おはようございます。
実況はわたし、出席簿三十三番、綿野あみがお送りいたします。
綿野あみは、かつて小学5年のとき女子グループから外されて悩んでいると、
従弟の大学4年の早月ちゃんから、
「実況者になっちゃえばいいんだよ」と言われる。
「クラスの輪から外されていると感じるなら、いっそ自分はその輪を実況する役割なんだってことにしちゃえばいい。
観察して心のなかで実況すればいいんだよ。細かいところまでよく見てみな」
そういう早月ちゃんは、競馬の実況アナウンサー志望で、そのことを親に反対されてあみの家に転がり込んできたのだった。
ハジメテヒラク/こまつ あやこ/講談社
ただの暇つぶしに教育実習生の先生を、脳内(口に出さない)で実況中継をしてみるといつの間にか先生の大変さがわかってきて、心のなかでエールを送っていたことに気づく。そして、その間は自分が仲間外れにされていることをあまり気にしないでいられた。あみが、実況って楽しいかもしれないと思った瞬間だった。
早月ちゃんは「夢が叶ったら連絡する」というメモを残して去っていくが、あみはその後も脳内実況を続けることで仲間外れを乗りきって、中学1年になった。
中高一貫校の湖真学園に入ったあみは、中学での友人にバスケ部のマネージャーをやろうと誘われるが、やりたくないので見学を抜け出すのだが、彷徨ったあげく迷子に。
そこで生徒会副会長兼いけ花部の部長の城慶太郎(ジョウロ先輩)に出会い、バスケ部のマネージャーを断る理由のためにいけ花部に入部を決めてしまう。
いけ花部は部員が少ないために存亡の危機にあった。
しかもその部員は、
「こんなしけた部活、入らなくていいのに。城部長に強制されたの?」
と毒舌を吐く、短めのスカート、第一ボタンを外したシャツに緩めたネクタイ。くりんとおくれ毛を垂らしたお団子ヘアの中3の通称カオこと谷平さん。
わたしの隣の長机で、黙々と本を読んでいる女子。学年章はわたしと同じ。さっきからまったく口を開きません。
という無口な中一の九島さん。
そんな中、城部長の恋を応援するため、生け花部は文化祭での入賞を目指すことに。
あみは、「生け花ショー」を提案します。
それは皆がステージで生け花をするところを、あみが実況で放送するという企画で、そのために皆のことを深く知ろうとします。
将来は美容師になるのが夢というカオ先輩、マイちゃんこと九島麻衣さんがベトナムと日本のハーフだということなど、今まで表面しか見ていなかったことを知ることになります。
ちなみに日本の季節の数は72個あると、あみは部活初日に教わります。
二十四節気七十二候っていってね、昔の人は半月ごとに二十四に分けたんだ。
それで、その一つの節気をさらに三つに分けて候と呼んだ。『牡丹はなさく』は春の最後の候なんだ。
日本には季節ごとに色々な花が咲く。十二候のなかには、その他にも花に関わる名前が多いんだ。たとえば春には『桜はじめて開く』、秋には『菊の花開く』とか
そして、ショーのタイトルは、11月上旬の文化祭の72候は『サザンカはじめて開く』なので、ハジメテヒラクになります。
そして、この本のタイトルも、『ハジメテヒラク』ですね。
競馬の実況アナウンスや生け花、季節の古風な捉え方など、今までにない切り口の(生け花なだけに)瑞々しい学園青春物語になっています。
ちなみに今年2023年「山茶始開」(つばき(サザンカ)はじめてひらく)は過ぎて、
11月13日~17日は、「地始凍」(ちはじめてこおる)大地が凍り始める
つぎの11月18日~21日が「金盞花香」(きんせんかさく)水仙の花が咲く
になります。
ここまではやる気満々のあみでしたが、今まで頭の中だけでアナウンスをしていたのが、みんなの前でショーをやるのが近づいてくると、怖気づいてアナウンスをやめたくなってしまいます。そんなあみに顧問の野山先生は、
「いろんなことを考えすぎて心がごちゃごちゃぬなったときには、生け花が効くんだよ」
「効く?」
「そう、生け花は引き算の練習だからね」
という助言をします。そして、あみは気づきこんなふうにその時の気持ちをアナウンスします。
生け花は引き算。
余分な葉っぱは、容赦なくパチンと切り落とします。
もったいない、そう思ってもパチンパチン。
その先に、凛々しい姿が現れる。
もし、心が一本の枝だとしたら。このモヤモヤは、その枝の葉っぱだとしたら、生け花みたいに、本当に大事なものだけ残すことができたなら。
わたしは何を残したい?
みんなの前でしゃべるのは恥ずかしい……パチン。
マイナスのイメージになるのが怖い……パチン。
変なこと口走ったらどうしよう……パチン。
もうパチン大事なパチンものパチン、しかいらないのパチンパチン。
そういえば生け花って、こんな感じだったなと、高校生の頃に生け花の小原流を習っていた時のことを思い出します。最近はお正月に生けるくらいだったけれど、また時どき生け花をやってみたくなりました。
これは断捨離にも似た感じがありますね。
使っていないものを思いきって捨ててしまうと、部屋も気持ちもすっきりとした姿があらわれます。
この本『ハジメテヒラク』を読んで、水を与えられた切り花のようにほんのちょっぴり若返ったような気分になりましたね。それと、2024年の72候が書いてあるカレンダー(あ、暦ですね)を買おうかなと思いました。
著者・こまつあやこさん
1985年生まれ。東京都中野区出身。
清泉女子大学文学部日本語日本文学科卒業後、学校や公共図書館の司書として勤務。
2017年「リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ」で第58回講談社児童文学新人賞受賞。
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