彩希は、顔も成績も家柄も地味でごく普通の今どきの中学2年生。
それに比べ従弟の美冬はかわいくてスタイルも良く、私立の中学に通っている。
文化祭のクラス劇で、成り行きから主役をやることになった彩希は、演劇の楽しさに目覚めていくのだが、目立つようになってくると、クラスのみんなからイジメられるようになってしまう。
「私なんかさ、やっぱり……」
言いかけて、次の言葉が出てこない。つぶやいたとらん涙が出た。
「やっぱり、なんかやっちゃダメだったんだ……」
私のスポットライト/林真理子 作/ポプラ社
クラスには、成績が良く顔もそこそこで気が強くて出たがりの莉子のグループが一軍として君臨している。
彩希は顔も性格もそこそこの普通のコで、目立たないようにという思いが共通しているグループに入っている。
一人なのはなんとか莉子のグループに入りたいと頑張っている河井さんと、いつも一人で本を読んでいる土田さんだけだった。
クラスの文化祭で演劇をやろうと提案したあと、莉子のグループが内輪もめをして主役の座が彩希に押しつけられてしまった。
やる気がないまま始めたのだが、いざお芝居を始めてみると、演じることの面白さに目覚めていき、『女優になりたい』を言う夢を密かに抱くようになって、本格的な演技指導をしてくれる劇団に入団する。劇団は楽しく充実した日々を送るようになった。
また従弟の美冬も、渋谷で芸能プロダクションにスカウトされて、芸能界に入っていく。
やがて学校で、彩希が劇団に入ってがんばっているということを知った莉子のグループに悪口を言われたり無視をされたりなどのイジメにあってしまう。そのため彩希は劇団に行くのをやめて、鬱うつとした日々をおくることになるのですが、周りの家族や劇団の人などの励まされながら、再び劇団にもどって・・・。
後半は普通の中学生にはなかなか起こり得ないようなミラクルな展開になっていきますが、それは芸能界通と思われる作家林真理子さんのなせる力技でしょう。
さらに暗いといってクラスで仲間外れにされていた読書好きの土田さんが、全国作文コンクールで優勝したというおまけがついて、
学校でいちばん強いのは、かわいいコや頭のいいコじゃない。”一軍”のコでもない。学校以外の世界を持っているコなんだ。自分だけのスポットライトを浴びるコなんだ。
と〆ています。
これは確かにそうですね。どんなことでも、何かこれだけは誰にも負けないぞというものを持っているコは強いと思います。
ただそれとは別に、これを読んだとても若い人(子供ともいいますが)が、ご教訓のように感じてしまうかもしれません。
この部分については、スティーブン・キング氏の『小説作法』のP252を引用したい。
それにはこう書いてあります。
私が何よりも重きを置くのは残響である。
固定的な読者が巻を閉じた後、その頭と心に余韻が尾を曳いたら本望だ。
そのために、噛んで含めるような話術に訴え、ひたすら理解を求めて生得の権利を売り渡すような真似はしたくない。
含意や教訓は一つに絡げて、陽の当たらないところに押し込めておけばいい。
何故、私がスティーブン・キングを持ち出したのかというと、それはこの本「私のスポットライト」で、文化祭の時に演じたのは、
「なんでもアメリカの古い映画をTSUTAYAで借りて、それを下敷きにしたという」
と書いてありますが、まさにそれがスティーブン・キングの『キャリー』だからなのです。
だからラストの部分は蛇足だったですが、全体的に意外性があってとても面白く読めました。それに芸能界の裏事情なんかもわかって、勉強にもなっていいですね。
作者 林真理子さん
山梨県生まれ。コピーライターとして活躍したのち、エッセイ集『ルンルンを買っておうちに帰ろう』がベストセラーに。『最終便に間に合えば』『京都まで』で直木賞を受賞。『白蓮れんれん』で柴田錬三郎賞、『みんなの秘密』で吉川英治賞を受賞。他多数。児童書に『秘密のスイーツ』。
私のスポットライト (ポプラ文庫 日本文学 466) [ 林 真理子 ]
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