桜さくら堂

いらっしゃいませ! 今日もあなたのために、とっておきのお話をご用意しました。

聞き上手になるには?

 

 ケアマネージャーの仕事の一つとして、『 傾聴 』というのがあります。

1.アセスメント

まず、初対面の方にお会いした時に、挨拶の次にケアマネージャーがする大事な仕事が、アセスメントです。アセスメントというのは、相手の現在の健康状態や身体の機能、家庭環境、経済状況、生い立ちやどのような暮らしをしてきたか、これからどうしたいのか、何に困っているのか等のご本人の思い、ご家族の気持ちや要望等の情報を聞き取ることです。

 情報はあればあるほど、きめ細かいプランを立てられますが、聞き辛いことも、ままあります。なにしろ初対面で、立ち入ったことを聞かなければならないので、なかなか難しいです。たとえばおトイレのこと。それから家庭の人間関係とか。中でも聞きづらいのは経済状況でしょうか? でも、これは大事なんです。サービスをつける時に、どのくらい負担が出来るのか知っておく必要があります。お金はどれだけかかってもいいからどんどんサービスを受けたいって言う人もいれば、なるべくお金がかからないサービスを探してくださいっていう人もいますからね。

 ケアマネ会議の時に、いつ経済について聞いたらいいかという話になったことがありました。あるケアマネは、最初に事務的に聞いた方が聞きやすいと言っていました。そうしたら、別のケアマネが、最初に経済の事を訪ねたら、後で「初対面なのにお金のことを聞いてくるなんて失礼なケアマネだ」っていう苦情の電話があったそうです。難しいですね。 

 私はなかなか聞きづらいので、後回しになってしまう事が多いですね。だいたいは家の中の様子とか、持ち物とか、あるいは会話の中から拾ってきたりしますね。それに近い話題になった時に、さり気なく聞いてみたり。でも、失敗もあります。

 高齢者のご夫婦2人暮らしの方を担当したことがありました。今住んでいる家の他にもう1軒家を持っていて、そこで昔商売をしていたそうです。時期を見てその家を売ろうと考えているとのことでした。息子さんは医師で、もう一人いる娘さんは薬剤師、その夫は医師だそうで、お金はじぇんじぇん困っていないというようなことを話していました。

 この老夫婦の要望は、「定期的に病院に通院するので、介護タクシーを利用したい」とのことでした。以前にも介護タクシーを使っていたので、引っ越してきたここでも使いたいということでした。 夫の方は要支援1で、妻の方は要介護3でした。この妻が腰痛なため、時どき整形外科に通院していたのです。

 そこでプランを作り、担当者会議を開催し、話し合って納得した上でご利用が始まりました。ところがいざ利用が始まってみると、介護タクシーの業者から電話がかかってきて、「料金を払ってくれない」と言ってきたのです。そこで事情を聞いてみると、「料金が高い」とのことでした。介護タクシーの介護保険が適用になるのは、乗り降りなどの介護の手間がかかる部分だけで、走行距離は普通の料金になるのですが、そこも介護保険で安くなると勘違いしたらしいのです。以前もそうだったはずですし、いくら説明しても納得してくれず、とうとう払ってくれないので、娘さんに事情を話して支払っていただいたことがありました。

 その後、この老夫婦は認知症の兆候があったということがわかりました。間もなく娘さん夫婦が、介護のために近くに越してきましたので、それからは必ずキーパーソンの娘さんを交えてサービスを決めるようにしました。

2.モニタリング

 居宅ケアマネには、月1回以上、ご利用者様のお家を訪問してモニタリングをしなければならないということになっています。そこでご利用者様の健康状態とか生活のご様子とか、つけたサービスがきちんと提供されているか等などを見たり話を聞いたりして確認するという仕事があります。これも大事です。1か月の間には、特に何があったわけでもないのに状態が大きく変わって、今までの支援が合わなくなっていることもよくあるからです。

 そこで様子を見るのに合わせて、本人からお話を伺うというのが大事です。お年寄りの中には、困ったタイプが大きく分けて2つあります。もう、1年くらい無人島にいて誰とも話をしたことがなかったように話す人がよくいます。機関銃のようにダダダダダッっと、話をするタイプですが、これが結構な割合でいます。おばあちゃんと機関銃(的トーク)ですね。

