きこえてくるのはラヴソング
さあ 泣かないで
さあ 立ちあがって
耳をすまして
いつでも
だれかが くちずさんでいるはず
あなたへの ラヴソング
おもいだして
あの日の ラヴソング
ほら
明日のあなたへの ラヴソング
風のラヴソングは作者の越水利江子さんが、自身の子供時代をふり返って、
あのころ、読みおわったあと、力になる物語に出会えていたらと・・・
そんな気持ちから、
今もたたかいつづけているひとりぼっちの幼い戦士たちのために書きつづった少女・小夜子の一生を通して描かれるさまざまな「愛」の物語です。
越水利江子・作/中村悦子・絵/講談社・青い鳥文庫
青空の国
小夜子は授業中にあくびをしたことを先生に注意され、そのことがもとでいじめっ子の松浦くんと藤井くんに机に落書きをされたり、机のなかに泥を入れられたりしました。
そんなことがあったために、学校から帰ると知らない所へ行きたくなって、家からいちばん近い山の泉山へ歩いていくのです。
知らない山道を歩いていってトンネルと抜けると、先に道はなく雑木林と野小屋とさといも畑だけになります。
そこで小夜子は、パジャマ姿のやせた女の子に出会った。その子は病気なので学校へ行けないのだという。
夕暮れなのですぐに帰ろうとしたら、その子がおじいちゃんとの秘密を見せてくれるといって、小夜子を引き止めるのです。
行く手の雑木林は斜面になっていて、点々と白い明かりがともっていた。
むせるようなあまいにおいがただよっていた。
夕方の林のなかでは、それは、白くにじむ明かりのように見えたけど、ほんまは、大きな白い花やった。
それは山百合の花でした。
おじいちゃんと二人で、大事に植えて育てているのです。
また来るかと尋ねられて、
また来ると言ったら、その子はまた雑木林に入っていって・・・
その子はぜいぜい息をきらしてもどってきた。
「うち、走ったらあかんねん」
そういいながら、うしろにかくした手をうちに差し出した。
「あげる」
折りとられた山百合が一輪、目の前でふわりとゆれた。
小夜子はその山百合を学校へ持っていきますが、また松浦くんと藤井くんが、わざと小夜子にぶつかるように松浦くんを押したせいで、転んで花が首からポキンと折れてしまいました。
小夜子が悲しんで泣いていると、おとなしい三河さんが工作のりを溶く深皿に水を入れて浮かべてくれます。
山百合の花は、二週間ほどで枯れて死んでしまいました。
その死んだ山百合を、小夜子は紙につつんで運動場のすみっこに穴を掘ってうめるのです。
そうして、山百合をこんなにしてしまったことが申し訳なくて、もうあの子にあわす顔がないと思うのでした。
運動場からもどると、小夜子の机の中にビニールに入ったぬれた土があったのです。
また松浦くんと藤井くんがやったんだろうと思った小夜子は、放課後に泥をそのままにして学校から帰ってしまいます。
そうしたら、帰り道のとちゅう、日下部くんが追いかけてきて・・・・
日下部くんはおこったような顔で、手に持ってたなにかを、うちの手にぎゅっと押しつけて、そのまま、なんにもいわんと行ってしもうた。
「日下部くーん、これ、なに?」
うちは走っていく日下部くんにたずねた。
「あ、それ・・・うちの庭のリコリス。百合に似た花が咲くんや。
ほんものの百合やなくて、ごめんな」
日下部くんはふりむき、それだけいうと、学校の角をまがっていった。
土も球根もほんのり温かくて、きっと日下部くんがぎゅっとにぎって持ってきたからかもしれないと小夜子は思い、このリコリスをあの子といっしょに植えようと思いつくのでした。
そうしたら小夜子の心も晴れて、雲一つない青い空が見えるようになったのです。
匂うように美しく大きな山百合の花が見えてくるようなお話ですね。
小夜子がもらった山百合の花を学校に持っていこうと思ったのは、いつもお金持ちの子や庭にいっぱい花を咲かせている家の子が学校に花を持ってきていたから、それがうらやましかったことと、先生にゴマすりをしたかったから、と書いてあります。
それで、花が折れてしまった時に、家に置いておけばこんなことにならなかったとものすごく後悔するんです。
その山百合の花が枯れたときにも、小夜子は「死んだ」って言っています。
まるでペットの動物が死んだように、その死んだ百合の花を運動場のすみに穴を掘ってうめるんですね。
小夜子にとってどれだけ大事な花だったかが、この行動からわかります。
また小夜子がとても感受性の豊かな少女だということも。
そして、百合の花が折れた時に、小夜子に手をさしのべてくれたのが、いつもはいるかいないかわからないようなおとなしい三河さんです。
「これに浮かべたら、折れててもきれいやし」と、なぐさめてくれたり、
泣いててちゃんと説明できない小夜子にかわって、なぜ深皿に百合の花が浮かんでいるのかを先生に言ってくれます。
また、熱が出て学校を休んだ小夜子にかわって、毎日深皿の水を取り替えてくれていました。
それに対して、先生は・・・きれいやなとも何とも言わずに、じゃまものみたいに、百合のお皿を押しのけて、自分が持ってきた教材を置くのです。
そういうところから、この先生がどういう人間なのかが垣間見えてきますね。
人間にとって、何が大切なのかがわかるようなとてもいいお話です。
そして、読みおわると、あなたは、青空の国の住人になっているかもしれません。
きっとそこには、きれいな花が咲いていることでしょう。
※ 風のラヴソングは、どれも短いお話になっていますが、どれも内容が深くて濃い作品なので、ぜひ深く味わっていただきたいので、何回かに分けて感想を書いてみたいと思います。
著者紹介:越水利江子さん
高知県生まれ、京都育ち。
「風のラヴソング」(岩崎書店)で、日本児童文学者協会新人賞、
文化庁芸術選奨文部大臣新人賞受賞。
「あした、出会った少年」(ポプラ社)で、日本児童文芸家協会賞受賞。
他に「花天新選組君よいつの日か会おう」(大日本図書)、
「竜神七子の冒険」(小峰書店)、「ぼく、イルカのラッキー」「月夜のねこいち」(共に毎日新聞社)、「忍剣花百姫伝」シリーズ、「こまじょちゃん」シリーズ(共にポプラ社)、「霊少女花」シリーズ(岩崎書店)、「百怪寺・夜店」シリーズ(あかね書房)など、ヤングアダルト、エンターティンメント、幼年絵本まで作品多数。
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