やや大きめの絵本のような美しい季語辞典です。
思わず手に取ってページを開くと、これまたハッとするように美しい冬の雪山の写真がありました。そこには・・・
山眠るまばゆき鳥を放ちては 山田みづえ
という句があります。
その隣には、これもまさに降るような星空の写真と、
雪だるま星のおしゃべりぺちゃくちゃと 松本たかし
・・・。
なんて美しい情景と俳句なんでしょう!
しかし、著者の石田郷子さんは、
「広く小学生から中学生のみなさんに俳句に親しんでいただくつもりで書きました」
と書いています。子供向けの歳時記なのだそうです。
俳句・季語入門ー④冬・新年の季語辞典/石田郷子・著/山田みづえ・監修/国土社
季語は子供が見たり体験できるものが中心に選んでありますが、それだけではありません。逆に言えば、大人なら必ず知っているべきとも言えるかもしれませんね。
もしも子供に、
「お母さん(お父さん、もしくは〇〇さん)、風花ってどんな花?」
って聞かれたら、あなたなら何て応えますか?
「それはね、晴れているのに雪がちらつくことがあってね、山などで降っている雪が風で飛んでくるからなんだけど、それで風花っていうんだよ。」
これは模範解答です。
「う~~ん、俳句の季語は良く知らないんだよ」
これで、一応この場は逃げられますね。すると、
「わかった。じゃあ、霜月って?」ってきますね。
「旧暦の十一月のことだよ。だいたい今の12月ごろに当たるんだ。寒さが厳しくなって霜が降りるのでついた名前なんだ」
って応えられたら、大人としてパスですね。
これは俳句の季語というよりも、一般常識ですからね。
霜月や雲もかからぬ昼の富士 正岡子規
有名な例句も載っているので、句を観賞することもできます。
ただ、この本で特筆すべきことは、
「小中学生の作品を、例句の中にできるだけたくさん取り上げている」
ところです。
これは凄いことです。
瑞々しい子供達の感性にふれられることは、めったやたらにありません。
運良く子供の作品にふれる立場にある親は、贔屓目というものがありますからね。
学校の先生も、しかりです。
きっと、どの子の作品も、天才に思えてしまうかも・・・。
この本に載っている子供の作品はというと、たとえば、
【十二月】
雲になるティラノザウルス十二月 藤井亜衣(小1)
【節分】
節分の鬼のすみかは人のなか 小代裕貴(小4)
・・・凄くないですか。
十二月の句にはロマンを感じますね。
鬼のすみかは、人混みの中にまぎれているともとれますし、人の心の中ともとれて、凄く深いですね。意図したかどうかはともかく。
【北風】
北風にたちむかふ身をほそめけり 木下夕爾
ビルが言う北風なんかに負けないよ 中村理沙(小4)
北風が遊ぼ遊ぼとやってきた 福田さや香(小6)
1番上の大人の句と比べると、下の子供達の句はなんて元気いっぱいなのでしょうか。
特に福田さや香さんの句なんか、北風が友達ですからね。
これが段々大人に近づいてきますと、
【息白し】
寒い朝白いため息空にはく 姫野朱里(中3)
と、こうなります。
中3の冬ですから、受験があったり色々な悩みも増えてくるお年頃です。
こうして、句と年齢を合わせてみると面白いものですね。
大人もそうなのでしょうが、大人はもっと複雑な経歴が加わるので難しいですね。
風が新しいという
【正月】
お正月なわとびの風新しく 藤川佳子(小5)
その他にも、子供ながらによく観察しているなぁ、というような句や、子供ならではの視点や感性に感心したり・・・学ぶところがたくさんある例句ばかりです。
是非、『冬・新年の季語辞典』を、俳句好きな子供はもちろん、大人も一読されることをおススメいたします。
石田郷子(いしだきょうこ)さんのプロフィール
1958年東京生まれ。
1986年山田みずえ先生に師事。
1996年俳人協会新人賞受賞。
俳人として、俳句総合誌などに俳句作品やエッセイを発表。
著書に、句集『秋の顔』。著書に、石田いづみ句集『白コスモス』
俳人協会会員、日本児童文藝家協会会員、「木語」同人。
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