夏休みの初めは、気持ちも浮き立ってみんなで秘密基地をつくったりします。
それが夏休みも中ごろを過ぎると、みんな家族と旅行へ行ったり田舎の祖父母のところだったり、あるいは塾の勉強とかで忙しくなって、そういう子供だけの遊びからだんだん足が遠のいていってしまいます。
そういう自分だって、まだ夏休みの宿題が残っています。
それでもやっぱり名残惜しくてさそってみるのですが、みんな用事があって「行けない」といいます。
しょんぼりとして、独りで行ってみたら……
独り来て秘密基地から揚羽蝶
ひとりきてひみつきちからあげはちょう
秘密基地の中から大きなアゲハ蝶が、ひらりと翅を広げて飛んできました。
「はっ」として、
その美しく優雅な姿に心を奪われて、思わず見とれてしまいました……
という句です。
揚羽蝶〖夏の季語・動物〗黒揚羽・鳳蝶・青筋揚羽
羽を広げると10センチを超える最も大型の蝶です。形も色も美しく、夏によく見かけるのは黄色地に黒の模様のキアゲハ、黒い地色のクロアゲハ、黒地に緑の光沢をもつカラスアゲハなど。日本に古来からいるのは、この揚羽の仲間です。
揚羽蝶は種類が多く、はっとするほど大型の蝶もいます。青筋揚羽は小形で色彩も美しく、手に取ってみたくなりますが、簡単にはつかまりません。
句は気持ちが落ち込んでいたときに、思いがけずステキなことがあって報われたような気持ちを、「揚羽蝶」の季語を信じて詠んでみました。
またその裏には美しい人やものに出会ったような憧憬の気持ち、淡くひそやかな初恋のような想いものせてみました。アゲハ蝶のように美しいものには、そういう気持ちを呼び起こす力がありますね。
気持ちが沈んだときには、美しい景色や花などを見たり、音楽を聴いたり、美術館にいったりするとずいぶん癒されるような気がします。
いつもありがとうございます。