これは古今東西、春夏秋冬のさまざまな俳句をぶぐる旅の本です。
選句もガイドも夏井いつきさんですが、旅のガイドさんが時どき歌うように、夏井いつきさんが詠んだ句もところどころに散りばめられています。
一つの句に短い随筆のような形で、句に対する想いを多角的に解釈されていますので、初心者もそうでない方も、あなたの解釈の助けになることでしょう。
夏井いつき、俳句を旅する/夏井いつき 著/悟空出版
俳句に対しる深い愛と造詣がある著者によるガイドは、もちろん夏井いつきさんの人生経験と知識を下敷きにされています。
どの句もすばらしい句で、どの解説も印象深くはあるのですが、なぜか著者の夏井いつきさん自身のことにふれている文章が心に残った感じがします。
街角の風を売るなり風車 三好達治
この句を読んで以来、風車をやってやるのが楽しくなった。手に手に一茎の春風を咲かせ、四人の孫が走り出す。
……と書いてあって、ああ、夏井いつきさんにはお孫さんがいるのか。と思いました。お孫さんに風車を買う楽しみは、孫のいない私にはちょっとわからないことです。
子供に買ってやる気持ちはちょっとわかるけれど、それと孫とは同じなのか、わずかに違うのか・・・とふと考えてしまうのです。
これは子供がいない人だったら、どうだろうとも考えました。
春の土とばさる蹄ひとつ分 夏井いつき
夏井いつきさんはSDGsでコンポストをしていて、ゴミの日に生ごみを出したことがないそうな。
この堆肥を畑にまいて、ラデッシュやスナップエンドウを育てるつもりとか・・・なんて豊かな生活なのでしょう。
かつて牛馬で耕した田畑に想いを馳せての句でしょうか。
北海道で畑を耕していたアオという馬が、トラックと引きかえに売られていった子供の頃の悲しみを書いた後藤竜二さんの物語を、私はふと思い出しました。
決心を束ねて薫る百合である 夏井いつき
「十年に一度ほど、これぞという決心を迫られる出来事に遭う」
と書いています。
そういうときの決心は、一刀両断に決められるものでもなく、さまざまな思いや状況がより合わさって一本に束ねられたときにやっと決心が出来るもので、そんな日の百合はことさら白く薫ると語っています。
そういうものなのか、どうなんだろうと自分の人生をふり返ってみたりしました。
こうして読んでいきますと、有名な句の解釈よりも、旅のガイドさんの歌の方(夏井いつきさんの句)がやはり面白いですね。
それは人の句の解釈はあくまでも夏井いつきさんが自身で体験したものではなく、夏井いつきさんの深い知識や体験をもとにして脳内で再生された知識だからかもしれません。
その感動は、なかなかそのまま伝わっては来ないようです。
しかしわれわれ読者はそれを参考にして、自分のそれぞれの知識や体験をもとに再度改めて再生してみて、あるいは同じ情景を見て体験して、初めて自身の感動につながるのではないでしょうか。
それはもちろん、夏井いつきさんが再生したものとは違うものとなるでしょう。
それはそれでいいのです。
それがあなたの芭蕉であり、子規であり、虚子なのですから。
さて、この本には、こんな句もありました。
めいげつやダイオウイカのめはおおきい たくみ3才
著者 夏井いつきさん
1957年、愛媛県生まれ。8年間の中学校国語教諭経験を経て俳人に転身。
俳句集団「いつき組」組長。創作執筆に加え、句会ライブなど「俳句の種まき」活動を積極的に行う。
全国高等学校俳句選手権大会「俳句甲子園」の創設に関わる。
「プレバト‼」MBS/TBS系をはじめ、テレビ・ラジオ・雑誌・webなど各メディアで活躍。2015年から俳都松山大使を務める。
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