ここではない、どこか遠くへ行きたい。
あなたはそんなふうに思ったことがありませんか?
たとえば今の生活に閉塞感があって、こことは違うどこか遠いところへ。
この物語の主人公は、「アニマルズ」という4人の小学6年生のグループです。
どの子もそれぞれに、大きな悩みと深い傷を抱えています。
そんな4人が自分たちだけで計画して、自分たちだけの3泊4日の旅に出かけて行くのです。さて、どんな旅になるのでしょうか・・・
ここではないどこか遠くへ/本田有明 作/みななむ 絵/小峰書店
1人は、言葉がうまく出ない吃音の症状がある男の子で、ニックネームは『グッチ』。
松尾芭蕉を尊敬していて、自分でも俳句を詠みます。
父親は大会社の支社知将をしていて裕福ですが、両親が離婚して母親が姿を消してから吃音の症状が出るように。
体格も声もすでに中学生の雰囲気がある『ビーマン』。
太い眉でうっすらとヒゲが生えている。幼い頃から空手を習っていて、目つきも鋭い。
両親と妹を交通事故で失い、故郷を離れて遠い伯父の家に引き取られました。
身長は高いが体形はぽよんとしている『プー』。性格ものんびりとしている。
父親の家庭内暴力から逃れて、母方の実家に母親と身を寄せている。祖母は保育園の園長をしていて、優しくしてもらっています。
小柄で髪をスポーツ刈りにしていて男子のように見える『ワンコ』は、じつは女子。
生まれながらの母子家庭で生活は苦しい。そんな中で母親がいつも「月の砂漠」を哀愁たっぷりに歌うので悲しい思いにとらわれているのです。
そんな4人組がビルの屋上で、どこか遠くへ行きたいという夢を語っていた・・・
グッチは、芭蕉が旅をしたという『おくのほそ道』の松島へ行ってみたい。
プーは、じいちゃんから絵葉書をもらった雪をかぶった富士山に憧れをいだいている。
ワンコは、『月の砂漠』の作詞のモデルとなった千葉県の御宿へ。
ビーマンは、両親と妹と暮らしていた名古屋の家をもう一度見てみたい。
これが4人の願いです。
しかし、まだ小学生である4人には、お金や保護者の了解、泊まる場所など、越えなければならないハードルがたくさんあってただの夢でしかなかったのですが、みんなで話し合っていくうちに・・・
遠い旅の行き先とともに、いかにも「冒険」らしい気分が高まってきた。
かけ足で神社めぐりをする、お決まりの修学旅行ではない。自分たちがほんとうに行きたいと望むところへ、行ってみたい。
このときから、四人の心が一つの方向に定まり、夏休みに向けてカウントダウンが始まった。
彼らは子供ながらに、1つ1つの問題をみんなで協力してクリアして、旅に出かけるのです。
さらに行けば行ったなりに、さまざまな困難に直面しますが、助け合ってそれぞれが行きたかった所へ行くのでした。
それだけではなく、御宿でヘレンさんという女性と知り合い、その両親の家に泊めてもらうことになったり、富士山も行くだけでなく、富士登山まですることになったりという予定外のことも起こります。
全員がそれぞれの目的地に行くことが出来て、自分の殻を割って新しい自分へと生まれ変わっていくことになります。子供たちを取り巻く環境は変わらないのですが、心境が変わることによって、未来への希望が見えてくるのですね。
それはどこか遠くへ行くことが成功したから、もたらされた結果なのでしょうか。
それだけではないと私は思います。たぶん、途中で親にバレて連れ戻されたとか、色いろなアクシデントで目的地に行くことができなかったとしても、結果はそれほど変わらなかったのではないでしょうか。
彼らは仲間と行動することによって、心境が変化していったからなのです。それは一人で行ったのでは、到達することができない結果でした。
最後にビーマンが昔、家族と住んでいた所に着いた時に、何が本当に大切だったのかがはっきりとします。
チルチルとミチルの青い鳥は、いったいどこにいたのかが・・・。
著者・本田有明さん
作家、エッセイスト。著書に『夢をかなえる未来ノート』『願いがかなうふしぎな日記』『望みがかなう魔法の日記』『「水辺の楽校」の所くん』(以上、PHP研究所)、『メロンについていた手紙』『歌え!多摩川高校合唱部』『ファイト! 木津西高校生徒会』『ヘタな人生論より夏目漱石』(以上、河出書房新社)、『宮澤賢治のことば』(サンマーク出版)などがある。
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