桜さくら堂

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「万引き家族」の感想

 カンヌ映画祭でパルムドール賞を受賞した「万引き家族」を観にいきました。

印象に残ったのはラストのゆりが、ポツンと一人でいる姿でした。「万引き家族」に連れられて万引き家族の6人目の家族になる前と同じように、万引き家族で無くなった後も、同じようにポツンと。

 観終わった時に、なぜか昔テレビで観た「道」という映画を思い出しました。どちらもとても良く似ているんですね。暗くて、だけど人間がすごく良く描けていて。端役でさえも、実に味があって。道はイタリア映画で、アカデミー外国語賞を受賞していますね。フェデリコ・フェリーニ監督の代表作とも言われています。

 

 これは日本の吹きだまりを描いたような作品だなぁと感じました。万引き家族は万引きしていたのは物を万引きしているだけではなくて、この家族そのものが万引きの象徴のようなものなのでしょうか。本当の家族よりも温かいようでもあるけれど、本当の家族になりきれない弱さや狡さも、最後に祥太と治が交わした言葉に実に上手く表現されているなあと感心しました。

 吹きだまりには、こう、台風の後とかに色んな物があったりするんですよね。いかにも不自然と思われるような物がごちゃごちゃとあったりします。中にはキラッと光る物も混じっていたりして、興味があります。次にそこを通ってみるといつの間にか無くなって、きれいになっていたりします。そんな感じかな。

 台風が来るってわかっていれば、本当に大切な物だったら飛ばされないように家の中に入れておくとか、くくりつけておけばいいのにね。吹きだまりに飛ばされて集ってくる物達は、きっと持ち主は無くなってもいいと思っているのか、適当に扱っている物ばかりです。それを人間に置きかえたような、何よりも大事な家族なのに粗末に扱ってしまう人達。そういう粗末にされた人間を集めたようなのが「万引き家族」なんだけど、それを是枝裕和監督はじいーっと見つめてすくいあげて、そういう人間を実に上手く表現したなあと思いました。

 でもね、暗いです。日本のほとんどの人はそういうものに目を背けて生きてきたから、普通の人が観てもテンションは上がらないと思いますよ。楽しみたいなら、エンターテインメントをお勧めします。楽しさという面や面白さという面では落ちるし、それから涙も流れませんでした。

 でも、何年か経って、たぶん何かあった時に、万引き家族の「家族で行った海水浴の場面」や「万引きしたゆりと祥太にお菓子をくれた店のおやじさん」とか、「ゆりが一人ぼっちでいる場面」とか、思い出しそうな気がします。今でも、「道」のラストシーンが浮かんでくるように。