きつねの こが まるきばしの たもとで、
きいろい ばけつを みつけました。
「だれのだろう。」
きつねの こは、 ばけつを まうえから みおろしました。
なかに、ほんの すこし みずが はいっていました。
きいろいばけつ/森山 京・作 土田 義晴・絵/あかね書房
あらすじ
きつねの子は、こんな黄色いバケツが、前から欲しかったのです。
黄色いバケツはまだ新しく、名前は書いてありませんでした。そこで誰のバケツだろうと、みんなに聞いてまわりました。
うさぎの子は赤いバケツを、くまの子は青いバケツを持っていました。
たぬきは黒で、ぶたは緑色のバケツです。結局、黄色いバケツの本当の持ち主がだれなのか、わかりませんでした。
「もし、1週間誰も取りに来なくて、置きっぱなしだったら、きつねくんのにしたら」
と、くまの子とうさぎの子が言いました。
きつねの子は、そうしようと思いました。
そこで黄色いバケツをもとあった丸木橋のたもとに置いて、翌日の朝早くから暗くなるまで、バケツをながめて過ごしました。
きつねの子は、バケツの横に丸くなってうたたねをしたり、バケツをさげて丸木橋を渡ってみたり、バケツを川の水できれいにゆすいでみたりしました。
きつねの子は毎日、黄色いバケツを見に行きました。
そうして、川べりに座って魚を釣ってバケツに入れるしぐさをしたり、リンゴの木に水をかけてやったりしました。
リンゴが実ったら、バケツにリンゴの実を入れて、みんなに配ろうと思ったりもしました。
だんだん自分のものになる日が近づいてくると、棒切れでバケツに自分の名前を書くマネをしたりして、楽しみにしていました。
いよいよ明日で1週間めになるという晩に、
「だいじょうぶ。あしたは ぜったい きみの ものだよ」
と、くまの子とうさぎの子が言うのでした。
その夜に、きつねの子は黄色いバケツの夢を見ました。
朝になって目覚めると、きつねの子は、すぐに黄色いバケツを見に行ってみました。すると・・・
感想
お話は、きつねの子が、大好きな黄色いバケツと出会った所からはじまります。
黄色くて、ちょうどいい大きさで、きつねの子はこんなバケツが欲しかったのです。
こういうことは、よくありますね。ワタクシも子供の頃、隣の席の子が持っていた12色のサインペンがキラキラして見えて、すご~~く欲しかったのを覚えています。
う~~ん、こうして考えてみれば、ワタクシって子供の頃から、文具が好きだったようです。
なかに、ほんの すこし みずが はいっていました。
とあるので、誰かがちょっとだけ使っていたのです。それがこの黄色いバケツの、本当の持ち主なのでしょう。
だけど、置きっぱなしで、名前すら書いてありません。
そこで1週間も置きっぱなしだったら、きつねの子のものにしてもいいっていうことにしようとしました。で、楽しみに待つわけです。マイルールなんですが・・・
黄色いバケツを見つけたのが月曜日で、次の月曜日まで、1日ごとにきつねの子が黄色いバケツを見ながら、待つようすが書いてあります。
「げつようびには、ぼくの もの
きいろい ばけつは ぼくの もの。」
きつねの こは、でたらめの ふしを つけて うたいながら、 ばけつの まわりを ぐるぐる まわりました。
こんなふうに、きつねの子が黄色いバケツに想いを寄せているようすが、日を追うごとに書いてあります。読んでいると、だんだんきつねの子の気持ちになってきて、月曜日にバケツはあるんだろうか?
きつねの子がこんなに黄色いバケツのことを思っているんだから、バケツがあってほしいと思うのではないでしょうか。
本当はきつねの子のバケツじゃないのに、置きっぱなしにした方が悪いんじゃないのかしら・・・って思うかもしれませんね。
さて、では、月曜日に黄色いバケツはあったのでしょうか?
それとも、無かったのでしょうか?
その答えは、本を読んでいただくとして、
きつねの子は、じつは日曜日の夜に、黄色いバケツの夢を見るのです。
強い風が吹いてきて、黄色いバケツが月に向かって、飛んでいってしまう夢でした。
このことについて、作者の森山京さんは、あとがきでこう書いています。
きつねの子の記憶の中では、いつまでもぴかぴかで、まっ黄色の、自分のバケツであり続けることでしょう。
たった1週間でしたが、きつねの子は、いっしょに過ごした感動と喜びを持つことができました。そのため、
「いいんだよ、もう。」
きつねの こは、きっぱり いうと、かおを あげて、そらを みました。
と、あります。
これだけの心境には、大人でもなかなかなれません。
この黄色いバケツの所に、別の何かの言葉を入れてみれば、それがわかることでしょう。
家族、恋人、友人の名前、あるいは仕事とか、スポーツや趣味の何かとか、人生で人は大好きな何かと出会って、そうして、それはひと時あなたと一緒にいて、いつかすべて去っていきます。
その時、ワタクシはこのきつねの子のように、
「いいんだよ、もう」
と、顔を上げて空を見ることができるでしょうか。
森山 京(もりやま みやこ)さん
1929年、東京に生まれる。
「きいろいばけつ」「つりばしゆらゆら」などの『きつねのこシリーズ』(あかね書房)で路傍の石幼少年文学賞、「あしたもよかった」(小峰書店)で小学館文学賞、「まねやのオイラ旅ねこ道中」(講談社)で野間児童文芸賞、「パンやのくまちゃん」(あかね書房)でひろすけ童話賞を受賞。
ほかに「てんぐちゃん」(理論社)、「クー」(ポプラ社)などがある。
みなさん、こんにちは💛
いつもご訪問をありがとうございます。
ワタクシは時どき、本の中の文章をそのまま書き写していますが、
やはり作者の思いは、文章そのものに宿るように思うからです。
同じような意味でも、どういう語彙を使って、どう句読点を打つかなど、それらがあいまって作者の個性ある作品になるので、そこを要約してしまうと、どうも作者の息づかいが薄れてしまうように感じるからです。
また、作者の文章をそのまま書くことで、文章の勉強になるということもあります。
そういうわけで、ワタクシは特に心に響いた文章は、そのまま書いています。
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