わたしがしゃべると、たいていの人は戸惑ったような、困ったような、人によっては怒ったような顔になる。
わたしは長いこと、その表情の意味に気付かずにいた。
ハリネズミは月を見上げる/あさのあつこ/新潮社
内気で不器用な佐戸(のちに御蔵になる)鈴美は、小学5年生の時、クラスメートが自分のことを笑いものにしているのを偶然聞いてしまい深く傷ついたことを心の奥にしまったまま成長していった。
やがて高校生になった鈴美は、”控え目でおっとりとして、ちょっと天然が入っている女の子”というキャラで、うまくクラスメートにとけこむ術を身につけていた。しかし、仲間から外されることが恐いので、本当の自分は出していなかった。
そんなある日、通学の電車で痴漢にあってしまい、あるだけの勇気をふりしぼって、
「止めてください」と叫んだものの、逆に男に「冤罪だから訴えてやる」と脅されてしまう。
男が恐いので謝ってしまおうかと弱気になっていたら、菊池比呂という同じ学校の女子が「見ていた」と言って助けてくれる。
お礼を言おうとしたら、「男も最低だが、あなたも最低、許せない」と言われる。
「謝っちゃえば楽だから、あの男に謝ろうとしたでしょ」と。
比呂は鈴美とは真逆で、背筋をぴんとのばして生きていく一匹狼のような少女だった。
そんな出会いから始まる、2人の少女の物語は、お互いの家族や幼なじみが複雑に絡みあいながら、もはや解けることのないゴルディウスの結び目のようになっていく。
心を病んでしまった比呂の姉、疲弊し壊れてしまった家庭、誰が悪いのか。しかし、心を病んでしまった姉を追い詰めいじめた人も、やはり心を病んでいた・・・
瑞々しい少女に焦点をあわせて、そのゆっくりとした成長に合わせて2人の心に寄りそいながら語られていく、ハートフルな物語です。
読みおわったとき、それがもし夜だったのなら、あなたはふっと顔を上げて月を見上げるかもしれません。
ハリネズミは月を見上げる (新潮文庫) [ あさの あつこ ]
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