あなたの好きな色はどんな色?
あなたにどうしても欲しい色があったら、いろどり屋への道が開かれます。
それは色とりどりの足跡となって、あなたを不思議な魔法の黄昏商店街へと導いてくれます。
さて、あなたに必要な色って、どんな色でしょう?
いろどり屋 十年屋と魔法街の住人たち2/廣嶋玲子・作 佐竹美穂・絵/静山社お題「我が家の本棚」
いろどり屋は、魔法使いの商店街にある色とりどりの色をした樽のようなお店です。
店主の魔法使いのテンはまだ8歳の少年で、七色の輝くような髪をしています。
そして、「いろどり」の魔法で、すてきな色をつくり出すことができるのです。
おしゃべりな使い魔のカメレオンが内気で無口なテンに代わって、あなたの物語を聞いてくれて、
あなたにふさわしい色を探すお手伝いをしてくれるのです。
1 悲しい肖像画
サナは美術大学で知り合ったガロと暮らしていた。
サナはガロのために絵をあきらめて働いてつくしていたのに、ある日、ガロは好きな娘ができたからと、サナを捨てて出ていってしまった。
残されたのは、たった1度だけガロが描いてくれたサナの肖像画で、その絵は肌も髪も緑色で塗られて、目にはピンク色の涙を浮かべているというぞっとするような悲しい肖像画だった。
サナがいろどり屋で目にとめた色は・・・
晴れわたったような夏の空のような、みずみずしい空色で、透きとおるような青さがサナの心に染みたのでした。
2 色変わりの花びら
トグはねじり花の品種改良をして品評会で優勝を狙っていたが、思うような色の花を咲かせることが出来ないでいた。
ここ数年、いつもライバルのユジが一等を独占していた。
トグはみんなをあっといわせるような、すばらしい色が欲しいと強く思っていた。
トグがいろどり屋から持ち帰った色は・・・
小瓶の中には、虹が渦巻いていた。赤、オレンジ、黄色、若葉色、水色、青、そして紫色が細いリボンのようにつながって、小瓶の中に満ちていた。
3 望まれたセーター
手芸が得意だけれど地味で内気なネリは、ボート部のエースである人気者のセグロにセーターを編んで欲しいと頼まれる。
どんな色でもいいといわれたのでグレーでセーターを編んだのだが、編みおわる頃に、チアリーダーでセグロが好きだというミラに、「セグロはグレーが大嫌いなのだ」と言われる。
もう編みなおす時間もないネリは、ほとほと困り果ててしまう。
どんな色がいいの?と問われたけれど、どんな色がいいのかわからないと答えるネリ。
パレットに促されて、色が並んでいる棚をじっくりと見ていったネリは、どんな色もすばらしくきれいなことに気がつく。嫌だといったグレーさえも。そうして・・・
ある小瓶を目にすると、どきんと、心臓が大きく高鳴った。
それは深みのある赤紫色だった。くっきりと濃く、華やかな赤と豊かな紫が絶妙にとけあった色合いは、熟したブドウを思わせる。
4 しみ落としの依頼
狐に似た風変わりな黒髪の少女ビビは、同じ魔法街に住んでいる「お天気屋」さん。
ビビはお気に入りの木イチゴ色のコートに、ホットチョコレートをまき散らしてしまったので、きれいな色に染め直したいのだという。
テンは棚から、あるお客さんから交換でもらったという1本の小瓶を取り出して・・・
小瓶の中には、なんともあざやかな緑がつまっていた。エメラルドよりも少し薄い色だが、その透明度、そしてはじける泡のようなきらめきに、ビビは目を輝かせた。
それはユンという少年が持っていたメロンソーダから作られた色だった。ユンは大好きなナナにひどいことを言ってしまい・・・。
5 フクロウと少年
雨が降る真夜中に、タウ孤児院の前に赤ちゃんが入ったバスケットが置かれていた。
それこそが色の魔法使いテンだった。
タウ孤児院は院長のイグ氏が使い込みをしていて、施設はボロボロで、子供たちにも満足に食事を与えられていなかった。
そこへやってきたフクロウのトキさんによって、魔法使いとして目覚めていく。トキさんの色をつくり出したのだ。
小瓶の中には、神秘的なエメラルド色が入っていた。高貴で、高潔で、どっしりとした落ち着きのある色。
獣や鳥たちを守る森のように、深さと広がりを持ち合わせている。
絵本に封じ込められていた使い魔のカメレオンも封印がとかれ、テンは施設を出てカメレオンのパレットと共に魔法使いたちの街の黄昏横町へと行くのだった。
フクロウというのは、不正のある施設や子供たちに必要な世話をしていない施設を見つけ正すために、入りこんで内情を調べる人のことをいいます。
感想とレビュー
テンはどんな色も、みんなきれいだと言います。
虹色を欲しがった園芸家のトグには、花はその花が持っている色が一番きれいだと伝えるのです。
「いろどり屋」では、もらう色のお代に、自分が持っているものの中から、色になるものを差し出すことになっています。
そこでトグは、茶色いはじけ花の種を差し出しました。トグにとって、それはありきたりのつまらない種でした。
ところがテンは、それを濃い金茶色のインクにしました。
それはまるで銅を溶かしたようにぴかぴかとしてきれいな色をしていて、トグは驚きました。
グレーのセーターの色を染め直したいというネリには、「グレーもとってもきれい」と言います。
ネリが色を選ぼうと棚をながめると、魔法使いがつくり出した色は、どれもすばらしくきれいだと気がつきます。
ふだんなら見向きもしないような暗い茶色や冴えない黒でさえ、小瓶の中で神秘的にきらめいている。
・・・と。
確かにテンは、なんでもないふつうの景色の中から、すてきな色をつくり出すのです。
でも、これは感性のことなのです。
それはつまり、生きることの喜びのようなものです。
同じ風景、同じ景色の中でも、そこから限りなく美しいものを観て感じることが出来る人というのは、
やっぱり幸せなのではないでしょうか。
昔、アウシュビッツで過酷な環境を生き延びられた人は、
体力がある人でも、若い人でもなく、精神力や忍耐力がある人でもなかったそうです。
水たまりに映った何でもない風景を絵画のようだと眺められた人や、
冗談を言って笑うことができた人だったというのを読んだことがあります。
この『いろどり屋 十年屋と魔法街の住人たち』の本は、不思議で面白く読みながら、
美しいものを感じる心は、生きる力になるのだなぁと、さり気なく思うことができたすてきな物語でした。
作者・廣嶋玲子さんについて
神奈川県生まれ。
『水妖の森』でジュニア冒険大賞受賞、『狐霊の檻』でうつのみやこども賞受賞。
主な作品に『世界一周とんでもグルメ』、「ふしぎ駄菓子屋銭天堂」シリーズ、「もののけ屋」シリーズなど。
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