桜さくら堂

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鬼の市/鳥野美知子・作/童話・児童文学/感想・レビュー・あらすじなど

小学6年の健太は、節分がきらいだった。なぜなら……

 

節分の日、健太の家では豆をまかない。

まくどころか、鬼さんをお迎えする。

 

健太の家では、先祖代々、節分に鬼様を家にお迎えする「鬼迎え」、

そして、翌日にお送りする「鬼送り」の儀式を行う。

なんで健太の家だけ鬼を迎えるのかと聞いたら、ねえちゃんは「うちのご先祖は鬼さんなんですよ」と云うのだ。

 

鬼の市/鳥野美知子 作/株式会社岩崎書店

 

「本日は、遠いところにおいでくださって、ご苦労様でござりやんす。今晩はゆっくりとお泊りくだせえ。そまつなご馳走でござりやんすが、酒は十分用意しておりやんす。たんまりお召し上がりください。あしたは日の出前にお送りしますから、ごゆるりとお休みください。また、お帰りのときは、忘れねえで、当家と当村の病気と災難をいっさい持っていってください」

 

この鬼迎えの決まり文句を云って、とうちゃんは見えない鬼に酒をすすめる。

健太には鬼をおもてなししても、何もいいことがあるとは思えなかった。じいちゃんは脳溢血で死んでしまうし、歳の離れたねえちゃんの旦那さんも交通事故で死んでしまった。それでねえちゃんは、幼いしおりと乳飲み子の雷太をつれて実家に身を寄せている。

 

鬼迎えをした真夜中のことだった。しおりと仏間をのぞいたら、そこには死んだはずのしおりの父親の誠二さんがいた。誠二さんはしおりに会うために、鬼について来たのだという。ところが誠二さんにもらったお菓子を食べたしおりは、急に具合が悪くなって倒れてしまうのだった。

 

とうちゃんとねえちゃんはしおりを病院に連れていったので、家には健太とばあちゃんだけが残されてしまった。とうちゃんが帰って来ないまま、「鬼送り」の時刻が迫っていた。

鬼送りは一家の主か後継ぎがしなければならない。夜が明けない真っ暗な時刻に、鬼さんのご馳走をわらつっとに入れて、ささやき橋の上から泉川に流さなければならなかった。しかも、誰に会っても返事をしてはいけないのだ。口を開いたら、この世とあの世の境に落ちるのだと云う。

健太は一人、真っ暗な夜道を歩いていく。ところが……

 

 健太は、わらつっとを荒あらしくふりまわした。

「やべえ」

 わらつっとに入っていた焼き魚やぜんまい煎りや田作りゴボウが、雪の上にきたならしく飛び散った。

 しかもあわてたので、声を出してしまった。

 

 ここまでが現実の世界です。鬼がいるような匂わせはありますが、まだはっきりとは鬼の姿は現れていません。

健太は声を出してしまったので、もう、やけくそになって、思いのためをぶちまけます。

 

「鬼! おれは声を出したぞ。この世とあの世の境に落とすのか? 落とすなら、さっさと落とせ」

「おーい、鬼。さっさとしおりを助けろ!」

 

健太はもともと鬼なんかいないと思っているので、強気です。

ところが、これに鬼が答えます。最初は声で、つぎに姿を現します。ここから空想の異界の世界に入っていきます。

現れた鬼は大きく、小山ほどもある赤銅色の鬼です。

鬼はしおりを助けたいならば、墓場の下の鬼の市へ行けと云う。夜明けまでには戻らないと、現世に帰ってこれなくなるというのですが、健太は恐いけれどしおりを助けたい一心で、健太は行きます。

 

この本の題にもなっている『鬼の市』は、人間の村の夜祭と同じようなもので、ただお店をやっている人も、ひやかしているお客もみんなすでに死んでいる人だった。ここで健太はしおりを助ける手がかりを探し、ついには人食い青鬼にとらわれているしおりの魂にたどり着くのですが、ついには青鬼に捕まって食べられそうになってしまうのです。この青鬼は、いわゆる悪い鬼です。

健太は無事にしおりを連れて、現世にもどって来れるのか……

 

節分の鬼は、誰もが忌み嫌うものです。

健太は学校で、「自分の心の鬼を書きましょう。たとえば、「なまけ」や「ねたみ」、「風邪」や「戦争」「いじめ」ということばでもいいですよ」と言われて、「弱虫」という言葉を書きました。

しかし、この話に出てくる鬼は、そういう鬼ではありません。逞しくて強くあの世に精通していて、災いを持っていってくれる鬼です。そして、人間のような感情を持っていて、どこか懐かしい雰囲気があります。それはこんなふうに……

 

 健太は赤銅色の鬼の首っ玉にしがみついた。

 やっぱり懐かしい、この広い背中。この温かさ。あの日も、健太を守ってくれたのはこの背中だった。

 

健太はそんなふうに思います。それは健太が小さい頃におんぶしてもらったじいちゃんの背中の感じでしょうか。

 

この本では、節分の鬼を迎えるという、ふつうの家庭の節分とは違う視点から鬼が書かれているところが面白いように思いました。それは悪さをする鬼ではなく、『泣いた赤鬼』を彷彿とさせるどこか人間臭さと温もりがあるような鬼です。

そしてまた、誰でも自分の心のなかをのぞいて見たら、もしかしたらどこかに小さな赤鬼がこっそりと隠れているかもしれませんね。

調べてみたら、群馬県藤岡市鬼石(おにし)には、鬼恋(おにこい)節分祭りというのがあるようです。もしかしたらそれ以外にも、鬼を迎える風習がある地域や家があるかもしれませんね。

 

作者・鳥野美知子さん

1954年山形県に生まれる。作品に『どんぐり屋』『ねんねこさい』(新日本出版社)がある。

日本児童文学者協会会員。全国児童文学同人誌連絡会「季節風」会員。サークル・拓、ふろむ同人。

 


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