あなたは、いらないものを持っていませんか?
捨てたいけど捨てられないもの、
使わないけど捨てるにはもったいないと思うもの、
そんなものがあったなら、作り直しの魔法で素敵なものに変えてみませんか?
作り直し屋・十年屋と魔法街の住人たち/廣嶋玲子 作/静山社
『作り直し屋』の店主の魔法使いは、ツルさんというおばあさんです。
初出は「十年屋」の最初の物語に出てきます。いらなくなった雪だるまをスノードームに作り直してくれました。
ツルさんという魔法使いは、髪がサーモンピンクに染めたボブカットで、ガラス瓶のようなぶ厚い眼鏡をかけています。
その格好といったら、ツバが広い真っ赤な帽子をかぶっていて、その帽子にはまち針や針や銀のはさみ、糸巻き、毛糸玉などがついています。ワンピースには無数のボタンが縫い付けてあり、靴にはローラーがついているという奇抜さです。
でも、いかにも魔法街の魔法使いのようで、わくわくしてきませんか?
さて、ツルさんのお店には、デパートよりもキラキラとした素敵な商品がずらっと並んでいますが、これはみんなツルさんが作り直したものでお金では買えません。ここでの取引は、いらないものとの交換になります。
今は断捨離が盛んですが、今度はSDGsの時代がそこまで来ているような気がします。
ですからこの『作り直し屋』は、時代の最先端をいっているお話ということになるでしょう。
今は使わないけれど、どうしても捨てられないものって、誰でもあると思います。
使えるものは大事に再利用して、必要な人に使ってもらえればうれしいですよね。
いらなくなったものが、どんなふうに生まれ変わって再び使われるようになるのかも、この物語の楽しみの1つになっています。
物語を読んだ後、あの古いあれが愛おしくなっているかもしれませんね。
1.花盛りのお皿
カナさんは33年前におばさんから結婚祝いにもらったお皿セットを持て余していました。
スープ皿4枚、パン皿4枚、大皿2枚、ミルクつぼ付きという豪華なお皿だけれど、あでやかな模様がついているため、料理が引き立たないので物置の奥にしまったままでした。
かといってお祝いに頂いたものを捨てるわけにもいかずに困っていたのだ。
カナさんがお皿を持って頭をかかえていると、物置の奥に不思議なドアがあることに気がつくのでした。
丸いボタンをかたどったドアなのだ。
色はきれいな桃色で、四つのボタン穴にあたるところには、小さな丸いステンドグラスがはめこまれている。
それぞれ、毛糸玉、針、はさみ、糸巻きの絵がかかれたステンドグラスだ。
カナさんがドアを開けると、そこは・・・・
2.夢のドア
トクさんは46歳で小学校の先生。小さなアパートに、奥さんと子供4人でつつましく暮らしています。
じつはトクさんは奥さんに内緒で、20年も隠し持っているものがありました。それは、
キャラメル色のニスが塗られた、立派な厚いドア。古いものだと一目でわかるが、その雰囲気がまた味わい深い。
全体に細かな彫刻もほどこされているし、ライオンの頭をかたどった真鍮のドアノブも堂々たるものだ。
このドアはもともとは町一番の老舗ホテルの玄関ドアに取り付けられていたもので、ホテルが解体された時にトクさんがもらい受けてきたものでした。
トクさんはこのドアを、いつか自分の家を建てた時に取り付けようと、大家さんに頼んでアパートの地下室に置かせてもらっていました。
ところがなかなか資金が貯まらずに月日が過ぎていき、ある日地下室に行ってみると、ドアは表面に大きなヒビが入ってみるも実残な姿になっていたのです。
ショックを受けたトクさんが地下室から飛び出ると、そこは見たこともない部屋でした・・・
3.語り部のノート
14歳のナグが母親の言いつけで屋根裏部屋の整理をしていると、そこで50冊近くもある古びたノートを見つけました。
それは大叔母さんが残した自作の物語をつづったノートで、インクが薄れてもはや読めなくなっていました。
仕方がないので、ナグがノートを燃やそうとすると、ツルさんが現れたのです。
ツルさんはそれを枕に作り替えてくれました。
その枕に頭をのせて横になると、夢の中で色々な物語を見せてくれるのでした。
ナグはその物語をノートに書き写して、自分が書いたと偽って少年作家としてデビューしたのです。
一気に話題となり、ナグの本は売れにうれました。ところが・・・・
4.星のモビール
