春の夜、家のそばの公園に大きな桜の木が満開に咲いていました。
しかも、すべり台がある砂場の中に、根をはって立っているのです。
不審に思って、「市役所に連絡する」とつぶやくと、
翌日には、ぶらんこの横に立っているのでした。
黄色いポストの郵便配達 斉藤洋/理論社
まもなく桜の木はこつ然と姿を消してしまいましたが、翌年から春になると日本中のあちこちから、桜の木からの絵葉書が届くようになりました。
あらすじ
梅雨の晴れ間に、紅茶を飲みながら手紙を書いていると、いきなり郵便配達のマンボウが現れた。そのマンボウは紅茶が好きで、紅茶をごちそうしてくれたら手紙を届けてくれるという。
しかも、このマンボウは切手がない動物のための黄色いポストの配達人だというのだった。しかも、その黄色いポストは、庭の夏みかんのとなりにいつの間に置いてあるのだった。
マンボウは手紙を受け取ると、空を飛んでいってしまった。
つぎにマンボウがやってくると、ウミガメの話をしてくれた。
ウミガメは、のんびりするためにマンボウになろうとしたり、大きなクジラになろうとしたけど、みんな上手くいかなかった。つぎはカッコ良く飛ぶトビウオのまねをしているけど、まだ飛べていないと話す。
そこでマンボウに、あなたの友だちのウミガメさんは飛べるようにならなかったのに、どうしてあなたは飛べるんですか?と尋ねると・・・
「ウミガメはね、トビウオになりきって、トビウオみたいに飛ぼうとしているから、飛べないんですよ。それは、ウミガメだってわかっているはずです。
ウミガメはウミガメのままで飛ぼうとすれば、そんなに練習しなくても、すぐ飛べるようになります。
ぼくのまねをしてのんびりしようとせず、ウミガメのままでのんびりするなら、のんびりするくらい、練習しなくてもできるはずです。それとおなじですよ。
ウミガメがそうしないで、トビウオになりきって飛ぼうとするところが、まさに修行なんですよ。
ぼくは、マンボウの気分のままで飛ぶわけですから、かんたんに飛べるのです」
と言って、マンボウは夏の空に向かって飛んでいってしまう。
そこでわたしが、人間の気分のままで跳ねてみたけれど、体が宙に浮くなんてことは起こらなかった。
そして、このマンボウもじつは、自分のシッポが気に入らなくて、カジキマグロのしっぽを探しながら、黄色いポストの郵便配達をしているという。
さて、この主人公は引越しを何度かしますが、そしてそこが都心の十階建てマンションの最上階でも、ちゃんとやってきて郵便物の集配をして、行方がわからない友人の所へも探して行ってくれるのですが、
この友人が入った迷路というのが、これまた不思議な迷路で・・・。
感想など
主人公のわたしの独白でつづっていく『黄色いポストの郵便配達』は、
なんともファンタスティックな桜の木からのエピソードで始まります。でも、じつは桜の木の話ではなくて、マンボウが郵便配達人という設定です。手紙を持っていくこともしますから、集配ですね。
マンボウの郵便配達人は、なんと空を飛んで郵便物を集配します。これが鳩でもなくコウノトリでもなく、ペリカンでもないという意外性がミソですね。あまりにも意外なので、そうなのかという即時に納得させられてしまうパワーがあります(笑)( ´∀` )。
普通の赤いポストが切手を貼って出すのに対して、黄色いポストは切手がない動物のためのポストだというのです。
そうだったのかと思い海外を探したら黄色いポストがありました。しかし、これは切手を貼って出すポストですね(笑)。
桜の木といい、ウミガメといい、みんな個性豊かなキャストなんですが、
後半のわたしの友人の行方というのが、また別の意味での不思議な内容になっています。
前半が右脳的感覚的なファンタジーならば、後半の遊園地で迷路に迷って出てこれなくなってしまうこのエピソードはどちらかというと左脳的なファンタジーのようです。
左脳的というのはやや理屈っぽく、村上春樹さんのファンタジー『ふしぎな図書館』と似た構図になっています。
たとえば村上春樹のふしぎな図書館で出てきた美少女と新月の関係と、黄色いポストの郵便配達の迷路での観覧車と太陽の関係など、それぞれが何かの象徴として描かれている点などです。
ただ全体的には、こういう配達人がいたら面白いだろうなと思います。
それで、つい紅茶を入れて誰かに手紙を書いてみようかなという気分になりますね。
もちろん出すのは赤いポストなんですが( ´∀` )、なんとなく黄色いポストの郵便配達人が来ないかな、なんてちょっぴり思ったりもして。
日常生活の夢がありますね。
やって来るのはマンボウでなくても、別の何かでもいいんですけれど。
そういえば、マンボウは近く配置転換があるそうだと書いてありました。
今度は、どんな配達人が来るのでしょう?
楽しみですね。
斉藤 洋(さいとう ひろし)さん
1952年東京都生まれ。亜細亜大学教授。
1986年『ルドルフとイッパイアッテナ』で講談社児童文学新人賞を受賞。
1988年『ルドルフともだちひとりだち』で野間児童文芸新人賞を受賞。
1991年「路傍の石」幼少年文学賞を受賞。
作品に、『ドルオーテ』『シュレミールと小さな潜水艦』(以上は講談社)
『ベンガル虎の少年は…』(あかね書房)『ジーク』『白狐魔記』(偕成社)など多数。
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