プレバト‼俳句による梅沢富美男さんの句集『一人十色』のご出版
おめでとうございます。
そして、ここから俳句人生のご出帆になるのでしょうか。
・・・ということで、
では、さっそく中を見ていきたいと思います。
句集一人十色/梅沢富美男/夏井いつき監修/ヨシモトブックス
「はじめに」に梅沢富美男さんからのメッセージが、奥ゆかしい感じに綴られています。
が、実はその後に続く、第一編の傑作五十句の巻頭句にそれらのことが詠まれています。それがこれです。
ライン引き残してつるべ落としかな
この句は私の不確かな記憶によれば、兼題(お題)は、『秋の運動会』だったように思います。
この句は2通りの解釈があるように思います。
1つは、『ライン引き 残してつるべ 落としかな』というふうに切るのと、
2つめは、『ライン引き残して つるべ落としかな』と詠むのとになります。
1つめは単純な運動会での、あるあるでしょうか。夕暮れになって、うっかりライン引きを校庭に残してきちゃいましたというような。
2つ目は意味が深くなります。
そして、この2つ目の意味が、梅沢さんが「はじめに」で書いた内容にかぶりますので、「句集を出す、遠慮する、やっぱり・・・」という言い訳のような内容は、(あってもいいのですが)無い方がカッコいいかもしれません。
つまりどういうことかというと、
ライン引き残して・・・というのは、運動会のラインをまだ完成していないという意味と、句集でも出版の準備がまだ整ってはいないという意味にもとれるからです。
それは俳人としての実力なのか、あるいはもっと違う何かがまだ足りないのかということで、それは「はじめに」に梅沢さんが書いています。そして、後半が
つるべ落としかな・・・ときます。つまり、準備が整っていないけれども、周りに催促されて時間切れなので、やっぱり出版しちゃいますよとなります。
もっと深い意味では、人生ともとれなくもないですね。
まだ人生でやり残したことがあるけれど、人生の幕切れは早くて、もう締めのお年頃になってしまいました。・・・というような。
この句を巻頭に持ってきたのは、やはり監修の夏井いつきさんの腕ですね。
右ページのつるべ落としの句につづいて、両開きの本の左のページにあるのが、
銀盤の弧の凍りゆく明けの星
で、これにはやられましたね。
梅沢富美男さんが詠まれた句の中で、これほど誌的に美しく感性の鋭さが際立った句は他にないかもしれません。
この2つの句は、意外にも詠まれた時期が近く、つるべ落としが2016年10月で、銀盤が2017年1月になっています。不思議な感じがします。
後ろの対談では、
廃村のポストに小鳥来て夜明け
の辺りから、いけると思ったと梅沢富美男さんや夏井いつきさんが対談でふり返っています。(この句は、最も好きな句の1つです)
しかし、私はもう少し前のつるべ落としから銀盤の辺りから、梅沢富美男さんの感性がぐっと上がったんだなと思いました。
句集の中には子供時代の苦労を詠んだ句もあり、旱や悲しい句もありますが、
全体的には対象に温かな眼差しを向けて詠んでいる向日性のある句集となっています。
赤札のプードルを抱く帰路夕焼
売れ残りのワンちゃんを家族に向かえたのかな。
春愁をくしやと丸めて可燃ごみ
思いきりがいいなあ・・・すでに憂いから抜け出たのか?
冬木立ちシャンパン色にさざめきぬ
この句からは文字通りのイルミネーションの他に、舞台で拍手喝さいを受けている梅沢富美男さんの姿が浮かんで来ないでしょうか。
そして、ラストの句が、
湯玉ふつふつ春の厨の砂時計
図らずも、やはり時に関係した句で締めることになりました。
「おっちゃんにふさわしい句」と、夏井いつきさんは言ったでしょうか。
これが左のページで、右がシャンパンの句です。
どちらも食べ物で、おっちゃんの姿が彷彿と浮かんでくるような句で、さり気なくびしっと締めています。
こういうのを梅沢富美男さんの世界では、「指の先まで神経の行き届いた踊り」っていうのでしょうかね?
どの句からもどの句からも、人生色々な苦労はあったけれども、それを乗り越えて今は人生の春(円熟期ですよ)。。。という印象を受けました。
難をいえば、少し格好をつけすぎているのが、文学的に少しマイナスになっているかもしれません。
人間的な悩み・葛藤・苦しみなどの未解決な翳の部分をさらけ出すのは、やはり勇気がいることですが、(私も出来難いことですが)夏目漱石は、
詩人とは自分の屍骸を、自分で解剖して、その症状を天下に発表する義務を有している。
と述べています。
プレバト‼ のTVで、「こんちくしょう!」って言っている部分は、(演出もあるでしょうが)夏井いつきさんではなく俳句にも込めてみたら、もっと味わいのあるいい俳句になるような気がします。
楽しみにしています。
ちなみに句集は、第一編の傑作五十句に続いて、
第ニ編は、梅沢富美男の歴史で、プレバトで詠んだ俳句が年代ごとに列記されていて参考になりました。
対談 梅沢富美男×夏井いつき
第三編 梅沢富美男の学び
と題して、作品の添削と解説があります。
さらに子供たちからの手紙や9年間の俳句への思いなどが綴られていて読みごたえがありました。
とても良い句集を読むことができました。
ありがとうございました。
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