少女ミアは病弱な弟の誕生日に、お菓子屋さんで2等賞の車のおもちゃをあげたいと思っていました。
ところが、結局、当たらずにお金を使い果たしてしまったのです。
みんな残念賞の飴玉ばかりで、ようやく当たったのが、つまらない城の形をしたバッヂでした。
ミアの涙がこぼれて地面に落ちたところから、白い霧が立ち上って・・・
灰色のレンガ造りの建物にはさまれるようにして、一軒の家があった。
・・・二階建てで、形は四角いが、屋根をおおっているのは、瓦や板ではない。なんとミアよりも大きな毛糸玉なのだ。
薄紅色、赤、桃色、藤色、赤紫。
いくつもの毛糸玉の間からは、これまた巨大なはさみや編み棒が、でんとのぞいている。まるで家全体が裁縫箱のような姿だ。
店の中にある商品は、どれもすてきで高そうなものばかりでした。
ツルさんに、いらないものと店の商品と交換してあげるといわれて、ミアが城の形をしたバッジと交換したものは・・・
5.いまいましい赤い玉
シララは小さな時から欲張りでした。
シララのおばあさまは大変なお金持ちで、すてきなアクセサリーをたくさん持っていましたから、シララはおばあさまに気に入られるようにふるまったのです。
そのおばあさまの具合が悪くなったとき、シララはこっそりと遺言書を見てしまいまいました。
それにはシララが欲しかった宝石類は、別の孫たちにゆずるとあり、シララには書斎に飾ってある赤い玉と書いてありました。
それは赤いペンキでも塗ってあるようなにごった色のガラス玉で、価値があるようには見えませんでした。
怒ったシララは遺言書を破り捨てると、おばあさまの寝室から宝石を盗み出してしまいます。
宝石の隠し場所に困っていると、シララは奇妙な通りに立っていたのでした。
そこでシララは赤い玉と引き換えに、宝石を別のものに作り替えてもらうのでした。これで上手くいくと思ったシララですが・・・
さて、6の色のお返しには、違う魔法使いが登場します。
レインコートのフードを深くかぶって、顔を見せようとせず、話もほとんどせず、エメラルド色のカメレオンの使い魔が要件を話すというあのテンです。
初めてツルさんがテンを見たとき、ツルさんは目を丸くしました。なぜなら・・・
輝かしい金、華やかな橙、あざやかな紅、みずみずしい翠、胸にしみる水色、古風なすみれ色、そして月を思わせる白銀。
風に遊ばれ、豊かに広がる色とりどりの髪の房。言葉を失うほどの美しい色が、川の流れのようにあふれだす。
という美少年だったからです。
ツルさんはこのテンに、魔法街にお店兼住居を、作り直しの魔法で作るのです。
そうやって来上がったテンの店舗兼住まいも、魔法街らしく奇抜ですが、夢があふれた家になっています。
物語のラスト7には、ツルという魔法使いのことが書かれています。
ツルさんの生い立ちから、どのようにして『作り直し』の魔法使いになったかなどですが、じつはツルさん、すごく大変な(魔法)人生を送ってきたのです。
魔法使いの血筋で生まれて、「この子ははさみと針と糸を使う魔法使いになるだろう」と予言され期待されながらも、ぶきっちょで手芸は全く苦手て出来ませんでした。
やがて家族や親せきがみんな亡くなって独りぼっちになってから、晩年に、ツルさんの魔法が目覚めたのです。
それは・・・
どのお話も奇想天外で面白さバツグンでありながら、ちょっぴりホロッとしたり、悪い輩を懲らしめたりというエンターテインメントの王道をいっていて、安心して読める内容になっています。
魔法使いの商店街には、この『作り直し屋』のほかにも、たくさんの魔法使いが登場してきます。あの『十年屋』もそうです。
そして新しい魔法使いが登場するごとに、どんどん奥行きが深くなっていきますが、それは作者廣嶋玲子さんの想像力の深さかもしれませんね。
作者・廣嶋 玲子さん
神奈川県生まれ。
『水妖の森』でジュニア冒険小説大賞受賞、『狐霊の檻』でうつのみやこども賞受賞。
主な作品に『世界一周とんでもグルメ』、「ふしぎ駄菓子屋銭天堂」シリーズ、「もののけ屋」シリーズなど。
みなさん、こんにちは💛
いつもご訪問ありがとうございます。
お隣の家の戸袋でヒナを育てていた小鳥(野鳥)が、
昨日、大きく鳴いて騒いでいたのですが、
どうやら巣立ちをしたようです。
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