これは町田康さんのエッセイにあった言葉です。
本や何かで琴線にふれた言葉を、そのままノートに書きとめるようになったのは、ずいぶん昔からです。
それ以前は、要点と感想などを書いていたのですが、これだと後で読み返してみると、どこに感動したのかさっぱりわからないんですね。
そこで句読点も含めて、そのままノートに書き写すようにしました。たった１行のときもあれば、数ページにわたることもあります。
文章をそのまま丸写しにすると、著者の息づかいとか、そういうのまでくっきりと伝わってきます。
情報がほとんど手に入らなくて、やっと辿りついた小さな映画館で、暗闇のなかで、映像と音楽の世界へ行ってしまうような感覚は忘れがたいですね。
ぼくははやりものが苦手な性質なので、みんなが騒いでいる映画はあまり見ません（笑）ー略ー
映画でも小説でもそうですが、自分の中で求めていた作品に巡り合う時の喜びはことのほかで、この映画ならはずさないだろうなんて効率を考えていたら、本当の喜びから縁遠くなるばかりです。
生きているといつも精神的に元気な時ばかりじゃなく、自分の中にすきまが空いていることがある。
ぼくも２、３年活動のブランクがあった時などは、感受性が強くなっていたから、自分が本当に見たい映画を探して無心になって見ていました。
何かを得ようとするのではなくて、自分の空白、余地に入ってくる。映画鑑賞は自身のフルチャージ状態じゃない時に限るのではないでしょうか。
ミニシアターって、一人ひとりがきちんと辿りつき、暗闇で違う人生を体験しているように思う。そうやって映画をたくさん見た人は、人生のヒントを数多く受け取るでしょうね。
ー町田康・朝日新聞より
町田康さんのエッセイは、大学ノートのほぼ１ページ半に渡って書き写してありました。
外側の評価に惑わされないで、自分の感性を信じるというようなところがいいと思ったのでしょう。（人ごとみたいな言い方ですが）
そういう自分の足で歩き、自分が経験したことや自分が感じたことを、自分の言葉でしゃべる人は、いきなり信じるとまではいきませんが、なんとなくほっとするというか、安心できるような気がしますね。
私の場合、人生のヒントを映画で発見できるほどは数多く映画を観ていないので、なんともいえませんが、ただ、映画を観たくなったことだけは確かなんです。
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