しみにしているうちに、もっと夢を見続けたいと思って・・・
・育て手
俊郎は10歳のわんぱくな少年だった。今はホンチという、小さな黒い蜘蛛を戦わせる遊びに夢中になっていた。
ところが同い年の龍彦は強い蜘蛛を持っていて、勝負に負けて野球カードをまきあげられてしまった。
さらに次の勝負では、大事なでかい青いビー玉までかけている。
ぜったい負けられない俊郎は、強い蜘蛛を探すために虫の宝庫のあぶ山へ向かった。
すると道ばたで紅子さんに出会うのだった。紅子さんは、『育て手』というものを取り出して、
これで動物や植物をなでてやると、望み通りに育つのだという。
さっそく獲ってきたきた蜘蛛をなでてみると、ものすごく大きくて強い蜘蛛に育っていった。
そして、龍彦との勝負には勝ったのだが・・・・
・景気ケーキ
バブル期の話。小夜子が8歳のころ、世の中は好景気にわいて、友達はみんな自慢話ばかりしていた。
小夜子の父親は公務員なので友達の話についていけず、しょんぼりしていると、路地の奥で不思議な駄菓子屋を見つけるのだった。
そこで買ってきた『景気ケーキ』を食べると、不思議といいことばかりが起こってくる。別荘を安く買えるという話まで舞い込んでくる。
それを友達に自慢したら・・・
子供たちの「こんなことがあったらいいな」というのを、お菓子で解決してくれるのが『銭天堂』のお菓子と紅子さんです。
子供だけではなく、大人も時どき銭天堂に行けています。
ただし、銭天堂へ行けるのは幸運のお客様だけで、しかもほとんどが1回きりです。
いくら探しても、二度と銭天堂への道は開かれません。
ただまれには、育て手の俊郎のように、再び紅子さんに会うこともあるようです。
そして、お菓子を手に入れた人は、幸運になる人と不幸になる人とに分かれていきます。
お菓子には、但し書きがあって、それを守らないととんでもないことになってしまうのです。登場人物は、これをほとんど守りません。セオリー通りというか、その方が面白いですね。
読んでいると、自分だったら・・・と思わず考えてしまうことでしょう。
そもそも駄菓子屋さんのお菓子はスーパーで売っているお菓子と違って、いつもどこか不思議な魅力があるものです。
不思議駄菓子屋の銭天堂のお菓子は、それに魔法の力が加わってパワーアップしています。
子供だったら、誰でも行ってみたいと思わずにはいられないでしょう。
銭天堂は、理屈抜きで楽しめるお話ですね。
作者・廣嶋玲子さん
神奈川県生まれ。『水妖の森』(岩崎書店)でジュニア冒険小説大賞、『孤霊の檻』(小峰書店)で、うつのみやこども賞受賞。
作品に『送り人の娘』「おっちょこ魔女先生」シリーズ(KADOKAWA)、『盗角妖伝』(岩崎書店)、「怪奇漢方桃印」シリーズ(講談社)、「秘密に満ちた魔石館」シリーズ(PHP研究所)、「十年屋」シリーズ(静山社)、「鬼遊び」シリーズ(小峰書店)、「妖怪の子預かります」シリーズ(東京創元社)などがある。
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