桜さくら堂

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あずかりやさん・犬山淳子/児童文学/感想レビュー・あらすじ等

あずかりやさんは、ただもう、あずかってと言われたものをあずかり、それがどんなものだろうと、一日百円。奇妙な商売ですね。

最初に期限を決めて前払いしてもらい、期限を過ぎても取りに来なかったら、あずかりものはいただきます。

そして売れるものは売り、使えるものは使い、処分すべきものは処分します。

 

質屋と決定的に違うのは、「お金をいただいてあずかる」ところでしょうか。

あずかる行為を純粋に仕事としています。

 

こんぺいとう商店街にある「さとう」というのれんがかかっている民家のようなお店が、このお話の舞台になります。

店主は桐島透という青年ですが、子供の頃に目を悪くして見えません。

ここはもとは和菓子屋でしたが、透が子供の頃に母親が去ってしまい店じまいとなってしまいました。サラリーマンだった父親も出ていって、ひとり残された透は17歳の時に「あずかりや」という商いを始めたのでした。

 

話しはとても静かなトーンで始まりますが、透があずかりやを始めたきっかけの事件が最初に書かれています。

それはかなり衝撃的な事件でした。

 

あずかりやさん/大山淳子/ポプラ社

 

夜中にいきなり男が土足で入ってきて、新聞紙で包んだものを透さんに渡して「あずかってほしい」と頼みます。

男は名前をサナダコータローと名乗り、お金を渡して「2週間経ったら取りにくる」と言って立ち去ります。

その3日後、「国会議員傷害事件で指名手配中の暴力団員真田幸太郎が逮捕されました。犯行に用いた銃は所持しておらず、現在捜索中・・・・」というニュースが流れました。

透さんはさっそく電話をかけました。けれど、それは警察ではなく区の福祉課の職員でした。

お役所の人に「1日百円でなんでもおあずかりします」と紙に書いてもらい、商売を始める手続きをしたのでした。

 

店は繁盛して、おひなさま、エンゲージリング、かつら、枕、日本酒、遺書など、老若男女、さまざまな人が預けに来ました。

人それぞれに、預かってほしいものってあるようです。

店主はそれが何であるか、どういう経緯で預けるのかなどいっさい尋ねません。また店主が目が見えないことも、預ける者にとっては都合が良かったのかもしれません。

家族に見られたくないものとか、一時的に離れていたいもの、捨てる決心がつかないものなど、その執行猶予期間として預ける人もいます。決心がついたなら、取りに来なければいいのですから、捨てたという罪悪感も薄れます。

 

でも、1日百円だと少額にも感じられるかもしれませんが、これが1か月となると約3,000円、1年で12,000円です。

これだけの代金を支払っても預けていった人や物の話がこの「あずかりやさん」ですから、みんなそれぞれに思い入れのある曰くつきのモノとその持ち主の話なのです。

しかも、語り手はのれん⇒自転車⇒ガラスケースと、話の内容によって次々とバトンタッチしていきます。

最初に、小学生の女の子が1枚の紙を1週間預けていきます。

話し手はのれんで、この子は預けたものをちゃんと1週間後に取りに来ます。

ただそれだけの話ですが、これが後半でこの子が大人に成長して再登場してくるのです。そして、また別のものを預けていきます。このときに最初に何を預けたのかがわかって、感慨深くなったりします。

そんなふうに1話1話はシンプルですが、複雑な人間関係と運命がそれぞれの話にからんでいることが、話を読み進めていくうちにだんだんわかってくるような仕組みになっています。

 

他に預けに来たのは、ミスター・クリスティという日本で1台しかない高級自転車を毎日預けに来た高校生がいました。

この自転車は入学祝いにお父さんに買ってもらったものです。両親は離婚して今は貧しい生活をしている母親のもとへは乗って帰ることができないので、ここへ預けて家へ帰っていました。

名前を名乗らずに、トランクを預けにきて引き取りに来ない人もいました。そのトランクの中身は、驚くようなもので・・・。

母猫が冷たい子猫を預けに来たこともありました。母猫は死んだと思って諦めたのか、それっきり姿を見せません。

店主は赤ン坊の猫を手にはさんだまま奥の部屋へいって、そのまま1週間店を休んで引きこもっていたのでした。

その時の子猫は・・・、もちろん後で登場します。

 

ある日のこと、親父が預けた遺書を知りたいという人がやってきました。すると・・・

 

「ここはあずかりやです。あなたはのんきな店に見えるでしょうが、わたしは真剣勝負で仕事をしています。

お客さまからあずかったものを勝手にどうこうできませんし、あずかったかどうかも、言えません」

 

店主はきっぱりと言いました。

店主の仕事への覚悟が垣間見えた瞬間でした。

 

全ての話を通して温かいものが流れていますが、それをしっかりと守っている強さがここにあるのでした。

ほのぼのとした話と思って癒されて読み進むうちに、人や自分への優しい気持ちを守っていくのには、やっぱり強い覚悟が必要なのだと思い知らされました。

また、どんなに安易そうに見える仕事にも、仕事というからには一本筋が通っていなければなりませんね。

 

 

作者 大山淳子さん

 

東京都出身。2006年、『三日月夜話』で城戸賞入選。2008年、『通夜女』で函館港イルミナシオン映画祭シナリオ大賞グランプリ。

2011年、『猫弁死体の身代金』でTBS・講談社第3回ドラマ原作大賞を受賞しデビュー。受賞作は『猫弁天才百瀬とやっかいな依頼人たち』と改題し刊行され、ドラマ化もされた。

著作に『猫弁と透明人間』『猫弁と指輪物語』『雪猫』(すべて講談社)がある。

 

 

 

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