 すごいですよ。話をやめたらもう命がないみたいに話をします。しかも、相槌が打てないくらい、というか、打てません。ぜんぜん途切れないんです。こちらとしては、まず健康状態を確認したいのです。あるいは、生活の様子とか、困ったことはないかとか、とにかくそういった事を聞きたいと思っているのですが、そういう人にかぎって、お孫さんお話とか若かったころの事とか、全く関係のない事を話します。

 でもね、これも心を癒すのに大事だと思って、聞きます。聞くのはカウンセリングの方も言っておられますが、疲れます。それでカウンセリングは1時間位となっているのだそうです。相互に話す会話は、疲れないそうです。そこで私もそれにならって、モニタリングは1時間位にしようと思っています。

 しばらく聞いていると、そういう人は、また最初に戻って同じ事を言い始めますね。そうして、3回くらいくり返しになると、仕方がないので「すみません、ちょっとだけいいですか」と謝ってから、「お身体の調子はどうですか?」って聞きます。するとまた、ここからダダダダッっと、お身体の調子を話し始め、途中から少しずつ逸れはじめ、こちらを無視して話は迷路に入っていくという感じでしょうか。

 もう一つのタイプは、これと全く逆のタイプになります。話を投げかけても、

静けさや 蛙飛び込む 水の音・・・ ボチャン、シ―――――ン……。

みたいな。ボチャンが、投げかけた質問ですね。

ボチャン、シ――――――ン。

ボチャン、シ――――――ン。

ボチャン、シ――――――ン。

あ、もちろん、短いお応えはありますよ。ただ、こんな感じということです。

色いろ工夫はしているんですが、やっぱりまだ信頼が得られていないのか、それとも、話をするのが好きでないのか、質問の意味が解らないのか、聞き取れないのか、あるいは警戒しているのか……。こちらも難しいタイプで、こちらも多いですね。それで様々な話をふっていくうちに、興味がある話題にぶち当たることもあります。

 こういう素っ気ないタイプの人に有効な質問が、「お生まれはどちらですか?」というのでしょうか。皆さん、生まれ故郷の話や親の話、若い頃のお話は好きな方がほとんどなので、会話に困ったら、過去にもどってみたりしています。

 あと、訪問するたびに、「あんた誰?」と言われて、いつも「初めまして」からの人ととか、しばらく話をしてから、「ところで、(あなたは)誰でしたっけ?」と聞かれたり、なんていうことも、わりとよくあるんですよ。

3、相談業務

  ケアマネへの相談と言っても、介護のことばかりではありません。日々の買い物の相談から、家族関係の重~い相談や、病気の事や友人知人の人間関係の悩み、じつにさまざまな相談事が持ち込まれてきます。ただ話を聞いてくれればそれでいいというようなものから、どうにも解決策が見つかりそうもないものまであります。すっきりとはいかないまでも、今よりは良くなる方向性を見つけていきたいなぁと思っています。

 それで相談に来る方も、やっぱり2つのタイプがあるんですね。まず、ご要望をすぐにハッキリと「あの人と同じデイサービスは嫌だから、違う所に変えてほしい」とか、「食事はご飯ではなく、パン食にして」とか、すごくわかりやすいタイプですね。

 もう一つのタイプは、遠慮があるのかなかなか言い出しません。すごく遠回しで、最初は相談があるとは思わないような感じなんですね。うっかりすると、普通の会話をしてそのまま返してしまいそうです。でも、なんとなくこう、何か引っかかるので、ゆいったりした雰囲気を醸し出すようにして待っていると、ようやく本題をぽつりと話し始めたりするんですね。たぶん、話したくないので、前置きが長くなってしまうのかもしれませんね。

 4.気づいたこと 

 

ある時、私も同じ事をくり返し言っていることに気づきました。それで、どうして何度も言ったのかなあって、よおく考えてみました。そうしたら、相手の反応が鈍かったので、本当に私が話したことがわかってくれているのかよくわからなかったんですね、それで、もう1回、同じことを言っていたという事に気がつきました。

 もしかしたら、あんなに何度も同じことを言うのは、そういうふうに話したこと相手がわかってくれているのかわからないから、というのもあるのかなあ、と思いました。

そこでもっとはっきりと相づちを打つようにしました。特にいいのが、相手が言った言葉の最後の部分をくり返して言う相づちです。たとえば、「今日はあれして、これして、いろいろと忙しくて、お昼ご飯も食べてないから、すごくお腹が空いてるんです」という内容だったら、「そうですか、すごくお腹が空いているんですね」と相づちを打ちます。そうすると、相手は納得してくれるようです。

 お話を聞くというそれだけのことですが、奥が深いなあと感じる今日この頃です。

ではでは。