1人1台のタブレット時代、
中2の心夏(ここな)は、学校の授業で子育てをすることになった。
生徒2人がペアになり、タブレットの中でAI(人工知能)の子供を育てるのだという。誰とペアになるのか、どの年齢の子を授かるかは、すべてコンピューター任せだとか。
あこがれの白石君をモデルにした純愛マンガを描いている心夏と、孤高の少年の温斗(あつと)のペアが授かったのは、”超毒舌小学生”のマミだった……。
タブレット・チルドレン/村上しいこ 作/さ・え・ら書房
クラスメートのほとんどがやる気がない。心夏と温斗が子育てを押し付けあっていると、AIのマミが悲痛な声で訴えてきます。
「二人がけんかすると、わたしのエネルギーがどんどん減って、死んじゃうんだよ」
さらに、
「お母さん、わたしのこと、愛してる」といきなり聞いてきます。
『もちろんだよ』と打ち込むと、
「じゃあ、証拠を見せて」と言ってきます。
心夏が困っていたら、マミに「いいよ、もう。お母さんには無理」と言われてしまいます。AIとはいえ難しいお年頃ですね。
AIマミと心夏との駆け引きが、なかなか面白いですね。
マミが算数の宿題を、心夏に聞いてくる。心夏は軽く受けるが、結局わからない。
「お母さん、もしかして、ばかなの」
こんな問題。
「ネックレス1個と指輪1個の値段が2.5倍なの。
ネックレス四個と指輪を三個買ったら、五千に百円でした。ネックレスと指輪の値段はそれぞれ一個いくらでしょうか」
昔、やったな。ついつい自分でも計算してしまったりして、だんだん物語に引き込まれてしまいますね。
クラスメートのなかには、AIの子供を刺激的な戦闘ゲームに参加させて死なせてしまうペアもしたりして、次第に担任の先生は保護者から糾弾されていきます。
心夏はAIの子供のマミが可愛くなってきていて、母親に気持ちを聞かれたとき……。
最初は興味が先行するマンガのような出だしなのですが、話の後半から現実的な親子の話になっていきます。
それまでは妹ばかり可愛がっていて不満に思っていた心夏ですが、AIを我が子のように育ててみると、親の気持ちが少しずつ理解できるようになり、ふと母親と同じような目線で妹を見ている自分にも気づいていきます。
母親も心夏を後回しのようにしていましたが、いざ心夏が困難な状況に陥った時には、心夏の思いを大切にしてくれているのでした。
また、担任を辞めさせるようなラインを無視してという心夏に、
「スルーはしない。何も言わないのは、賛成と同じ。心夏が好きな先生なら、お母さんも、何かしなくてはね」
というところに、強い母親の愛情が感じられました。
また白石くんとの恋の行方やプロのマンガ家の登場、クラスメートのいざこざ、ペアの男子の家庭の問題などなど、盛りだくさんで飽きない内容になっています。
AIのペットを飼うというゲームで命の問題が時どき問題になりますが、これは人間の子供を育てるという究極の命の問題がありますので、大人からは賛否両論の意見が出るだろうと思います。
実際にこの話の中でも、子供たちは同じように意見が分かれています。私などももし、こういうAIの子育ての疑似体験ができたとしたら、もうちょっと実際の子育てに役立てることが出来たかもしれない、と思う一方で、子育てというのは結局真剣勝負で全人格でやることなので、こんな小手先の体験くらいでどうとなるものでもないという思いもあります。
ただ、子供に寄りそって書かれているので、小中学生の女子は面白く読めるようなお話になっています。
例の白石君が主人公のマンガも載っていて、面白かったです。これはもっと読みたいような気もしました。
ありがとうございました。
作者・村上しいこ
三重県生まれ。『かめきちのおまかせ自由研究』で第37回日本児童文学者協会新人賞受賞。『うたうとは小さないのちひろいあげ』で第53回野間児童文芸賞受賞。
作品に『イーブン』『死にたい、ですか』(小学館)『みつばちと少年』(講談社)など多数。特定非営利活動法人《子どもの自立を支援する会・〈くれよん》顧問。
価格:1540円 |
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