東野圭吾氏といえば、ミステリの大作家です。
ミステリといえば、ふつう殺人事件とか誘拐とか、さまざまな事件が起こるのがお約束ですが、この歪笑小説にはそういう事件は起こりません。
ただ常識破りのあの手この手をくり出して、原稿を取ってくる伝説の編集者が出てくると思えば、自作のドラマ化に舞い上がってまだ企画段階なのに家族親類、友人知人に自慢したあげくに話は思わぬ方向になってしまう新人作家、美人編集担当者に自作を褒められたのを勘違いし恋心を抱きプロポーズまでしてしまった作家など、出版業界のまわりは笑える事件がいっぱいです。
歪笑小説/東野圭吾/集英社
文壇の表も裏も知り尽くした売れっ子のミステリ作家である東野圭吾氏が、文壇のダークサイドをお笑いを交えながら、自嘲気味に書いています。というよりも、それを楽しんでいるようにも思える面白さです。もはやマゾに近いかもしれません。
著者はミステリ作家なだけに、ただ面白いだけではありません。ミステリ作家につきもののお約束の『どんでん返し』が、これにもちゃんと用意されています。どの話も短編でさらっと読めてしまうので、何らかのストレスが溜まった人や気分転換をしたい人には是非おススメしたい本です。
かくいう私も実はこれを、『この俳句がスゴい! 小林恭二著 ㈱角川学芸出版』を読んで気が滅入ったときに気分転換で読みました。
では少し、内容をご紹介しましょう。
多くの登場人物がいますが、特に編集者としては、灸英社(きゅうえいしゃ)の獅子取り編集長と中堅の小堺、新人の青山さんですね。
作家の方は、『撃鉄のポエム』で新人賞を獲った熱海圭介です。この人は時代遅れのハードボイルド作家で、候補作が駄作ばっかりだったからやけくそで選ばれたといわれています。そんなこと、あるんでしょうか。なんとなくありそうな気がしてしまうのは、東野圭吾さんの文章力によるものでしょうか。
そして、もう1人あげるとしたら、『虚無僧探偵ゾフィー』でデビューした唐傘ザンゲです。ふざけたペンネームですが、これで応募したら新人賞を獲ってしまったため、そのまま使うことになってしまったんですね。文学賞に応募しようとしている皆さんは、是非気をつけたい点ですね。名前は変ですが、この人は有望な新人という設定です。
私は何故かこの2人が、作者(東野圭吾氏)の分身のような気がしてなりません。根拠はないけれど。
これらの個性豊かな登場人物が、俳優、読者、書店、家族を巻き込んで、出版社を舞台にしてアホな事件を起こします。
出版業界の裏の裏まで知り尽くしている東野圭吾氏の筆が冴えわたっていて、面白いけれど、ここまで暴露してしまっていいんでしょうか。かなり脚色はしていますが、笑って笑って、最後はちょっとほろりとします。流石ですね。ちなみに作品は下記の短編で、初出は「小説すばる」です。
・伝説の男
・夢の映像化
・序の口
・罪な女
・最終候補
・小説誌
・天敵
・文学賞創設
・ミステリ特集
・引退発表
・戦略
・職業、小説家
・巻末広告 書き下ろし
「文学賞創設」「引退発表」はラストが秀逸でした。こう来たかというΣ(・□・;)感じでした。
巻末広告が書き下ろしなので、これもちょっと楽しめました。
というか、これは作者が楽しんで書いたような気がします。編集者もそれに乗っかったんでしょうか。
これは本書を手に取って実際に見ることをおススメします。
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